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空に星が輝く様に

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360部分:第二十七話 護るものその三


第二十七話 護るものその三

「どうしてもな」
「そうなんです。ですから」
「被る機会ないんだ」
「はい、それが残念で」
 こう話す彼女だった。申し訳ない顔でだ。
「私、そういうラフな服持ってませんし」
「ええと、悪いけれど」
「はい」
「月美にはそういう服似合わないな」
 そうだというのだった。陽太郎もだ。
「どうしてもな」
「そうですか。やっぱり」
「だから野球帽もな」
「被れませんか」
「あれって案外服選ぶからな」
 陽太郎はまた腕を組んだ。そのうえで難しい顔で話すのだった。
「どうしてもな」
「ううん、それじゃあ」
「まあさ」
「はい」
「そんなに気にすることないからさ」
 笑顔になってだ。月美に対して話した。
「阪神帽位さ」
「そうですか」
「ああ。確かにあの帽子はいいさ」
 これはどうしても言わずにいられなかった。何故なら陽太郎は阪神ファンだからだ。その彼が否定できるものではなかったのだ。
「けれどな」
「けれどですね」
「帽子がなくても応援できるしさ」
 陽太郎が言うのはこのことだった。
「だから別にさ」
「気にしなくてもですね」
「いいと思うな」
 微笑んでの言葉だった。
「そこまではさ」
「わかりました」
 陽太郎の今の言葉に月美も笑顔になった。そうしてだった。
「じゃあ私帽子は持ったままで」
「ああ、それだけで」
「それでいます」
「それでもいいからさ。じゃあ」
「じゃあ?」
「そろそろ着くよな」
 駅にだというのである。
「降りようか」
「そうですね。このまま乗ったら」
「学校に行けなくなるしな」
「それか遅刻ですよね」
「さぼるのって流儀じゃないしさ」
 陽太郎は笑ってこうも話した。
「じゃあ行こうか」
「はい、それじゃあ」
「学校にさ」
「そうですね。今日は」
「今日は?」
「阪神の試合ありませんよね」
 まだ阪神の話をするのだった。
「そうですよね」
「残念だけれどな」
 それはだと返す陽太郎だった。
「それはな」
「そうですよね。やっぱりないと」
「面白くないよな」
「はい、本当に」
 こんな話をしてだ。二人は学校に行く。そして部活の朝練の後でそれぞれのクラスに入る。
 月美が自分のクラスに入るとだ。そこにはもう、であった。
 椎名がいてだ。彼女に言ってきたのだった。
「おはよう、つきぴー」
「愛ちゃん?」
「そう、おはよう」
 また挨拶をする彼女だった。
「元気みたいね」
「ええと」
 もういる彼女に戸惑ったがだ。彼女はまずはこれからだった。
 
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