天体の観測者 - 凍結 -
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『ウィス』という存在
前書き
2018年の12月に公開されるドラゴンボールの映画で『ブロリー』が24年ぶりに登場!
やったぜ、俺得の展開です
ブロリーは作者の大好きなキャラです
あの圧倒的な力、今なおMADで登場する人気ぶりとネタ盛り沢山のキャラクター性
その全てが私を刺激します
そこでふと思いました
他作品を比較することは人によっては忌み嫌われることは分かっているのですが、これを考えずにはいられません
ハイスクールD×Dにてドラゴンボールのブロリーのように主人公補正が存在していても、主人公を完膚なきまでにズタボロにし、主人公の仲間を一掃し、最後は自分だけの力では打倒することができない『絶望感』と『圧倒的悪役感』を持つ敵がいないことに……
他にはフリーザや魔人ブウ、破壊神、ジレンのような魅力的な敵がいないィィィィ───!
「一大事ですわ!」
オカルト研究部の室内に朱乃の声が響き渡る。
時刻は夕方、本日もオカルト研究部は活動に励んでいた。
「どうしたのですか、朱乃先輩?」
彼女の余りの落ち着きの無さに一誠が疑問の声を上げる。
だが当人である朱乃の耳には届いていないのか、今もヒステリックに声を荒げている。
「ウィスに私が思い切り抱きついても、胸を押し付けても、可愛らしく声を掛けても何もリアクションを返さないのですわ!」
朱乃の心からの叫びにその場のリアスを含めた一同は彼女が言わんとすることを理解した。
「つまり朱乃はウィスとの距離を縮めたいのね?」
「その通りですわ!」
力強く首肯し、指を突き立てる朱乃。
「そうは言っても俺達はウィスさんのことを知っているようで何も知らないですよ、朱乃先輩?」
改めて考えると自分達はウィスのことを何も知らない。
「本人はウィスと名乗っており……」
「軽く4000年は生きていて……」
「その正体は天使にして、その力はただひたすらに孤高……」
「空を飛行することが可能で、宇宙にも飛翔し、別荘を宇宙に有している。」
「僕達の師匠にして、エクスカリバーでコカビエルを一掃し……」
「『破壊』という力でシャルバ・ベルゼブブを屠り……」
「北欧の主神にも人目置かれ、神を相手に一歩も引かない姿勢……」
「本人は大の神嫌いにして、聖書の神の死も知っていた。」
「教会から派遣されたイリナとゼノヴィアの精神をへし折り、現在そのゼノヴィアとロスヴァイセさんの2人で街に繰り出している。」
「一誠くん、そのことで少しお話が。」
「ヒェッ……」
「一誠さん……」
「もう、一誠の馬鹿。」
思いつく限り、知りえるウィスのことを列挙してみるが核心に至ることはない。
「……改めてウィスさんとは何者なのでしょう?」
「リアス部長は何か知らないのですか?」
「そうね、私も様々な文献を読み漁ったり、実家の方に問い合わせたりもしたんだけどお手上げね。『ウィス』という存在は歴史上にて一度も確認されていないわ。」
「……では一体ウィスさんは何者なのでしょうか?」
「そういえば朱乃先輩はウィスさんとどう出会ったのですか?」
「私ですか?そうですね……。」
先程まで惚けていた朱乃は皆に向き直り、真剣な面持ちで語り始める。
自分とウィスの出逢いを。
「私がウィスと出逢ったのはまだ私が幼い時でした。」
今でも思い出す。
為す術無く自身の母が倒れ、血だまりに伏した光景を。
「一誠君達は知っていると思いますが私は人間である母と、堕天使である父の間に生まれたハーフです。」
「ハーフとは古来より忌み嫌われる存在。当然、私もその例に漏れることなく命を狙われることになります。」
それが世界の摂理。
否、ハーフという存在自体が許されないのだ。
「先ず母が下手人達の攻撃に倒れ、最後に私が狙われました。」
「その時です。ウィスが眩いまでの光と共に現れたのは。」
その光景を姫島朱乃は生涯忘れない。
「宙に突如現れた光の粒子が徐々に人の形を創り出し、『ウィス』が地上に降り立ったのです。」
死に瀕した状況であったにも関わらず、姫島朱乃は見惚れた。
『ウィス』の存在そのものに。
「不思議な感覚でした。彼がその場に現れた瞬間、安心し切っている自分に気付いたからです。」
もう大丈夫、彼が母と自分を助けてくれると。
「後はあっという間の出来事でした。ウィスが下手人達をいとも簡単に消滅させることになります。」
