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謎の素顔

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第一章

               謎の素顔
 南朱雀、彼については多くの者がこう言う。
「ああ、そんな奴いるな」
「いつも隅っこでいる?」
「うちのバイト先にもいるけれど目立たないな」
「どうもこれといって」
「印象に残らないし」
「どういった奴かっていうと」
 それはだった。
「そんな人いる?」
「そんな感じだよな」
 彼を知る者、表の世界の者達はこう言うばかりだった。表の世界ではとかく彼は目立たない人物それも男だと思われていた。
 だが裏の世界ではだ、南朱雀と聞くと。
「あいつは何なんだ?」
「男か?女か?」
「わからないな」
「男だって言う奴がいるが」
「女だって言う奴もいるぞ」
「一体何者なんだ」
「会う奴によって言うことが違う」
 それでだ、温羅の世界ではこうも思われていた。
「同姓同名の別人か?」
「男女で一人ずついるんじゃないのか?」
「それで男か女か言われているんじゃないのか」
「そうじゃないのか?」
「外見も全然違うからな」
 こう話していた、しかもだ。
 彼若しくは彼女についてだ、温羅の世界の者達はこうも話した。
「あいつと一緒に仕事をして死んだ奴も多い」
「そしてあいつは絶対に生き残っている」
「おかしなことだ」
「あいつだけは絶対に生き残る」
「それも気付けばこっちが盾になる方向にいたりする」
「あいつは笑顔で何かと親切にしてくれるが」
 それで一緒に仕事をしている者もついつい気をよくして好意的になるがだ。
「それがな」
「どういうことだ」
「あいつには何かあるんじゃないか」
「おかしな奴だ」
「不気味と言うべきか」 
 こうしたことも言われていた、それで裏の世界では南朱雀については謎それに警戒が強まっていた。
 それで朱雀自身色々と感じていたがだ、それでもだった。
 朱雀自身は平気な顔でだ、隠れ家の一つで自分の執事に言っていた。
「誰が何を言おうとも」
「旦那様としましては」
「全く以てね」
 それこそと言うのだった。
「平気だよ」
「その時の目的さえ達成出来れば」
「それでね」
 まさにそれでというのだ。
「いいからね」
「では若し」
「私の秘密を知れば」
「私が知っている以上のことは」
 執事である自分のだ。
「その方は」
「その時はね」
 悪意に満ちた笑みでだ、朱雀は執事に答えた。 
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