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タルバガン

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第一章

               タルバガン
 昔々のモンゴルのお話です、今世界にある太陽は一つしかありませんが何と昔は七つもあったのです。
 太陽が一つでも夏はかなり暑いですがその太陽が七つあったのです、これではもうたまったものではありませんでした。
「草木は干からびてしまうし」
「川や湖は全て干上がってしまう」
「地面は焼け焦げるし」
「わし等も家畜も暑くて死にそうだ」
「喉が渇いて仕方ない」 
 誰もがこう言って苦しんでいました。
 そして世界中の皆が苦しんでいるその状況を見てです、ある若者が言いました。
 その若者の名前はエルヒー=メルゲンと言いました。モンゴルで一番の弓の名人で立ったままでも馬に乗ったままで矢を絶対に外しません。背はとても高くて腕は驚く程長く星の様に輝いている目は何処までも見えます。
 そのエルヒーがです、こう言ったのです。
「よし、それならわしが太陽を射抜いてな」
「そうしてか」
「落としてくれるのか」
「七つの太陽を」
「ああ、全て落とそう」
 まさにというのです。
「そうしよう」
「ああ、頼むな」
「本当に太陽が七つもあるからな」
「暑くて仕方ない」
「草木も川も湖もカラカラだ」
「地面も焼かれてな」
「わし等も家畜も獣も暑くて死にそうだからな」
 皆エルヒーに心から頼み込みました。
「それじゃあな」
「宜しく頼むな」
「太陽を落としてくれ」
「そうして皆を過ごしやすくしてくれ」
「そうする、七つの太陽を全て落とす」
 エルヒーは皆に強い声で約束しました。
「一本ずつの矢でな」
「一本ずつでか」
「一つの太陽に一本か」
「それだけで射抜いていくのか」
「そうする、若し失敗したらな」
 その時はといいますと。
「わしは親指を切るぞ」
「自分の親指をか」
「そうするのか」
「そして人間をやめる」
 こうまで言うのでした。 
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