歌集「冬寂月」
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五十一
煩わし
蟬の音にさへ
思ひては
心侘びしき
春日部の空
暑さ厳しき夏空に…蝉の声がこだまする…。
蝉時雨とはよく言ったものだ…。
そんな煩わしさを覚える蝉の鳴き声さえも、懐かしき思い出が湧き上がるのだから…全く歳は取りたくないものだ…。
今は見ぬ故郷の空…それでも振り返れば、やはりあの人を想ってしまうのだから…。
この春日部の空さえ、何とも侘しく感じてしまう…。
思ひ侘び
蟬も儚く
いづれ立つ
この世の他に
見ゆる夢かも
ふと…あの人のことばかりを考えてしまう…。
いい加減…忘れれば良いと言うものを…。
周囲から湧き立つように響く蝉の鳴き声さえ、その死と共に消えてゆくのに…。
夢は夢…私の夢は叶わぬのだ…。
きっと…この世を去った後に見れる夢なのかも知れないな…。
あの人と共に在れる道なぞ…。
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