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戦国異伝供書

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第四話 治世の功その五

「それではな」
「はい、今後はですな」 
 真木はまた信長に応えた。
「近江の南を拠点として」
「朝倉家に備えるぞ」
「わかり申した」
「あと一向一揆じゃが」
 信長は彼等のことも話した。
「我等としてはな」
「はい、特にですな」
「揉めるつもりはない」
「左様ですな」
「そうじゃ、争うことはじゃ」
 それはというのだ。
「出来る限り避ける、寺社の視力も削いでいくが」
「それでもですな」
「戦になることは避ける」
「そうしていきますな」
「そうじゃ、今検地を行ない諸国の地侍達を当家に完全に取り込んでおるが」
 その国それぞれの石高を確かにし全て織田家が治める、地侍達が持っている領地のそこもうしていくというのだ。これには公家や寺社の荘園も入っている。
「本願寺は領地以上に人じゃ」
「あの信者の数ですな」 
 堀もそのことを問題としていた。
「信者の数の桁が違いまする」
「しかも多くの国におるな」
「はい、加賀だけでなく」
「織田家が領地にしておる国でもじゃ」
 信長は自分の領地の話をした。
「摂津、河内、和泉と本願寺の膝元に伊勢、近江じゃ」
「若しもですぞ」
 佐久間は険しい顔で信長に述べた。
「本願寺の門徒共が当家との戦を選べば」
「その時はな」
「当家も恐ろしい戦になりますな」
「そうじゃ、まさに当家が滅びるかあちらが滅びるか」
 信長は佐久間に険しい顔を向けて述べた。
「そうした戦になる」
「左様でありますな」
「本願寺の信仰は認める」
 信長はそれを害するつもりはなかった、それも一切。
 しかしだ、それでもと言うのだった。
「だがわしの天下布武を阻もうとするなら別じゃ」
「その時はですな」
「叩くまでじゃ」
 つまり戦うというのだ。
「そうするまでよ」
「では」
「その時は覚悟をすることじゃ、しかし今は戦は第一ではない」
「政ですな」
「皆領内を治めよ」
 信長は家臣達にあらためて述べた。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりですな」
「拡がった織田家の領地を治め」
「そのうえで」
「そうじゃ、豊かになった国の力で天下を目指すぞ」
 こう言って信長は領内で様々な政を打ち出しそれを家臣達に励まさせた。新田を開墾させよい田畑を整えさせ街をよくし道や堤、港を充実させ城も築いていった。政とは無縁の慶次を除いたほぼ全ての織田家の家臣達が政に励んだ。
 信長はその彼等を見ても褒美を与えていた、明智を呼んで笑みを浮かべて言った。
「十兵衛、よくやっておるのう」
「有り難きお言葉」
「お主にも禄をやろう」
 そしてその禄はというと。
「万石をな」
「万石ですか」
「そうじゃ、それだけの功を挙げた」
「だからですか」
「お主はこれより万石取りじゃ」
「新参者のそれがしが」
 もっと言えば尾張生まれでもないがとだ、明智は信長に驚きを隠せぬ顔で問うた。 
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