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遊牧民のもてなし

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第二章

「いいよ」
「安心しろ、俺はあんたからものを奪うつもりはない」
「おや、考えていることがわかったのか」
「こうした時の話の常だな」
「何かあるかって思うことは」
「そうだ、善意の皮を被って安心させてだ」
「グサリなんてあるからな」
「ものを奪うだけならいいが」
 しかしというのだ。
「殺す奴もいるな」
「あんたもわかっているんだな」
「草原にも色々な奴がいる」
「悪人もいるか」
「善人もいればな、だが俺は金にも命にも興味はない」
 その両方にというのだ。
「酒は好きだがな」
「悪いが酒は持ってないんだよ」
「俺が持っているからそれはいい」
 酒の方はというのだ。
「クミズがな」
「ああ、あの馬の乳の酒か」
「それがあるからな」
「酒はいいのかい」
「そうだ、それでどうだ」
「ああ、じゃあ悪いがね」
「今日はだな」
「あんたのゲルに泊まらせてもらうな」
「そして存分に休め」
 青年はこう言ってだ、旅人を近くに建ててあった自分のゲルの中に案内した。羊達は彼が飼っている犬達と彼が肩に止まらせていた鷹に警戒させていた。彼等は寝ていても何かあればすぐに起きて自分に知らせてくれるとだ。
 青年はゲルに共にいる旅人に話した、そしてここで自分の名も話した。
「俺の名前はシクだ」
「姓はないよな」
「それもわかるか」
「わかるさ、草原の民のことも知ってるからな」
 旅人はその青年シクに笑って返した。
「だからな」
「それでか」
「そうさ、あと俺はイブンっていうんだ」
「イブンか」
「イブン=シーナ。金持ちの道楽息子でな」
 旅人は自分のことも笑って話した。
「剣と魔術師と僧侶の魔法が両方使えるからな」
「その力でか」
「旅をしているのさ、旅の金はモンスターを倒してな」
「手に入れているか」
「食いものもモンスターを食ってな」
「そうして旅をしているんだな」
「乗っている馬と一緒にな、気ままなものさ」
 旅人はシクに笑って話した。
「とんだ道楽者だろ」
「それで一人でか」
「世界中を旅しているさ」
「危険もものとせずにか」
「幸い一人旅をするだけの腕はあってな」
 剣と魔法のそれがというのだ。
「生きてそれが出来ているさ」
「それはいいことだな」
「ああ、それでな」
「これから絹の国に行くか」
「そうするんだよ」
「それはわかった、俺はこの辺りで一人で遊牧をしてな」
「暮らしているんだな」
「そうだ、この辺りは俺の部族の場所だ」
 シクは旅人にこのことも話した。
「俺は部族の領域の外の方をいつもこうして一人でいて見張っている」
「それであんたもここにいるのか」
「そうだ、少し離れたところに部族の集まりがある」
 自分の部族のそこがとだ、シクは話した。 
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