ねここい
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第7話
前書き
手が早し蔵原君。
問題を起こすなよ!
物陰に隠れクラスメートの尾行をしてたら、突然後ろから話し掛けられた!
俺は驚き後ろを振り返る。
そこに居たのは……巨大なシャム猫だった!
あ、いや……巨大シャム猫って事は渡辺さんだ。
同じクラスで猫好きで飼い猫が“ジャム”の渡辺さんだ。
「こ、こんにちは渡辺さん」
「うん、こんにちは。所で本当に何をしてるの?」
ど、如何する……ラブホ○ルへ入っていくカップルを物陰から眺めてたなんて言いにくいぞ。
とは言え嘘を言ってもこの状況を巧く説明出来そうにないし、蔵原を犠牲にして真実を話した方が得策だろう。
「そ、それがさぁ……先刻偶然に蔵原を見かけたんだよ。しかも何処かで見たことある様な女の子と手を繋いでさぁ……それで後を付けたら、ほら」
そう言って例の建物の方を指差し、奴が女の子と入っていく所を渡辺さんにも見せる。
「あ、本当だ! 連れてる彼女って1組の中島さんよね?」
「そうか、何処かで見たことある気がしてたんだけど、彼女も同じ学校の生徒か!」
そう言えば蔵原が学校の廊下で『1組のあの娘可愛い!』と騒いでた。
フッと気付く。
電柱の陰に隠れてラブホテ○を覗く渡辺さん……
俺もこんなに怪しかったのか?
……にしても、尻尾は無いのかな?
巨大猫とは言え、元々は人間の姿をしてるわけだし、猫化した姿は俺にしか見えないわけだし、尻尾なんかは生えてない様子だな。
「ちょっと何? 私のお尻をガン見して!」
中腰状態で電柱から顔だけを少し出した姿……そんな渡辺さんのお尻を尻尾の有無を確認する為とは言え、凝視していた訳だから女子としては嫌がるのは当然だな。
だが本当のことは言えないよね……
だって『俺には貴女のことが猫に見えるんです。だから尻尾が無いのか見てました』何て頭のおかしい奴としか思えないもん。
じゃぁ何て良いわけをする?
う~ん……
蔵原だったら何て言うかな?
「あ、え~っと……お、お尻は見てたんだけど、そこだけでは無くて……な、何て言うか……か、可愛い服装だな……って思ってただけ!」
咄嗟とは言え俺にしてはよく言えたと思う。
俺には彼女が猫にしか見えないわけで、表情なんかは大雑把にしか判らないから、化粧だってしてるのかどうか判らないのである。
そんな情報が限定されてる中で好感度を保ちながら言い訳をするとなると、見て分かる服装のことしか思い付かない。
この言い訳なら、見てたのが尻限定では無く全体を見てたと思わせることが出来るだろうから……
蔵原ならもっと流暢に言えるんだろうなぁ……
俺の限界!
「え!? そ、そうかなぁ……か、可愛いかなぁ? わ、私の普段着なんだけどね♡」
おや? あんな噛み噛みの言葉でも何だか好感度が上がった感じがするぞ。
そ、そうだ! 例のルーペで好感度を確認しよう。
『♥301』
好感度301かぁ……
小林先生より高い数値が出た。
ただ、まぁ……
この数値が如何程の評価なのか判らないけどね……
使えねー、あの化け=猫!
「あー! そんな褒めといて、蔵原君みたいに私をホテルに連れ込む気だなぁ~」
「ち、違うよ! そ、そんな事しないよ!!」
馬鹿言うな! 仮に連れ込めても俺には猫にしか見えないんだぞ! 何が出来る?
「う~ん……大神君は蔵原君と違って真面目そうだし、信じてあげましょう(笑)」
渡辺さんは笑いながら俺への疑いを消してくれた。
うん、場所が悪い。蔵原が○ブホテルから直ぐに出てくるわけでも無いし、俺達は早々にここから離れるべきだな。
「あの渡辺さん……ここで覗いてると怪しいから、俺等はこの場から離れた方が良いと思うんだ」
「……そ、それもそうね」
俺に言われ気が付いた様で、怪しい覗き魔スタイルを止めた渡辺さんは、早足で表通りに向かった。
「にしても、蔵原君ってば手が早いのね」
表通りに出ると直ぐに渡辺さんが蔵原のことを評価してきた。
男としては羨ましい限りなのだが、そんな事を言えばドン引かれるだろうから言わない。
かと言って蔵原のことを批判すれば、それはそれで問題になりそうだ。
最悪、俺の事をゲイだと思われるかもしれない。
ここはノーコメントを貫こう。
そんな事を考えながら颯爽と歩く渡辺さんの後に付いていくと……
「あれ? 何だよ二人して……デートか?」
と巨大なアメショが声をかけてきた!