ドーム状の力で閉じ込められた下手人達は、強制的に圧縮、圧縮ゥ!されることでその姿を消滅させた。
割とエグイ技である。
まあ、同情など一ミリもしないが。
あの時、ウィスは顔を伏し、掌を見詰めながら呟いていたことを朱乃は思い出す。
5割と、確かにウィスは呟いていた。
その言葉にはどういった意味が込められていたのか。
依然として謎だ。
下手人達を5割の力で倒したという意味ではないだろう。
何しろウィスにとって旧魔王の悪魔も虫けらに等しかったのだから。
「お前ら、興味深いことを話してるな。」
オカルト研究部の室内に突如、アザゼルの声が響く。
「アザゼル、貴方いつの間に……。」
それもノックもせずに。
「悪いが勝手に聞かせてもらったぜ、お前らの会話を。」
アザゼルは悪びれる様子もなく謝罪する。
「話を戻すが、その時のウィスは何らかの理由でそこの姫島の嬢ちゃんの前に転移してきたと俺は考えている。」
リアス達の非難の目を無視し、アザゼルは言葉を続ける。
「俺の方もリアスと同じように『ウィス』という存在を調べたが、成果はなかったな。」
「俺自身『ウィス』という奴の存在の噂を聞いたこともないし、ましてや会ったこともない。」
それは妙な話だ。
悠久に等しい時を生きている自分が一度たりとてウィスという存在を知らないとは。
「だが聞くところによるとウィスは4000年近く生きているんだろう?」
「だったら答えは簡単だ。」
「『ウィス』はこの惑星上の存在ではなく、宇宙の神話体系の天使だということだ。」
リアス達の驚きを他所に、小猫はぼそりと呟く。
「……単純にウィスさんに意中の女性がいるからでは?」
ウィスが朱乃のアプローチに無反応な理由はそれしか考えられない。
小猫は人知れず的確な答えを突いていた。
途端、オカルト研究部内に眩い極光が迸る。
大気を震撼させ、その光の本流は室内を幻想的に照らし出した。
『……!?』
圧倒的な存在感が室内を支配し、リアス達はその場に凍り付く。
ただ一人、アザゼルは冷や汗を流しながらも身構えていた。
光の本流が大気を流れ、周囲へとその力を波及させる。
室内は荒れ狂い、その極光の中から姿を見せるは……
▽△▽△▽△▽△
商店街は人々が行き交い、潤う。
周囲には学生や主婦の姿が。
「あの、大丈夫なのだろうか?」
ゼノヴィアは一人ぼそりと呟く。
「何がですか?」
「リアス部長に何も言うことなく、部活を欠席してしまって……。」
ゼノヴィア、彼女は現在ウィスに連れられ街に繰り出していた。
本日の授業が終わり、ウィスが強制的にゼノヴィアの腕を引っ張り、引きずってきたと言った方が正しいが。
「大丈夫ですよ、一誠に言伝を預けましたから。」
クレープを口に運びながらウィスは彼女の悩みを一掃する。
肩には同じくオーフィスがクレープを口に運びながら跨り、隣には人の姿に戻った黒歌が佇んでいる。
今日の黒歌は清楚なワンピースにその魅惑的な肢体を包み、周囲の男性の目を釘付けにしている。
「まあまあ、そんなことよりも今日は楽しみましょう、ゼノヴィアさん。」
「いや、そうは言っても……むぐ!?」
口に広がるはクレープのまろやかな味。
ゼノヴィアの語りは途中で止められてしまった。
「貴方は変な所で拘りますね。」
「いやそうは言っても……」
モグモグ、ゼノヴィアの口が止まることはない。
予想以上にクレープが美味しかった。
「初めて出会ったあの脳筋な貴方は何処にいったのですか?」
「ウィスさんは私のことをそう思っていたのか……。」
嘆息するしかないゼノヴィア。
「因みにイリナのことはどう思っていたんだ?」
「アホの子ですね。」
彼女からはあの冥界の女主人と同じ匂いがする。
決して彼女がイリナと同じくアホというわけではないが、どこか残念な美人の匂いがするのだ。
「きっと目を離せば騙されてお金を騙し取られてますね、あの子は。」
「すまない。実はオカルト研究部に辿り着く前に既にイリナはお金を騙し取られているんだ。」
すまない、本当にすまない。
ゼノヴィアは悲しげに懺悔する。
「主の名の下『断罪、断罪ィ!』。……これでは脳筋と言われても仕方ないと思いますが?」
「うぐ、そう言われると返す言葉もない。」
ウィスは攻める、攻める。
彼女が気にしていることを裸足で踏み入り、愉しむ。
「『いや、彼女からはまだ僅かに信仰の匂いがする。』」
一字一句間違えることなく、決め顔で。
これ以上ない真剣さを浮かべながら。
「『私は信仰の匂いには人一番敏感でね。』でしたか?」
主の名の下、断罪、断罪ィ!
