| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

真田十勇士

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

巻ノ百四十七 吉報その四

「それで大坂でも戦っていたが」
「それでもですか」
「ここに逃れて今の様にな」
「村人達によくしてもらい」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「考えが変わった、死ぬのは何時でも出来る」
「何時でもです」
「うむ、何処まで満足した武士として生き通せるか」
「そのことがですか」
「確かだと思う様になってな」
「それで、ですか」
「わしは死に場所を求めて戦うのではなく」
 そうではなく、というのだ。
「武士としての道を歩む」
「そうした戦をですか」
「したい、これがおそらく最後の戦になるが」
「その戦において」
「わしは戦いな」 
 そうしてというのだ。
「生きる、そうしてじゃ」
「薩摩にですか」
「戻る、その後はな」
「どうするかはですか」
「わしが決める、ではな」
「薩摩に入って」
「それからあらためて話をしよう」
 二人で話してだ、そのうえでだった。
 大助は後藤と彼の家臣を薩摩まで案内した、後藤も健脚でそうしてだった。一行はすぐに薩摩に着いた。それから。
 後藤はすぐに秀頼の前に来て頭を下げた、そのうえで彼に話した。
「それがしもです」
「うむ、無事であって何より」
「この通り、では」
「お主もじゃな」
「はい、一戦赴いて宜しいでしょうか」
「もう余は何も言うことはない」
 秀頼は後藤に微笑んで答えた。
「そなたが好きにすることだ」
「それでは」
「うむ、そしてじゃが」
 秀頼は後藤の家臣である長沢にも顔を向けて彼に声をかけた。
「お主が又兵衛を大宇陀までか」
「お連れしました」
「その功まことに大きい」
「有り難きお言葉」
「そなたのことは島津も聞いておる、島津家として藩士として召し抱えるとのことじゃ」
「藩士としてですか」
「うむ、その忠義に報いるとのことじゃ」 
 後藤へのそれにというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「これからも武士として正しくある様にな」
「そうさせて頂きます、して殿は」
 長沢は後藤に顔を向けて己の主に問うた。
「どうされますか」
「わしか、戦に行ってからな」
「戻られた時は」
「何も考えておらぬ」
「そうですか」
「大助殿にもお話した通りな」
 今はというのだ。
「考えておらぬわ」
「左様ですか」
「うむ、しかしな」
「まずはですか」
「戦を戦ってじゃ」
 そしてというのだ。
「思う存分槍を振るってな」
「最後の戦に勝たれて」
「また薩摩に戻るからな」
「お待ちしております」
 これが長沢の返事だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