そうアメショこと佐藤さんだ。
彼女も休日を満喫するべく街中まで出てきてたらしい。
俺と渡辺さんを見付け話し掛けてきた……誤解してるけど。
「ち、違うわよ……ぐ、偶然出会っただけ」
「そ、そうだよ……会ったのも、数十分前だし」
デートを全力否定され、男として傷付いたが、事実だから仕方ない。
「そっか……偶然か。偶然と言えば、私も先刻偶然クラスメートを見かけたよ。誰だと誰だと思う?」
だ、誰だろう?
もしかしたら……
「愛香音ちゃんも蔵原君に会ったの!?」
俺も同じ事を思ったが、あえて口に出さないで居たら、渡辺さんが嬉々として答えてしまった。
覗いていた事を聞かれるのは嫌だなぁ……
「会った……って言うか、見かけただけだけどね」
「1組の中島さんと一緒に居たわよね!」
グイグイ踏み込むな渡辺さん……
「あぁ……中島さんをホテルに誘ってた」
「うん! 私はホテルに入っていく所を見ちゃった」
どうして覗きをしてたことを正直に言えるんだろ?
「あぁじゃぁ成功したんだ」
「成功?」
何のことだ?
「私が見かけた時は、中島さんとホテルに行こうと必死に口説いてる場面だったからさぁ……アイツ顔は普通なのに、口が巧いから口説き落とせるんだな。私は嫌いだけど」
「あー解るぅ……私も蔵原君みたいなタイプは苦手。友達としては良いかもしれないけどね」
「そう、それな! 私も最初は毛嫌いしてたけど、話してると面白いし、結構博識だし、友達としては良い奴なんだよな。恋人同士には絶対なれないけどね!」
う~ん……猫化してるって事は俺の生涯の伴侶候補なワケだし、あまり奴の好感度が高いのは困る。
あ、好感度と言えば……
『♥299』
お……? 小林先生より高く、渡辺さんより低い。
う~ん……判断に困るなぁ。
これ……どのくらいが高い数値なんだろう?
まだ知り合って間もないし、この数値がズバ抜けて高いとは思えないんだよなぁ……
取り敢えず佐藤さんの服装も褒めて、数値の上昇率を確認するか。
「そ、そう言えば……佐藤さんの私服姿を初めて見たけど、渡辺さん同様に可愛いね! や、やっぱり美少女は何着ても可愛いのかな?」
「な、何だよ急に……お、お世辞言っても何も出ないぞ♡ わ、私は親や友達から『がさつ』って言われてるんだから……び、美少女なわけないだろ! 愛美は美少女だけど……」
俺には猫にしか見えないんだから、二人が美少女か如何かなんて解るか! 女誑しの蔵原が『美少女』って言ってたから、それを参考に言ってるだけだよ。
あぁそんな事よりも好感度を計測してみないと。
『♥322』『♥325』
上がってる。渡辺さんの数値も一緒に計ったけど、二人とも上昇してる。因みに325が渡辺さんだ。
二人とも少しモジモジしてるのが猫化してても判るが、俺なんかの台詞で好感度が上がるなんて驚きだ。
これ、本当に上がってるのか? この数値……上昇するごとに嫌われてるって事は無いだろうか?
でも二人からは悪い感じは見受けられない。
き、嫌われてはないだろう……多分。
もう少し状況を確認していかないと分からないな。
でもちょっと自信になる。
俺の台詞でも女性を喜ばせることが出来るんだから。
後はMAX値がどのくらいか知りたいな……
後書き
奥手な大神君は、
流石にこの後、
彼女等をホテルへ誘うことはしませんでした。
リュー君だったら……
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