ウィスは終始笑顔である。
「言わないでくれ、あの時の私を指摘しないでくれ。」
ゼノヴィアは顔を赤く染め、クレープに噛り付く。
まだだ、まだ終わらんよ。
「終いには私を天使と称え、平身低頭ですからね。」
ゼノヴィアに大ダメージ!
効果は抜群だ!
「まあ、主も死んでいましたし、貴方達は傀儡と言っても過言ではない状態でした。」
「加えて、上層部はその事実を隠蔽してまで貴方とイリナさんを派遣させていたいう事実、はらわたが煮えくり返る思いではないのですか?」
ウィスが彼女の立場ならば上層部を軒並み血に染め上げている。
血祭りにした後は、全裸の状態で信者達の前に吊し上げの刑だ。
「……参考程度に聞くが、もし仮に主が存命していた場合、ウィスさんはどうしてたんだ?」
「面白い質問をしますね。決まっているでしょう?」
「ヒェ……。」
途端、真顔と化すウィス。
クレープの包みが砂と化し、掌からこぼれ落ちる。
軽いホラーである。
「先ず、死なない程度に痛めつけ、天界から引きずり下ろした後は、信者達の前で吊し上げます。」
手始めに自尊心、信仰心を粉々に打ち砕く。
ぶち殺し確定である。
「次に神器のシステムを停止させ、行き過ぎた狂信者と実験を廃します。」
実際に過去にウィスは聖剣計画と呼ばれる計画を潰している。
「そして最後に許すと見せかけて神を『破壊』します。」
許すと言ったな、それは嘘だ。
「……。」
怖い、ただひたすらに容赦がない。
ゼノヴィアは戦慄する他ない。
「……因みに神を廃した経験は?」
「ある女性の人生を呪いで滅茶苦茶にしたとある女神をボロ雑巾にしたことがありますね。」
「他にはとある主神を消滅寸前にまで痛み付けたことも多々あります。」
本当に神とは真面な奴がいない。
「聖書の神が死んだと聞き及んだ時の気持ちは?」
「正直、ざまぁと思いましたね。」
ざまぁない。
飯ウマであった。
「……では最後にシャルバ・ベルゼブブに遣っていた『破壊』とは何なんだ?」
ゼノヴィアの最後の質問。
「ああ、あの蠅ならこの世界から完全に消滅しましたよ。」
「あの力は"存在"そのものを『破壊』するものです。精神も魂を、そして"存在"そのものさえも。」
「相手が幽霊だろうと何だろうと『破壊』します。」
そこに一つの例外も存在しない。
「無論、あの蠅は如何なる手段による蘇生も不可能です。」
「『破壊』された存在は宗教によって解釈は多岐に渡りますが、天国や地獄、来世にも行けず、輪廻転生の輪にも組み込まれることなく、その"存在"そのものを『破壊』されます。勿論、霊と化すこともありません。」
ただひたすらに"存在"を破壊する。
それが『破壊』の能力だ。
この力の真に怖ろしい能力はその"存在"の『破壊』が平行世界にまで及ぶことである。
「因みに赤龍帝のオーラは異性を魅了すると聞き及んでいるので、私がいつも『破壊』しています。」
赤龍帝の籠手の魅了効果や効果範囲が現状では不明だが、『破壊』しておくことに越したことはない。
ウィス自身、異性の魅了に良い思い出など存在しないのだから。
「また赤龍帝の籠手の中に眠るドライグ曰く、『対価、つまり代償を支払えば更なる力を得ることができる』と聞きましたが、それを行うことは一誠には禁じていますね。」
「……それは何故?」
純粋な疑問の声をゼノヴィアは上げる。
戦力が『代償』の一つで飛躍的に上昇するならば儲けものだと思うのだが。
「何故か?簡単なことですよ。それで得られる力などたかが知れているからです。」
更なる力とは禁手ないしはそれに匹敵する力のことだろう。
「そもそも大前提からして間違っています。」
「『代償』とは身に余る絶大なる力を行使することを条件に生命の危機に至り、絶大な反動を背負うことを意味します。しかし、あのドライグが提示する『代償』とはドライグ自身が生き延びることを前提に力を引き出すのですから、一誠という種族的にも下に当たる器を媒体にしている時点で引き出すことができる力など底が知れています。」
「現状の一誠は漸く禁手に耐えうる器になった程度。アザゼルが与えた補助道具の恩恵を受けたとしても現状の一誠では耐えられないでしょう。」
ウィスは否定的な姿勢で赤龍帝の籠手《ブーステッド・ギア》のドライグの言葉を非難する。
ゼノヴィアはウィスの言葉に納得しながらアイスを舐めるのであった。
「前から思っていたのだがウィスさんは人一倍アザゼルに対しての対応が冷たいな。」
