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ねここい

作者:あちゃ
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第1話

 
前書き
さぁ始まりました『ねここい』
主人公 大神 音彦 に降りかかる困難な恋愛模様をお楽しみ下さい。
と言ってもまだ1話目じゃそれほど困難じゃないですけどね。

因みに、主人公の姉は奴です。 

 
「如何か高校生活という新生活で、彼女が出来ます様に!!」
俺の名前は“大神 音彦(おおかみ おとひこ)”
明日からピカピカの高校一年生だ。

そんな俺は新生活に向け、自室の窓から見えた夜空に輝く名も知らない星に祈りを捧げる。
何故なら彼女居ない歴=年齢という悲しい人生を送っているからだ。
何故彼女が居ないかというと、パッとしない容姿に加え、パッとしない以下の頭脳と、パッとしないどころの騒ぎじゃない運動神経だからだ。

口の悪い姉からは『現代の“のび太君”』と言われている。
だが新たな生活の始まり……
高校生という多感な年頃には絶対に必要不可欠な彼女を神頼みで得ようと祈りを捧げたのだ!

そんな事を考えつつも、一心不乱に祈り続けていると、祈っている星の方から何やら物体が近付いてきた。
良~く目を凝らして見ていると、その物体は段々近付いてきて、最後には……

「フライング・クロスチョ~ップ!」
と悪質タックル以上の悪質なタックルをかましてきた。
「ぐはぁ~!!」

「にゃはははは、どうだ参ったか凡人」
「げほっげほっ……」
飛んできた物体のクロスチョップが喉に決まり、喋れないで居ると勝ち誇った様に物体が俺の目の前で勝ち誇る。

(バン!)「うるせぇ! 何騒いでんだ馬鹿弟!」
苦しさの余り悶え苦しんでいると、隣の部屋の姉が怒り心頭で怒鳴り込んできた。
「お、おま……何で女連れ込んでんだ?」

女?
苦しいながらも姉の言葉に釣られ、悪質タックルしてきた物体に再度目をやる。
……確かに女だ。

「ちょっと~……何を騒いでるの麻里!?」
「違うわよ母さん。音彦が女連れ込んでイチャイチャしてるの」
如何したらそう見えるんだ? 喉元を押さえて苦しんでるだろ、俺は!

「イチャイチャなんてしてないニャ! 適当な事ぬかすと貴様も呪うぞブス!」
(ゴスン!)「言葉遣いに気を付けろコスプレ女! 生まれてきた事後悔させるぞコラ!」俺の姉は凶暴だ。悪質タックル物体の言う様にブスのくせに性格も悪く、凶暴なのだ。

「あらあら本当。お客さんが来てるなら言ってくれれば良いのに……」
事態に興味を持った母が、飲み物を持って俺の部屋へ入ってきた。
そして苦しんでる俺の前と、後頭部に姉のゲンコツを喰らい蹲ってる物体の前にジュースを置き、気を利かせた風に姉と共に去って行く。

何とかダメージから回復した俺は、同じ様にダメージから回復した悪質タックル物体と対面で座り、母が持ってきてくれたジュースを一口飲む。
うん。取り敢えず一旦落ち着いて、コイツが何なのか観察しよう。

先程姉が言っていたが、全く以てコスプレ女……それが悪質タックル物体だ。
服装は黒をベースにしたシャツとホットパンツ。
ただ上下とも袖口をワザと破いたかの様な感じにしており、随所にシルバーアクセサリーを鏤めた“パンクロック”か“デスメタル”ファンみたいな服装。

たけど特筆すべきはそこじゃない。
ヘアバンドっぽい部分が見えないけど猫耳みたいな物を頭に付け、ハリウッドの特殊メイクさながらの猫の鼻付近とヒゲを顔に付け、手には肉球と出し入れ自在な猫爪の付いたグローブ、足もグローブと同じ様なブーツ、そしてホットパンツの後ろからは黒く長い尻尾……

驚くのは、耳も尻尾も動いてる事だ。
今のテクノロジーは凄いなぁ……
まるで本物の様だ。

「所で……お前……何?」
観察が終わった所で、このコスプレ女の正体をズバリ聞いてみた。
すると返ってきた答えは俺の想像の斜め上を遙かに超えていた。

「アチシは悪魔ニャ」
「……はぁ~、悪魔っすか」
ヤバイ女に絡まれた。

「正確には悪魔見習いだけどニャ」
「はぁ……見習いっすか、大変ですね」
地位的なランクは下がったが、リアルに近づけてくる辺りヤバさは格段に上がった。

「で、その悪魔さんが俺に何のようですか?」
早く用件を聞いてコイツを追い出したい。
「お前先刻(さっき)、私利私欲丸出しの願いをしてただろ」
俺の願いを叶える為に悪質な訪問をしてきたのか? こんな女はお断りなのだが……

