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友達が欲しい

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第一章

               友達が欲しい
 柚木小太郎には心から望んでいることがある、それは友達が欲しいということだ。
 その為不幸にも健康には恵まれておらずよく風邪をひいたり身体がだるかったりするがそれでも毎日登校してクラスメイトでも誰でも話しかけていた。だが。
 友達は中々出来なかった、それで家で夕食を食べている時に家族にも言っていた。
「今日も駄目だったよ」
「友達出来なかったの」
「うん」
 母の問いに首を力なく頷かさせて答えた。
「そうだったよ」
「そうだったのね」
「今日も駄目だった、けれど」
「明日もよね」
「学校に行って」
 それこそ這ってでも行くつもりだ、どれだけ体調が悪くてもそれでも登校するのが彼の日常だ。
 しかしだ、そうしてもなのだ。
「そうするよ。僕は諦めない」
「そう、諦めたらね」
「それで負けだよね」
「よく言われていることだけれど」
 はじまりはあるバスケットボールの漫画だったと言われている、それからこの言葉と考えが定着したと言われている。
「そうよ」
「そう。だから」
 それでとだ、お太郎はまた言った。
「僕は諦めないから」
「そうしてよね」
「僕は友達が出来る様にしていくから」
「頑張りなさいね」
「うん、明日も登校出来る様に」
「しっかり食べなさい」
 夕食をとだ、母は小太郎に言った。そして小太郎もその夕食を頑張って食べた。
 小太郎は日々学校で友達作りに腐心した、クラスでも部活でも誰にでも話しかけて巷の流行を勉強してその話題のネタも頭に入れていった。そうして話しかける相手一人一人をよく観察して空気も読む様にした。
 しかしだ、それでもだった。
「実感ないね」
「友達出来たっていう」
「うん、ないんだ」
 夕食の時にまた両親に言うのだった。
「どうも」
「いや、実感なくてもな」
 父が息子に話した。
「それでもな」
「出来てるかな」
「そうじゃないか?」
「そうだといいけれど」
 小太郎は俯いた顔のまま父に応えた。
「友達出来ていたら」
「クラスでよく話す子も出来てるだよ」
「何人かは」 
 実際にとだ、小太郎はおかずのスパムのステーキを箸で食べつつ父に答えた。
「やっと出来たよ」
「だったらな」
「その子達がなんだ」
「御前の友達じゃないか?」
「そうかな」
「そうだろ、部活でもそうした子いるんだろ」
「先輩でも後輩でも」
 陶芸部に入っている、その陶芸も頑張っている。
「出来た」
「だったらな」
「その子達も僕の友達」
「そうだろ、だから実感ないとかな」
「思っていても」
「実は違うだろ、それでな」
 こう我が子に言うのだった。 
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