「逆に聞きますが友好的に接する理由がありますか?」
ウィスの瞳はただひたすらに冷たい。
その圧力に押され、ゼノヴィアは無意識に冷や汗を流してしまう。
「これまでに多くの神器所有者達を殺め、危険分子になり得るという理由だけで人々を手にかけることを良しとしてきた堕天使の総督に?」
「それは……。」
無論、神器所有者を殺めようとしてきた堕天使のほとんどははウィスが逆に消している。
どうしようもない堕天使のみではあるが。
「これまで散々世界に傷跡を残しておきながら、今になって種の存続が危うくなってきたから和平を結ぶ?」
「余りにも勝手が過ぎます。」
「最大の被害者である人間を蔑ろにしていることも許せませんね。」
「私があの会議に参加したのはコカビエルの件の後始末と、三大勢力に対する牽制を図るためにすぎません。」
「三大勢力がこれ以上、不手際を起こすのならば私が三大勢力を滅ぼします。」
数秒もあればそれは十分可能だ。
「それでは悪魔であるリアス部長達に手を貸している理由は?」
「初めは朱乃の成長を見届けることが理由でしたが、今ではリアスを含む眷属達の成長を見守ることが目的となっていますね。」
こう、疼くのだ。
彼女達がこの世界に大きな変革を引き起こす立役者となる可能性を。
「これは余談ですが、ゼノヴィアやイリナさんが私にあのまま反撃してきたのならば、貴方達のエクスカリバー(笑)をヤ〇オクで売ろうかと思ってました。」
「ヤ〇オク!?」
よりにもよってヤ〇オク!?
伝説に名高いエクスカリバーを!?
「因みにゼノヴィアさんの主観でエクスカリバー(笑)はおいくらだと思いますか?」
「私が知るか!」
ゼノヴィアの絶叫が響き渡る。
「まああのエクスカリバーが本物かどうかも怪しい話ですが。」
「それはどういう……」
「考えてもみてください。エクスカリバーは本来ならば湖の乙女に変換されているはずなんです。仮にあれが本物のエクスカリバーを基盤にしているのならば、天界側が行っていることは死体漁りに等しい行為ですよ。」
どの道胸糞悪い話ではあるが。
「騎士道を重んじるアーサー王が遣っていたエクスカリバーから透過能力や擬態の能力が生まれていることも矛盾しています。」
「……。」
ゼノヴィアは黙るしかない。
否、的を得たウィスの言葉に言葉が出てこなかった。
「なーに、辛気臭い話してるにゃ!」
そんな二人の肩を抱き寄せるは黒歌。
「今はそんな難しい話をするよりも楽しむにゃ!」
「黒歌さん……。」
「おや、黒歌、口周りにクリームが付いていますよ。」
見れば彼女の頬にクリームの食べ残しが残っていた。
「えっ、嘘、どこにゃ?」
「ほら、ここですよ。」
屈み込み、ウィスは黒歌の頬へと手を伸ばす。
少し頬を染めながらも黒歌は目を瞑り、少女の様に恥じらった。
だが、いつまで経ってもウィスの手が黒歌の頬からクリームを取ることはなかった。
「やはり百円ショップは素晴らしいです!」
「ロスヴァイセさんは百円ショップがお好きなのですか?」
「それはもう!安くて、品物の種類が豊富となれば文句なんてあるわけないじゃいですか!」
「……。」
見れば百円ショップに駆け込むロスヴァイセに付き添うウィスの姿が。
「ですが北欧では誰も私の趣味を肯定してくれる人がいないんです……。」
「それは聞き捨てなりませんね。人の趣向は様々だというのに……。」
「ですよね!」
「私も世間に疎いが、百円ショップは素晴らしいと思うぞ、ロスヴァイセさん。」
「ゼノヴィアさんもそう思いますよね!」
「……。」
彼らはその場にポツンと置いてけぼりを食らった黒歌を華麗に無☆視している。
「ここは一つガツンと北欧の方々に言わなければなりませんね。」
「ウィスさん……。」
「……。」
ウィス先生ェ……
「ウィスさん、私は今度はこのお店に行きたいのだが。」
「構いませんよ。ゼノヴィアさんはもっと娯楽を知るべきですからね。」
「いや、何でニャ!?」
『……?』
遂に黒歌の我慢が爆発する。
繫華街のど真ん中であるにも関わらず、絶叫を上げた。
「あの雰囲気なら『クリームを取りましょうか?』とウィスが恥ずかしさに頬を染める私の頬のクリームを優しく取ってくれる流れになるはずだったにゃ!?」
『……。』
「『いえ、此方こそ……』と同じくウィスも頬を染め、『何照れてるのかにゃーん』って私が言う予定だったのに───!」
なのに、なのに……!