「聞こえてましたか……忘れて貰っても良いですよ」
「にゃはははは、もう手遅れニャ」
え~……こんな女は嫌だぁ。

「お前が先刻(さっき)祈ってた星……あれは星じゃにゃいニャ。あれは91年に一度、愛の女神“アフロディーテ”が下界を覗く為に時空に開けた覗き穴ニャ」
「はぁ……」
91年って、随分中途半端だなぁ。

「んで、丁度目の合ったお前の願いを少しだけ叶える為に、何か女神パワー的な物をお前に送ったニャ」
「え! じゃ、じゃぁ俺にも彼女が出来るって事?」

「甘えるんじゃにゃい! 女神パワー的な物でいきなりモテモテになって彼女が出来ると思ったら大間違いニャ」
「じゃぁその女神パワーにはどんな効能があるんだよ!」

「うむ。仕組みは解らんが、お前と生涯添い遂げる可能性の高い女を見分ける事が出来るらしい」
「はぁ~? イマイチよく解らないんだけど!」

「だから……知り合って、友好度を上げて、告白して恋人同士になって、友好度を上げて、プロポーズして夫婦になって、幸せな家庭を築きつつ友好度を上げて、別れる事なく一生を添い遂げられそうな可能性の高い女を見分けられるらしいニャ」
「はぁ! 俺の思っていた御利益と違うんだけど!」

「そうは言うが、この状態も凄い事だと思うニャ。だって考えてみぃ……例えば100人の女と知り合うとして、その誰が生涯の伴侶になるかなんて普通は解らないニャ。どんなに女との仲を進展させようと頑張っても、相手にお前を好きになる可能性がな無かったら無駄な努力で終わるニャ。何せ人の趣味は千差万別。デブで醜男とイチャイチャ腕を組み町を闊歩する美女の姿を見た事あるじゃろ? そのまた逆もあるだろうし、容姿性格云々より財力って女も少なくない。そんな中、『お前で良い』って思ってくれる可能性の高い女が事前に判るって凄い事だと思わんかニャ?」

「……確かに。随所にトゲのある言い方が気になったが、言われてみればその通りだ。可能性が高い事が判っていれば、その女性に集中して友好度を上げる事が出来る」
可能性がある事が判っていれば、女性に声をかける事が苦手な俺でも、頑張れる……気がする……多分。

「そうじゃろう、そうじゃろう」
「んで、それが愛の女神様の御利益だとして、正反対の存在のお前の目的は何だ?」
愛の女神のパワーを勝ち誇った様に語ってるが、コイツは何をするんだ?

「それニャ! アチシは実は、アフロディーテが大嫌いにゃのだ! だからお前にパワーを送った瞬間、アチシの呪いパワーを奴のパワーに盛り込ませたのニャ」
「はぁ~? あんなに勝ち誇って女神の事を語ってたのに、今更嫌いとかあり得なくない?」

「うっさいニャ! 兎も角アチシの呪いで、お前と生涯の伴侶になる可能性の高い女を見分ける部分に歪みを作ったニャ!」
「ゆ、歪み!?」

「そうニャ。お前と生涯の伴侶になる可能性の高い女は、皆ネコに見える様にしてやったニャ!」
「え、あの……ちょっと……意味が解らないんですけど?」

「フフン。明日になって色んな女に出会ってみれば嫌でも解るニャ」
そう言うと悪魔見習いネココスプレ女はフライング・クロスチョップで入ってきた窓に向かい踵を返す。

「あ、アチシの名前は“ベル=ノーラ”。お前はベル=ノーラ様と呼ぶニャ」
そう今更ながらの自己紹介をして窓から飛び降り、何処かへと行ってしまった。
うん。(ベル)(ノーラ)……化け()()と俺は呼ぶ事にしよう。

イカレた化け()()の戯言を本気で信じる程イカレてない俺は、明日の入学式に遅れない様、早めにベッドベ潜り込む。
女神パワーはちょっと期待しちゃうが、化け()()パワーなど存在しないし、世のテンプレを期待して、登校までの途次は曲がり角でのテンプレ出逢いに期待しよう。

曲がり角や交差点はちょっと早足でトライだ。



 
 

 
後書き
見切り発車甚だしく始めてしまったぁ~~~!!
体調も改善されてるし、まぁ良いか。

因みに第2話には、皆さん大好きな奴が登場。 
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