空に星が輝く様に
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28部分:第三話 入学その四
第三話 入学その四
「それに対して向こうはな」
「そうよね。明るい青よね」
「コバルトブルーか。いいよな」
彼女を見ながらの言葉である。
「ああした色もな」
「そう?」
しかしであった。星華はここで不機嫌な顔になるのであった。
「私は別に」
「そうは思わないって?」
「別にね」
その顔での言葉である。
「思わないな」
「また何で?」
「何でもないわよ」
今度は顔を背けさせての言葉であった。
「それはね」
「何か話がわからないんだけれど」
「わかるようには言ってないし」
声も不機嫌なものになってきていた。
「別にな」
「あのさ、佐藤」
陽太郎は何が何なのかわからずそれで星華にまた言った。
「とりあえずさ。落ち着かない?」
「私は最初から落ち着いてるけれど?」
「そうじゃなくてさ。何ていうかさ」
彼女に言いながらも陽太郎はその席に座っている少女を見ていた。そこに静かに座り本を読んでいる。文庫本でそのタイトルは。
「ふうん、坊ちゃんか」
「坊ちゃんって?」
「あっ、何でもないよ」
今度は彼がこう言う番であった。
「何でもないから」
「そうなの」
「たださ」
そしてまた言うのであった。
「何ていうか」
「何ていうか?」
「佐藤って本読んだっけ」
話が自然にその方向にいった。言いながら星華に顔を向けるのだった。
「何か読んでなかったか?」
「漫画なら読んでるけれど」
これが彼女の返答である。
「ジャンプとかマガジンね」
「小説とかは?」
「まあ携帯小説よね」
この辺りはまさに今時の女の子であった。
「読んでるけれど」
「そうか、御前携帯派だったんだな」
「そうよ。斉宮も読んでる?」
「携帯小説か?」
「そうよ。読んでるの?」
こう彼に問うてきたのである。
「そっちは。どうなの?」
「まあ一応はな」
彼は正直に答えた。
「読んではいるさ」
「そうなの。あんたもなの」
「ただな」
「ただ?」
「あまり読んでないけれどな」
ここでも正直に述べたのだった。
「そういうのはな」
「そうなの。あまりなの」
「俺はやっぱりあれなんだよ。文庫で読むのが好きなんだよ」
言いながらまたちらりと彼女を見るのであった。星華は今はその視線には気付かなかった。
「文庫でな」
「それで読むのがなのね」
「ああ、好きだ」
実際にそうなのだという。
「佐藤は携帯派なんだな」
「まあ最近じゃ携帯小説も本になったりしてるけれどね」
「そうだよな。随分と変わったよな」
「本当にね」
「まあ本も読んでおかないとな」
ここではもっともらしい理由を述べる彼だった。
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