ねここい
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第3話
前書き
ねこねこ55です。
早速知り合った蔵原に言われ、同じクラスの可愛い娘へと視線を向ける。
「……!!??」
だがしかし、俺の目に映ったのは…………………猫!
自分で言ってて何言ってるか解らん!
つまりアレだ……大きい猫がうちの女子の制服を着て歩いてる。
これでもなお、言ってる意味が解らん。
「いいね。この学校の制服はスカートが短いから良い!」
猫の種類に詳しくないが、多分シャム猫の巨大版が短いスカートのうちの制服を着て歩いてる。あ、今席に座った。
俺は余りの光景に目が離せない……
猫は可愛い。うん、それは認める。
だが……巨大な猫(しかも二足歩行)は怖い!
恐怖とか疑問とか色々な感情で硬直していると、俺の視界に巨大な白い毛玉が映り込んできた。
何かと思いそちらに目を向けると……猫!!
あれはペルシャ猫か!? これまた巨大で二足歩行の白いフワフワした毛並みの猫が、優雅な動作で席に着く。
「ほぅ……お前も気になったか? これまた美女だよなぁ。ハーフかな? 金髪が美しいぜ」
はぁ!? ハーフって何だ? 猫と人間のか?
金髪!? 俺には白い毛玉にしか見えんぞ!
「あ、その娘も可愛い!」
混乱の極みで蔵原の言葉が耳に入ってきた……
言葉に従い俺は視線を自分の席の左前に移す。
!!!!!!!
こ、こんな近くにも巨大猫!
先程の蔵原の言葉が聞こえたのか、俺の後ろの席をギロリと睨んで正面を向き席に着く。
因みにこの種類は俺にも解る。
巨大なアメリカンショートヘアーだ。
ただ怖い。こんなに近くに居られると、なお怖い。
蔵原は怖くないのだろうか?
先刻から『可愛い』『美人』など、褒めているが猫好きから見たら可愛く見えるのだろうか?
俺は3匹の巨大猫を何度も見ながら、その恐怖に堪え忍ぶ。
「はーい、新1年2組の皆さん席についてー」
「きたーーー! 高校生活開始において、美人教師登場は最高の船出!」
美人教師? そ、そうか……担任が来たのか。
兎も角落ち着こう……
巨大猫に脅えてるのは俺だけの様だし、ここで騒いでしまってはクラス中から変な目で見られてしまう。高校生活開始直後から変人扱いは避けねば……
(ガタン!!)
平静を取り戻そうと心で誓い、身体を教壇の方へ向け視線を上げると……
そこにも巨大猫!!!!
今度は三毛猫!
だが制服は着てない。白いブラウスにモスグリーンのカーディガン。濃紺のタイトスカートに身を包んだ巨大で二足歩行の三毛猫が、教壇に立ちこちらを見ている。
「如何しました? 私は席についてと言いましたよ。何故わざわざ立ち上がるんですか?」
そう、俺は混乱醒めやらぬ中に現れた巨大猫に驚き立ち上がっていた。
教壇の巨大猫は俺を噛み殺しそうな顔で睨む。こ、怖い……
「す、すいませんでした……」
「おいおい、担任が美人だからって反応しすぎだぞ(笑)」
俺は恐怖の余り即座に謝り座った……だが後ろの蔵原は俺の態度を勘違いして茶化す。クラス中からは笑い声が……教壇の巨大猫は多分笑っている。それも怖い。
何なんだこれは!?
俺以外の奴には巨大猫が見えてない様だ。
如何いう事だそれは?
はっ……
そ、そう言えば……昨日あの化け=猫が言ってた。
『お前と生涯の伴侶になる可能性の高い女は、皆ネコに見える様にしてやったニャ!』って。
え? つまり如何いう事?
この巨大猫4匹が、俺の生涯の伴侶?
この巨大猫を口説かないと、俺には彼女が出来ないって事!?
無理無理無理!!!
だって巨大で二足歩行の猫なんて怖いもん!
口説く前に話し掛けられない!
「はい。じゃぁ皆に自己紹介をしてもらおうかな」
俺が混乱を増してる間に、新生活の諸々な事柄を話し終えたらしく、教壇の巨大三毛猫がクラス全体を見渡しながら自己紹介タイムへと移った。
「それでは出席番号1番……からと思ったけど、座れって言った途端立ち上がった、自己アピール旺盛な君から始めてもらいましょう。その場で良いから立って、全員に顔を見せてから自己紹介して下さい」
え? そ、それって……
「おい、お前だよ、大神」
突然の無茶振りに戸惑っていると、蔵原が俺の背中を突きながら自己紹介開始を促す。
そ、そんな……何で俺が……
そう思いながらも逆らえない俺は立ち上がり、巨大三毛猫の指示通りに教室内を見渡して自己紹介を始める。き、緊張しかしない!
「は、初めまして……大神音彦と申します」
取り敢えず名前だけは言った。
如何する……後は何も思い浮かばないぞ。 これだけで座っちまうか?
「それだけじゃ寂しいわね。何か好きな物とか無いの?」
巨大三毛猫が俺を虐める!
巨大猫4匹に囲まれて恐怖に脅えてるのに、好きの物とか思い浮かぶわけねーだろ!
