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魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話

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第百二十一話

「すまんな一夏。これから鈴と女同士で話す事があるから先に帰っていてくれ」

「そういうことよ。さっさと帰りなさい」

「お、おう」

俺と小星娘々の戦闘を嗅ぎ付けて来た箒と一緒に鈴に土産を渡し、昼食を取った後、俺は二人から追い出されるように鳳凰を追い出された。

「うむ…なんだったんだろうか…」

てくてくと帰り道を歩きながら呟くと、周りから返答がきた。

そう、今現在俺は一人ではないのだ。

「女同士の戦いだよ」

「一夏様はモテるからねぇ」

「カカ…ちげぇねぇ」

「おまえらぁ…」

ふわっとした浮遊感。

「おぉユートピア。我が眷属にして主よ」

奏の瞳を見下ろす。

「奏。悪趣味だぞ」

毎日血を与えていたせいかオルコット家襲撃の時より少し高くなっている奏が、俺の脇に手を入れて持ち上げている。

いつも箒とかにされているようにだ。

「つかなんだよその名前。さっきは咄嗟のことだったから聞かなかったけどよ。
クイーンって…俺は男だぞ」

「カカカカ!お前と俺様は精神が繋がっている。貴様の力と内面と見た目を鑑みて着けたベストなネーミングだ」

こいつネーミングセンスねぇわ。

つかキスショットってビリヤードだし。

「お前は、お前をわかっていない」

「奏。人は自分自身を一番わかっていない物なんだぞ。吸血鬼がどうかは知らないがな」

「アプリコットとオーアはわかっているらしいぞ」

アプリコット…オレンジ…橙か。

オーア…ゴールド…金色…稲荷だな。

「うん。ますたーの事はますたー以上に理解してるよ。誰よりも、誰よりも。
束よりも、箒よりも、千冬よりも、稲荷よりも。
だって生まれた時から一緒なんだもん」

「はいはい。で?俺の事を一番知ってる式神としちゃこの名前どうなのよ?」

「ユートピアはデストピアとの対比だしますたーは基本的にハッピーエンド主義者だからOK。
クイーンパラドクスはそのまま矛盾の女王。
ますたーはエゴイストだからね。言ってることとやってる事が結構違う。
グリップアンドブレイクダウンは某吸血鬼から、ますたーは『分解』使えるしぴったりだね」

なぜこうも説明っぽいのだろうか。

「だから、私としてはますたーの名前はピッタリだと思うよ。
少なくとも奏の旧名よりは分かりやすいし」

デストピア・ヴィルトゥオーゾ・スーサイドマスター。

絶望の園で己が死を奏でる者か…。

「『転生にして新生にして厭生』一夏様にはぴったりです。
一夏様って、ご自分が嫌いですよね?」

「きらい、ではないが好きでもないな」

自己嫌悪。自己批判。

「だが、自分自身を手放しに好きになれる奴なんてこの世にいるのか?」

「私は私が好きだよ?ますたーに使ってもらえる私が。式神である私が」

「そ…」

でもそれは俺が縛っているからじゃないのか…?

もし俺が忠誠術式を解いてもお前は同じ事を言えるのか…?

「ますたー。忠誠術式の内容はますたーに危害を加えないっていうだけだよ。
私の感情も気持ちも、ますたーには縛られてない私だけの物」

そう…なのかな…

「一夏様。もし他の人間を信じられなくても私達だけは信じてくださいよ。
じゃないと私達のレゾンデートルが崩壊してしまいます。
もし一夏様が私達を信じず、私達を使わなかったら、式神として甦った私達はどうすればいいんですか?」

ああ、そうかい。わかった。わかったよ。

「お前らは俺の式神だもんな。お前らが俺を裏切るなんて、あり得ないもんな」

「そう。私達はますたーのイエスマン。だって止めるのは私達じゃなくて束たちの仕事なんだもん」

「カカ!モテるなユートピア」

「うるさいぞ奏。さっさとおろせ」

案外あっさりとおろしてくれた。

けど今度は両隣の橙と稲荷が腕を絡めていた。

「ますたー」「一夏様」

「どうしたいきなり…」

二人はずい、と俺の耳に口を近づけた。

そうして、囁くように言った。

「「新生にして転生にして厭生の吸血鬼ユートピア・クイーンパラドクス・グリップアンドブレイクダウン。
汝が生に歓喜せよ。汝が理想を創りだせ。
汝が矛盾を押し通せ。汝が敵を握って壊せ。
汝が僕は全てを捧ぐ。
結びし絆と契りが導き、我らを我らたらしめん」」

「やめんか!くすぐったい!」

二人を引き離す。

「つかなんだよさっきの!吸血鬼としての俺と契約でもする気か!?」

「「ばれたか…」」

「ばれるわ!」

むしろなぜばれないと思った!?

