| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

空に星が輝く様に

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

258部分:第十八話 運動会その十六


第十八話 運動会その十六

「そっちはね」
「何だ、飲んでるの」
「だからビールはあまり飲んでないわよ」
「じゃあ何飲んだのよ」
「チューハイ」
 それをだというのである。
「カルピスとレモンね」
「結構飲んだの?」
「いつも通りよ、そっちは」
「何だ、じゃあかなり飲んだのね」
「飲んでもね。それでもね」
 ここでまた言う星華だった。妹はその彼女の横に来てだ。そのうえで姉の話を聞きはじめた。彼女は日本酒を持って来ている。
「嫌な奴の顔は思い浮かぶはね」
「嫌な奴ねえ」
「これが凄い嫌な奴なのよ」
 憮然とした顔のままでまた妹に話す。
「すっごくね」
「そんなに嫌な奴なの?」
「何か癪に障るのよ」
 こう言うのであった。
「ちょっとね」
「まあまあ。飲む?」
 星子は湯飲みを一個姉の前に差し出してみせた。
「お姉も」
「日本酒?」
「そうよ。飲む?」
「今日はもう充分飲んだしいいわ」
 だが彼女はこう言って妹の勧める酒を断った。
「だからね。悪いけれどね」
「そうなの。じゃあ私だけ飲ませてもらうね」
「そうしなさい。それでだけれどね」
「うん。今度はどうしたの?」
 星子は自分の湯飲みで酒を飲みながら姉の言葉を聞く。
「あんたも嫌な奴いるのよね」
「そういう相手がいない人っていないんじゃないの?」 
 これが星子の返答だった。
「この世の中に」
「いないかしら」
「だって百人いて百人共好きってことないじゃない」
「ええ」
「好き嫌いってどうしてもあるしさ」
 こう姉に話す。つまみは柿の種である。
「だから。それで普通よ」
「普通なのね」
「まあ私だって嫌な奴いるけれど」
 今度は自分自身についての話を姉にする。
「それでもね。そうした相手は無視するし」
「それで済ませるの」
「こっちが何かしても気分は晴れないしね。だからね」
「無視するのね」
「それだといいじゃない。お互い不愉快な思いしないし」
「そういうものなのね」
 星華は妹の話を聞いて頷いた。顔はテレビに向けられたままだ。
「成程ね」
「それでいいじゃない。それでだけれど」
「お酒はいいわよ」
「サイダーにする?それじゃあ」
 今度はそれを勧めてきたのだった。
「それと柿の種だけれど」
「じゃあ柿の種頂戴」
「サイダーは?」
「そっちも」
 両方をだというのだった。
「頂戴、お酒じゃなくてね」
「はい、どうぞ」
「有り難う」
 それを受け取って実際に飲む。それでまた言うのだった。
「今度はね」
「今度はって?」
「絶対に負けないから」 
 妹に対して言うのであった。
「文化祭はね」
「お姉文化祭は何するの?」
「そうね。何しようかしら」
「文化祭よね」
 星子がこのことから話した。
「それだとお化け屋敷なんかどうかしら」
「お化け屋敷?」
「そう、文化祭なら結構やるわよね」
「ええ、確かに」
「それじゃあどうなかしら、これで」
「考えさせて」
 星華は実際にサイダーを飲みながら考える顔を見せた。
「それいいかもね」
「そうでしょ。お化け屋敷ってお客さんそこそこ入るしそのうえやりがいがあるでしょ」
「色々と工夫もできるしね」
「じゃあそれでいく?」
「まだ考えさせて。けれど面白いわね」
「そうでしょ。それじゃあね」
「ええ、話もしてみるわ」
 こう話してだった。そのうえで文化祭にその考えを移していく星華だった。彼女の心は運動会から離れようとしていた。しかしわだかまりは残っていたのであった。


第十八話   完


                 2010・8・24
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