全てはメロンパンの為に
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第三章
「御前他のもの食わなかったのかよ」
「他のものって何だよ」
「だから沖縄料理とかだよ」
「ああ、そーきそばとかゴーヤチャンプルか」
「そうしたのは食わなかったのかよ」
「別にな」
特に興味がないといった顔でだ、バンは答えた。
「食おうとか考えなかったな」
「あくまでメロンパンだけか」
「そうだよ」
「沖縄の名物料理興味なかったんだな」
「言われて今気付いたよ」
「そんな有様か、全く何処までメロンパン好きなんだよ」
「だから俺の人生はメロンパンなんだよ」
ここでもこう言うバンだった、家にいる時と同じく。
「それでだよ」
「沖縄でもメロンパンだけか」
「そうだよ、それでこれからもな」
「メロンパンの為に生きるんだな」
「ずっとな」
「それも人生か?けれど御前がそれでいいならな」
それならとだ、友人もバンに述べた。
「それでいいか。犯罪やるわけじゃないしな」
「メロンパンの何処が犯罪なんだよ」
「だから違うって言ってるだろ、それならな」
「ああ、いいんだな」
「御前の好きな様にしろよ」
「俺はずっとメロンパンの為に生きるからな」
だから沖縄にも行ったとだ、彼は顔でこうも言っていた。そしてこの時からもだった。
バンはメロンパンの為に生きた、そして成長して自分で焼いたメロンパンを車で売って回って生活する様になった。彼の焼いたメロンパンは絶品で店の売り上げは上々だった。しかし彼はそれに満足せず。
「俺の目指すメロンパンの道はまだ遠い!」
「あの、売れるからいいんじゃないの?」
「違うの?」
「それも大事だが美味いメロンパンを焼くことだ」
高校を卒業し修行を経て売る様になってからもメロンパンを買いに来た子供達に対して腕を拳にして言うのだった。
「そして俺も食うことだ」
「だからなんだ」
「今みたいに言ったんだ」
「どっかの被爆した憲法伝承者候補の偽物みたいなこと言ったんだ」
「あいつは偽物だが俺は本物になる!」
ここでも熱く語るバンだった。
「絶対にな!」
「うん、じゃあ頑張ってね」
「そうしてね」
子供達はその彼にこう言いつつバンが焼いたメロンパンを食べた、そのメロンパンは彼等が食べても美味かったがバンはまだ満足していなかった。
全てはメロンパンの為に 完
2018・7・19
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