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レーヴァティン

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第六十二話 伊勢の巫女その四

「その前にだ」
「うどんじゃな」
「それを食わないとな」
 伊勢うどん、それをというのだ。
「あのうどんも忘れてはいけない」
「折角の伊勢じゃからのう」
「あのうどんを忘れたらだ」
 それこそというのだ。
「駄目だ」
「そうじゃな」
「だから食うか」
「それならです」
 ここで謙二が言ってきた。
「よさそうなお店があります」
「どの店だ」
「先程前を通ったお店ですが」
「名前は何だったか」
「伊勢うどんとだけ看板にあります」
「そうか、ではな」
「道を戻りますか」
 こう英雄に問うた。
「そうしますか」
「これからな、ではな」
「伊勢うどんを食べて」
「そしてだ」
 それからはというと。
「赤福も食う」
「それでは」
 こうしてだった、一行は一旦道を戻ってそうしてその伊勢うどんの店に入った。そして伊勢うどんを注文すると。
 柔らかい感じの麺のうどんが真っ黒でやたら少ない量のつゆの中に入れられて出て来た。そのうどんを見てだ。
 良太は笑ってだ、こんなことを言った。
「このうどんは大学の食堂でもあり何度も食べていますが」
「何かあるか」
「いえ、最初見た時は」
 英雄にこの時のことを話すのだった。
「驚きました」
「つゆが真っ黒でか」
「そして量も少ないので」
 だからだというのだ。
「また変わったおうどんだと思いました」
「つゆも辛そうだしな」
「実際に辛いですが」
「程よい辛さだな」
「味わいのある」
「そうしたことがわからなかったか」
「子供の頃に伊勢に行きまして」
 起きた世界での伊勢、三重県伊勢市にというのだ。
「それで見てです」
「驚いたか」
「かなり。しかし」
「食べるとだな」
「程よい辛さでうどんにも合っていて」
 その柔らかい麺にだ、讃岐うどんと違い腰はない。
「それで、です」
「美味かったか」
「はい」
 その通りだったというのだ。
「これが」
「だからだな」
「今も楽しみです」
「では食うか」
「そうしましょう」
「これぜよ、これ」
 当季ははしゃいで言っていた。
「このうどんを食わんと伊勢に来た意味がないぜよ」
「うどんだけではないでござるな」
「ああ、海老に赤福もぜよ」
 智に答えた。
「そのどれもぜよ」
「全部でござるか」
「食ってこそぜよ」
「それで、でござるか」
「伊勢に来た意味があるぜよ」
 こう智に言うのだった。 
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