ノーゲーム・ノーライフ・ディファレンシア
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第2話 王二人
元、人類種最後の領土────エルキア。
滅びを待つしかなかった矮小なその国は、しかし今や世界第三位の大国『東部連合』並びに海洋国家『オーシェンド』を併合し、『連邦』となった現在最も勢いのある国家にまで成長をしていた。
ゲームで全てが決まるこの世界においてそれは、序列最下位の劣等種が、魔法異能を駆使するデタラメを相手に連戦連勝している偉業を意味する。
さて、そんな偉業の立役者────いったいどんな奴なんだ、と。まあ、それだけ聞けば期待してしまうものだろう。
そんな稀代の王の姿────少しばかり、特別に見せて差し上げるとしよう。だが、その前に一つ警告を。
────どうか失望せぬよう。「完璧な人間などいないんだ」と、安心をこそ抱いて欲しい。
では、前置きも終わった所で堂々開帳。これが、人類種の救世主、二人の王の姿である────!!
「んー、ステフ、もうちょいエロスなポーズ取れない?」
「もっと…扇情、的に…」
「もう嫌ですわぁなんで勝てないんですのよぉぉぉぉ!!」
…変態である。そして鬼畜である。
スマホを構え、オカズの調達を行う黒目黒髪の青年────空。
同じくスマホを構える、兄とは対照的な赤目白髪の少女────白。
彼ら兄弟が、偉業の立役者――――人類最強のゲーマー、『 』だった。
ついでに、その『 』の片翼に叩きのめされ、様々な着エロを模索される赤毛の少女、
ステファニー。
「地の文にまで馬鹿にされましたわもう嫌ですわぁ!!」
「ステフ、お前でもそこにツッコミはしないと思ってたぞ…」
「お約束、ご法度…ステフ、消さ、れるよ?」
…まあ、別に消しはしないが。
これが稀代の王。これが人類最高の賢王。そう期待される二人の日常は、割といつもこんな感じだった────。
「陛下、来客です」
そうして日常を謳歌する二人(と嘆く一人)の部屋に、初老の執事が現れ、告げた。
「まーたうるさい貴族の連中か?そろそろ本気で潰してもいいんだが…」
そう、腰を上げて言う空。しかし、老執事は空の言葉を首を振って否定する。
「いえ……訪れているのは少年でございます」
「え、マジで?一体何の用だよ」
予想外の言葉に、問いを重ねる。流石に外道で悪辣で卑劣な人類悪である空と言えど、まさか子供相手にヘイトを稼くような覚えは無い。
そう首を傾げる空に、老執事は再び予想を上回る────否、予想だにしない言葉を口にした。
「『遊ぼうぜ『 』。アルテマウェポンとでも言えば、事のあらましは分かるだろ?』と、
伝言を預かっておりますが……いったいなんの事でしょう?」
「────ッ」
その言葉を聞いた二人は、一様に絶句した。
……首を傾げるステフや、伝言をしれっと口にした老執事には分かっていないのだろう。少年が口にした、『アルテマウェポン』という言葉の意味が。
「白、行くぞ。…『 』じゃなきゃ勝てない」
空の顔は、どこまでも真剣そのもの。だがそれも当然と言えるだろう────何故なら。
アルテマウェポン────それは元の世界の単語。
それを知る少年は、『 』と同じ異世界人。
加えて、異世界人がディスボードに来る方法など一つしか無い。
それらが示す事実────それは。
唯一神を倒したゲーマーが攻め入って来た────と言う事実に他ならない。
特に、少年がアルテマウェポン────ゲーマーには馴染み深い単語を選んだことからもその意図は明白だ。
要求する事がなんであれ────まずはゲームをさせやがれ、と。少年は一言で、その意図までを伝えたのだ。
そのような頭脳を持った、少なくとも侮るなど出来ない相手の出現────その事態に、彼ら兄妹は隠しようのない笑顔を浮かべていた。
「目的はなんだ…?最悪の場合、ゲームを蹴るかもな」
「そんな気…無い、くせに」
空の冗談めかしたセリフに、白が半眼で答える。こんな予想外のゲーマーの出現────乱入者にワクワクしなければ嘘だろう?
一体どんな奴なんだ!?と、二人は期待に胸を膨らませ。
────接客室の扉を、勢い良く開いた。
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