ドリトル先生と奇麗な薔薇園
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第五幕その六
「隙がない作品だね」
「緻密でだね」
「細かく描かれて勉強されていて」
「そして計算されていて」
「そうだよ」
こう皆にお話するのでした。
「そこまでして描かれていたからね」
「ううん、芸術作品だね」
「もうそこまできたら」
「描くにあたって歴史とか凄く勉強してたのもわかるし」
「あの頃のフランスのことをね」
「背景や衣装も凄いし」
「一切手を抜かず描いているし」
本当にそうしたものは全く見られません。
「こんな作品を描いて人は凄いわ」
「オスカルさんっていう主人公を生み出した人も」
「まるで実際にいた人みたいよ」
「架空の人の筈なのに」
「うん、主人公は架空の人だよ」
実際にそうだと答えた先生でした。
「名前も設定も性格も凄くしっかりしているけれどね」
「架空の人なんだね」
「オスカルさん自身は」
「そうなのね」
「うん、アンドレも架空の人物だよ」
この人もというのです。
「あと幾人かの登場人物はね。けれどね」
「けれど?」
「けれどっていうと」
「どうしたの?」
「オスカルさんのお家は実際にあった家だよ」
その実家はというのです。
「当時の貴族のお家でね」
「あっ、そうなんだ」
「お家自体は実在なのね」
「オスカルさんは架空の人でも」
「お家はあるんだ」
「架空の人物を現実の世界に上手に入れているから」
だからだというのです。
「そうなっていても違和感ないよね」
「うん、確かに」
「架空の人だとしても」
「凄く普通に入っていて」
「違和感ないわ」
「読んでいてもね」
「そこも凄いね、もうここまできたら」
唸って言う先生でした。
「正真正銘の芸術だよ」
「漫画は芸術にもなる」
「だから馬鹿に出来ない」
「そういうことだね」
「そういうことだよ、マリー=アントワネットが赤薔薇で」
当時のフランス王妃がというのです。
「そしてオスカルが白薔薇だね」
「その二輪の薔薇を中心としてだね」
「描かれていった物語で」
「その物語が芸術にもなっている」
「成程ね」
「漫画は文学にも匹敵する立場を得るよ」
そうなっていくというのです。
「そして学問にもなるよ」
「漫画が学問に」
「まさか」
「そうなるなんて」
「信じられないけれど」
「そうなるの?」
「なるよ、最初は小説だってね」
こちらの文学もというのです。
「かなり馬鹿にされていたからね」
「へえ、そうなんだ」
「小説は馬鹿にされていたんだ」
「あんなにいいものが」
「そうだったの」
「そうだよ、哲学書とかに比べてね」
こうしたジャンルと比較されてというのです。
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