空に星が輝く様に
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227部分:第十六話 深まっていく疑惑その十三
第十六話 深まっていく疑惑その十三
「じゃあまさか」
「付き合ってる!?」
「うちの学校の生徒と」
陽太郎についてそう疑念を感じたのだ。
「これってまずいよね」
「まずいわよ」
「まずくない筈ないじゃない」
三人は深刻な顔になって言い合った。
「これって。星華ちゃんにも言わないとね」
「言わないとまずいでしょ」
「隠してもこういうことってばれるし」
「そうよね」
「ばれるからね」
こうしたことはよくわかっていた。実際にこうしたことは自然と関係者の目や耳に入る。そうなれば、ということなのである。
「だから。今のうちに話して」
「傷を最低限にしとかないと」
「星華ちゃんショック受けるし」
「それじゃあね」
「決まりね」
「そうよね」
三人で頷き合ってだ。そうしてだ。
「相手、確かめよう」
「うん、そうしよう」
「誰か」
陽太郎の隣にいるのが誰かだ。確かめようとした。
そのうえで席を立つ。直前にテーブルの上のドリンクやスイーツを全て腹の中に入れる。そのうえでカウンターに向かう。
そこに向かうとだ。ここでだ。
「あれっ、いない」
「お店の人は?」
「何処?」
「あっ、はい」
ここでだ三人より少し歳が上と思われるウェイトレスが来た。慌てた様子でカウンターに来てだ。そして対するのだった。
「お勘定ですね」
「はい、そうですけれど」
「御願いしますね」
「わかりました。それじゃあ」
「あの、けれど」
しかしだ。ここで野上がそのウェイトレスに話した。
「その前にですね」
「その前に?」
「手、拭かないと駄目なんじゃ」
こう言うのだった。見ればだ。
ウェイトレスのその手は濡れていた。しかも泡だらけだ。どうしてそうなっているのかはもう言うまでもなかった。それだけでわかることだった。
「食器洗ってたんですか?」
「ちょっとさっきまで」
「お店今人がいない?」
「まさか」
橋口と州脇はこのことに思い至った。
「そういえば今日ウェイトレスさん少ないとね」
「ウェイターさんもね」
「いつもよりも」
「ちょっと新規開店のお店に応援に行っていまして」
そのカウンターのウェイトレスがその事情を話してきた。
「それでなんです」
「それでなんですか」
「今人がいないんですか」
「それで」
「すいません、それじゃあすぐに戻りますから」
ウェイトレスは一旦お店の中に戻った。その手の泡を洗い落としてそのうえで拭く為である。濡れた手でカウンターを扱うことはできない。
そしてその間だ。三人は待つことしかできなかった。
「これってまずいよね」
「まずいなんてものじゃないし」
「そうよね」
陽太郎の横にいる相手のことを考えてだ。こう言うのだった。
「こうしているうちに行っちゃうし」
「だよね、まずいよ」
「ついてないわね」
この状況は仕方なかった。そうしてだ。
ウェイトレスが戻ってきてそのうえで勘定を済ませてそれから店を後にする。しかしその時にはもう二人の姿は何処にもなかった。
「やっぱり」
「何処に行ったのかしら」
「ええと、こっち?」
橋口が夜道のうちの一つを指差した。三人共その夜道を見回す。だが見えるのは闇の中の灯りだけだった。
「こっちに行ったかな」
「そうじゃないの?」
「そっちなんじゃ」
三人は何処に二人が何処に行ったのか全くわからなかった。何一つとしてだ。
そして見回すうちにも時間が過ぎてだ。諦めるしかなくなった。
「やっぱりいないし」
「それじゃあ」
「もう仕方ない?」
州脇が言った。
「見失ったし」
「もう何処に行ったかわからないし」
「帰ろう」
こう言うしかなかった。そうしてだ。
三人は仕方なく彼女達の帰路についた。そのうえでこの日は終わった。だがこれもまただ。星華をさらに焦らせ歪ませるのだった。
第十六話 完
2010・8・3
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