「ま、いいや」

「一夏様は一夏様だし、契約の再発行はなくてもいいかな」

お前らなぁ…

「かか!かかか!かかかかか!面白いなぁ!お前らは!俺様も退屈しなくてすみそうだ!」

もう勝手にしろ、と言いたい。

まぁ、俺も勝手にするけど。

side out











鈴の部屋には部屋の主と大柄な女がいた。

「ねぇ箒。いい加減『はなして』くれないかしら?」

「ん?どっちの意味でだ?」

「どっちもよ!」

箒は鈴のベッドに背を預け、あぐらをかいた膝の上に鈴を抱き込んでいた。

「いいではないか。ふむ。鈴はやはりいい匂いがするな」

鈴の首筋に顔を近づけ、すんすんと鼻を動かす。

「ひやっ!? やめなさいこの狐ぇ!」

「ふむ……そそるな」

「待ちなさいよアンタ何言ってんの!?」

「では一夏の話をする前に少し仲を深めるとしようか」

「アンタふざっ…ママー!助けてー!」

「ここはお約束通り『お前がママになるんだよ』とでも言っておこうか」

「アンタ出せないでしょうがっ!」

「さぁ、どうだろうな…」

箒の歯が鈴の首に突き刺さる。

「ぅっ…あぁ……」









一時間後

二人はベッドの中で向かい合っていた。

二人とも服を脱いでおり、いったいナニがあったのかは容易に創造できるであろう。

「本題に入ろう」

「長い前置きだったわね」

「一夏の事についてだ」

「なんでいきなり素面なのよ」

「ん?シながらがよかったか?」

と箒の手が動く前に鈴がそれを押さえた。

「もうどうでもいいから話なさいよ」

「では『一夏ハーレム計画』の概要を」

「ストップ」

「どうした?」

「今なんて言った?」

「『一夏ハーレム計画』」

鈴は絶句した。

「馬鹿馬鹿しいのはわかっているがとりあえず話を聞いて欲しい」

箒は口を開きかけた鈴を制して続けた。

「今の一夏は危うい。放っておけば何処かへ消えかねん」

「んー?」

「今の一夏は何というか、いろいろ無茶ができてしまう」

「吸血鬼だから?」

「『識った』からだ。故に一夏は自身の肉体に価値を見いださなくなった。
これまで以上にな」

「価値って何よ」

「そのままだ。一夏は自身が傷つくことを厭わない。
前々から再生魔法を使えるせいでそんな兆しはあった。
だが今回のモンドグロッソに関する一連の事件でさらにそれが酷くなった」

「それで?」

「うむ。私は『鎖』が欲しいのだ」

「鎖?何の?」

「一夏を繋ぎ止めておく鎖だ」

「一夏を縛り付けるの?」

「否。一夏を縛り付けることはできない。
だが現世にとどめておくことくらいはできる」

「何よそれ…まるで一夏が妖精みたいな言い方ね」

「人より上位の存在である点でみれば同じだな」

仮に臥煙伊豆湖が一夏から夢渡で吸血鬼性を抜いても、一夏はイノベイターとして人類の上位種であり続ける。

「だから、鈴」

「何よ」

「一夏を落とせ」

「…………熱中症で頭がイッたのかしら」

鈴のジト目が箒に突き刺さる。

「いや、さっき言った通りだ。お前なら一夏を繋ぎ止める鎖の一本になれる」

鈴は数秒考え…

「一本…? アンタまさか…」

「お前以外にも数人候補はいるぞ。理想は全員が一夏と関係を結ぶ事だ」

「アンタ…アンタそれでいいの?
去年の夏祭りの時、アンタあれだけ一夏に見て欲しいって言ってたのに」

「一夏が消えるよりはいい。今も一夏は私をみている。一夏の瞳はそういう瞳だ。
だが、時折私達を見ているはずの一夏の気配が弱くなる。
そういう時、どうしても不安になるのだ。
一夏が私達から離れる時は、大抵一夏自身になにかあった時だからな」

「ふーん…」

「だから、お前が一夏にアピールしようと私は一向に構わん。むしろ応援する」

「憐れみで言ってるならアンタを殴る所なんだけど…」

箒の瞳には慈悲などない。

あるのは一人の男への愛だけ。

それをみた鈴は大きくため息をついた。

「はぁ……。いいわ、一夏を惚れさせてやるわ。
後でアンタが後悔しても遅いんだからね!」

「ほう、大きく出たな。だが一夏のハーレムに入るのはお前だけじゃないぞ」

「参考までに聞かせてちょうだい」

「アルシャーヴィン姉妹はわかるか?」

「あのロシア系のロリっ娘よね」

「うむ。それと織斑姉妹。千冬さんと円香だ」

すると鈴が不思議そうに聞いた。

「マドカって誰…?」

「む?はなしてなかったか…。円香というのは一夏と千冬さんの妹だ。
私が軽々しく話して良いことではないのでな。
詳しくは一夏から聞くといい」

「ええ、そうするわ」

「ただ…」

箒が憂うように続けた。

「円香の件は一夏と千冬さんの両親に関わる事だからな。十中八九渋るぞ」

「なら無理には聞かないわ」

「それがいいだろう。あとは更識姉妹と布仏姉妹。
去年の夏祭りにも来ていた青髪の姉妹とその従者だ」

「姉妹多いわね…」

「そういえばそうだな」

と若干メタい話を挟みつつ箒が続ける。

「蘭だが…。一夏の奴未だに怖がられてると思い込んでいるからなぁ…」

「端から見ればあれほど分かりやすいのはないわよねぇ…」

「後は…そうだな。ヴァルハラコンビは既に隷属しているからいいとして…」

「隷属!?」

「いろいろあってな。私が調教した」

「ちょっ……え…?」

「あの二人には手を焼かされた。性感上昇魔法はあの二人の為に作ったような物だしな」

「ゴメンナニイッテルノカワカンナイ」

箒は自身の内側に意識を集め、魔法式を構築した。

「では実践と行こうか。リリムキッス キャスト」

side out












「箒と鈴を二人っきりにしたのは間違いだったな…」

「どうしたのいっ君?」

「なんでもねーですよ…」
 
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