「あ、あの……ね、猫……」
「? 猫?」
「あ……はい、猫好きです!!」
「あら良いわね」
今思い浮かぶ“猫”と言うワードと、巨大三毛猫が言った好きな物と言うワードを組み合わせて、大して詳しくもないのに猫好き設定を作ってしまった。
色々猫の事を聞かれたら『知識は無いけど、猫は好きなの!』と言うしか無い。
兎も角言い終えた俺は、他に何か追加される前に素早く座った。
トップバッターが自己紹介を終えたと思った巨大三毛猫は、俺から視線を出席番号1番に移して自己紹介を続ける様に促す。
出席番号1番は“青木 茂”と言う名前だ。
名前を言い終えた後、『俺は犬派です。家でもセントバーナードを飼ってます』と付け加え席に着く。如何やら好きな動物を言う事が確定してしまったらしい。
出席番号2番は“海野 葵”でウサギ好きらしい。
出席番号3番……即ち俺の目の前の席の奴は“江田 洋司”と言い金魚を飼ってるとか……
また俺が自己紹介するのかと思ったが、巨大三毛猫は「じゃぁ出席番号5番の君、宜しくね」と俺を飛ばして蔵原を見る。当然か……
「うぃっす! 俺の名前は蔵原竜太。動物は全般的に好きですけど、一番好きなのは美少女です! このクラスでラッキーと心底思っております! ってなワケで、女子の皆さん末永く宜しくお願い致します! あ、男子は別に宜しくしないで良いよ」
何つーふざけた自己紹介だ。
そんなに美男子でもないのに……いや、俺とそれ程変わらない容姿のくせに、俺なんかより女慣れしてそうだ。軽蔑したいが正直羨ましいよ。
そんな事を考えていると、遂に1匹目の巨大猫の自己紹介に突入する。
俺の左前に座るアメリカンショートヘアー……
順番が来てスッと立ち上がり、周囲に顔が見える様に身体ごと見渡すと、最後に俺の方を見てニコッと笑う。な、何故笑った!? 怖いよー。
「初めまして、私は佐藤 愛香音です。私も猫が大好き! 大嫌いなのは女誑しです。蔵原みたいな奴ですね。どうぞ宜しくお願いします」
ね、猫好きだから俺に笑いかけたのか? ヤバイよ……本当は別に猫好きじゃないし。バレたら殺される?
自分の失敗にガクガクブルブル震えてると、次の巨大猫が自己紹介に入った。
そう……白い毛玉の様な巨大ペルシャ猫。
蔵原は『ハーフか?』と言ってたが、そんなに外人っぽいのかな? 毛玉なんだけど……俺には。
「どうも初めまして。私の名は白鳥 エレナです。この金髪は地毛で、見ての通りハーフですわ。父は日本人ですが、母がロシアの生まれですの。私も猫が大好きで、自宅でも猫を数匹飼っておりますわ」
長い毛足をブワっと掻き上げ、何とも言えない気品を撒き散らし着席する白毛玉。
やはり猫好きと言う事で、最後に俺の方を見るや笑いかけてきた……怖いのは変わりない。
だが巨大猫に笑いかけられたのは既に2度目なので、何だか慣れてきた気がする。自分の順応力に吃驚だ。
「はい、じゃぁ最後ね。窓際席一番後ろの君。自己紹介をお願いします」
気が付けば1年2組最後の一人に順番が回ってきてた。
そう……3匹目の巨大猫。シャム猫の自己紹介だ。
「は、初めまして……私は渡辺 愛美です。趣味はお菓子作りで、私も猫が大好きです! 家では1匹飼ってます! どうぞ宜しくお願い致します」
3度目。巨大猫に笑いかけられるのは3度目だ! 軽く会釈をするくらいの心の余裕は生まれてきた。
「さあ、皆自己紹介が終わったわね。じゃぁ担任の私の自己紹介をします」
4匹目の巨大猫である巨大三毛猫が教壇から自分の自己紹介をすると宣言。
目を付けられたくないし、大人しく聞いていよう。
「私は小林 夕子。このクラスの担任で受け持ち教科は古典です。因みに先生も猫好きです。今はマンションで一人暮らしをしてるから飼えないけど、実家には1匹猫が居ます」
きっと三毛猫に違いない。
「夕子センセー。スリーサイズを教えてくださ~い♡」
健全な男子高校生なら誰もが気になる女性(特に担任)のスリーサイズ。
だがエロい奴と思われたくない為、普通なら大声で質問はしないのだが……普通じゃない男が俺の後ろの席に居た。
「君からはその質問が来ると思ってましたよ蔵原君。ですが教えません! 普通に考えたら言うわけないでしょ」
うん。普通で考えたら質問すらしないよね。
でも普通じゃ無いんだと思うよ、俺の後ろの奴は。
「じゃぁ良いで~す。自分で計測しま~す♡」
そう言うと絵を描く人が両手の親指と人差し指をL字にしてくっつけ長方形の窓を作り出し覗き込む仕草と同じ事をして巨大三毛猫を舐める様に見る。そして……
「うん。上から85・55・88だ! 如何ですかな?」
「な、な、な、何で判るの!?」
え、大正解!?
巨大三毛猫は服の上から腕で身体を隠す様な仕草をすると、とんでもなく動揺してる。
平然としてれば正解か如何か判らなかったのに……
にしても凄ーなぁ、蔵原。
後書き
85・55・88は偶然です。
関連はありません。
狙いましたけどね。
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