ムッキイィィィィ───!
「えぇ、乙女ェですかぁ……」
「黒歌、意外と乙女……?」
「あの、こう言っては何ですがその……、ドン引きです。」
「グハ……ッ!?」
ロスヴァイセの言葉が突き刺さり、黒歌は倒れ込む。
ロスヴァイセの容赦の無い口撃が黒歌にクリティカルヒット!
効果は抜群だ!
「ちくしょう、ちくしょうにゃ……」
黒歌は打ちひしがれ、その場で崩れ落ちてしまった。
「クリームがまだ付いていますよ、黒歌?」
取ってさしあげましょう、ウィスが打ちひしがれる黒歌に歩み寄り、視線を合わせる。
嘆息したウィスが頬に手を添え、顔を近付けた。
え、マジで?
怒涛の急展開に狼狽し、思わず目を瞑る。
頬を染め、黒歌は迫るウィスを歓迎した。
目を閉じた黒歌の頬に生温かい感触が伝わり、クリームを綺麗さっぱり舐めとる。
言わずもなく舌であった。
え、夢じゃないよね?
フィーバーする内心を隠すことができずに、頬を蒸気させ、黒歌は今にも卒倒してしまいそうである。
「これで綺麗になりましたね。」
はい、綺麗になりました、綺麗さっぱり
だが、ウィスの声が……
声が……
ウィスの声が遠くない?
「……ご馳走様?」
見れば前にはオーフィスが唇を舌で舐めとり、此方に首を傾げながら見詰めていた。
そんなオーフィスを持ち上げ、黒歌を見据えるはウィス。
「……。」
ちくしょう、ちくしょうにゃ……
「……!」
すすり泣く黒歌を静かに見据えていたウィスが突如、空を見上げた。
否、遠方を見据えている。
「急用ができました。早急にオカルト研究部に戻りますよ、皆さん。」
「放っておいてくれにゃ。捨てられた猫である黒歌さんはこの場で余生を過ごすんだにゃ。もうどうでもいいグェ……!?」
力無く脱力する黒歌を掴み上げ、ゼノヴィアとロスヴァイセを抱え上げたウィスは瞬く間にその姿を消失させる。
正に一瞬の出来事。
次の瞬間にはウィス達の姿はその姿は消えていた。
後書き
「『代償』とは身に余る絶大なる力を行使することを条件に生命の危機に至り、絶大な反動を背負うことを意味します。」
→ しかしその『代償』という名ばかりの力の反動は美少女の指チュパチュパになるのであった。ウィスは呆然とするしかなかった(笑)
因みに作者の『代償』を負う代名詞として認識しているのはNarutoのガイ先生の『八門遁甲の陣』ですね
あれは激熱でした
あとはBleachの主人公の黒崎一護の『無月』やドラゴンボール超の『身勝手の極意』です
→ Bleachの主人公は死神の力を喪失し、ドラゴンボール超の場合は背中からの大出血+既に心身が満身創痍の上での発動が条件
これらは全てかなりリスキーな『代償』です
ハイスクールD×Dでは『代償』と呼ばれるものが存在しないのではないでしょうか?
別にハイスクールD×D事体は好きなのですが、主人公の一誠に余り良い印象が持てないのが現状です
これって私だけですかね?
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