ロボスの娘で行ってみよう!
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第69話 新体制
第69話 新体制
帝国暦485年12月31日
■オーディン 軍務省
第6次イゼルローン要塞攻防戦より帰投した、メルカッツ大将は皇帝フリードリヒ4世より直々に宇宙艦隊司令長官への就任と上級大将への昇進を告げられた。メルカッツにしてみれば、ゼークトの手綱を締め切れず、只でさえ貴重な戦力であるイゼルローン要塞駐留艦隊を失うはめになった事で、功よりも罪が大きい物と感じては居たが、フリードリヒ4世の命である以上断るわけにも行かずに居たのである。
「メルカッツよ、今回は良くやってくれた」
「陛下、みすみす要らぬ犠牲を増やした事をお詫び申し上げます」
「ふむ、気のする事はない、そちにゼークトを押さえるだけの階級を与えなかった予の責任じゃ」
「滅相もございません、全ては臣の不徳の致すところ」
「そうか、ではメルカッツよ、そちを正式に宇宙艦隊司令長官に任じ、上級大将に処す。軍の立て直しをする事こそ、贖罪と思うて確と勤めよ」
「御意」
益々頭を垂れるメルカッツ、その姿を見ながら皇帝は呟いていく。
「今回の戦いで、優秀な指揮官達が出てきたようじゃな」
「御意」
「軍の再建には、貴族だ平民だと言ってはおられん、メルカッツ、そちの好きに艦隊を立て直すのじゃ。何か言う者がおってとしても、予の勅命として突き進め。良いな」
「御意」
「2階級特進を行っても構わん、減った兵力を効率よく配置せよ」
「御意」
その話が終わると、メルカッツに退室を許可し、フリードリヒ4世は去っていった。
早速メルカッツ提督は、軍務尚書エーレンベルク元帥、統帥本部長シュタイホフ元帥と軍務省で会談を持った。
「数年前までの健全な状態の帝国軍宇宙艦隊の総数は、イゼルローン要塞駐留艦隊を含めて正規艦隊19個23万隻、独立艦隊、地方艦隊、各地の警備隊、8万隻の合わせて31万隻だったが、この数年来の戦闘で11万隻以上を失っている」
エーレンベルク元帥の言葉にシュタイホフ元帥が応える。
「艦隊だけではなく、ミッケンベルガー元帥以下、将官の戦死も既に500名を超える勢いだ、このままでは艦隊の再編もままならんぞ」
「陛下より、若手を抜擢せよとのお言葉を頂きました」
「メルカッツ提督、やはりそれしか無い訳か」
「今の帝国軍はえり好みをしている余裕がありません」
「確かに、そうだな残存艦艇20万隻弱だが、地方艦隊や警備艦隊を削減するにしても治安の悪化を考えて最低限度にしなければならん、その為には少数の艦隊でも確実に戦果を上げられる将帥に艦隊を任せるしか無いわけだな」
「減らすとして、独立艦隊を解体し正規艦隊に編入し哨戒任務を正規艦隊に肩代わりさせれば、正規艦隊の訓練もできて一石二鳥と言えよう」
「司令長官は、何個艦隊を再編成するお気持ちかな?」
「小官の考えでは、19個艦隊全てを復活させたいと思う」
「長官!」
「いや、艦隊の内半数は半個艦隊編成として少将に指揮を任せるつもりだ」
「なるほど、第6次イゼルローン要塞防衛戦で活躍した将帥ですな」
「戦闘報告書を読んだが、確かに少数の艦隊を任せるに相応しい将帥が揃っている」
「しかし、それならば陛下の仰った2階級特進で正規艦隊を持たした方が良いのでは?」
「無論それも考えましたが、彼等は未だ1,000隻程度の指揮しかした事がない、いきなり10倍の艦隊を指揮するには多少の経験値不足と言えましょう。それならば今回は6倍程度の艦隊の指揮を行わせた方が結果的に全て良い方に向かうのではと、それに今回は勝ち戦とはとても言えませんから、今後のためにも安易な2階級特進をすべきでないと判断した次第です」
「なるほど、確かにそうですな。判りました統帥本部も全面協力しますぞ」
「主なところではどの様に考えて居るのかな?」
シュタイホフ元帥、エーレンベルク元帥の言葉にメルカッツは応える。
「イゼルローン要塞駐留艦隊司令官には前任者のヴァルテンベルク大将を充てるしか無い状態です。正規艦隊司令官は小官とレンネンカンプ、ミューゼル、シュムーデ、フォーゲル、アーベントロートの各中将にクライスト大将、半個艦隊は、ロイエンタール、ミッターマイヤー、ビッテンフェルト、ルッツ、シュタインメッツ、ケスラー、アイゼナッハ、グロッテンベルク、ライブル、ブラウヒッチ、ホフマイスターの各少将というところでしょうか」
「なるほど、正規艦隊12,000隻が7個艦隊84,000隻、半個艦隊6,000隻が11個艦隊66,000隻。合わせて15万隻か」
「確かにそれならば、独立艦隊を解体するだけで、地方艦隊や警備艦隊の削減しないで済む」
エーレンベルク元帥、シュタイホフ元帥がメルカッツの意見に賛同し、この案は実行される事と成った。
こうして年も改まった帝国暦486年1月3日に辞令が交付され、帝国軍は長く辛い再編成への道を歩む事になったが、僅か2週間足らずで政治的な考えから、再度の出兵が決定されるのである。
宇宙暦795年1月10日
■自由惑星同盟首都星ハイネセン
第6イゼルローン要塞攻略部隊が疲れ切った姿でハイネセンに帰投した。未だ1年と経っていないヴァンフリート星域会戦の大勝利に対して今回は大敗北といって良く、出兵を支持した同盟市民も余りの損害に意気消沈と成り、安易な出兵論に反省している様に見えたが、此がいつまで続くかは懲りないところのある同盟市民のいい加減さと共に、主戦論を煽動するトリューニヒトのような屑政治屋の暗躍が始まるまでであろう。
結局殿を勤めるた第7艦隊は3割以上の損害をだし第8艦隊は6割近くを失い、第9艦隊は5割を失う大損害であった。帰投するシャトルを迎える家族達と遺族の群れが連行されるコーネフ中将に罵声を浴びせる。
「この野郎!自分だけ帰って来やがって!」
「お父さんを帰してよー!」
「死ね!!」
MPがガードしなければ、暴動が起こるほどに遺族達の怒りがふくれあがっているのである、何故ならい通常であれば、今までは最高評議会も同盟軍も敗戦を糊塗し、今回も我が軍の大勝利と嘘の報道を行っていたが、今回はシトレ元帥のアドバイスで、アンダーソン最高評議会議長、カスター国防委員長、レベロ財務委員長、ホアン人的資源委員長が出兵に反対した事と同盟軍上層部も出兵を反対した事、そして一部評議会委員と一部軍部が、市民を煽動しこの敗戦を招いたと知らせるために敢えて正確に報道したのである。
その為、良識派市民は煽動を行った憂国騎士団に迎合する危うさをヒシヒシと知る事になったのであるが、普段は戦争を賛美するトリューニヒトが、今回に関しては戦争に反対していた事で、トリューニヒトは、市民の支持を得てしまい最高評議会へ入閣に大手をかけていたのである。
トリューニヒトは排除不能であったが、リーファは転んでもただでは起きない人間なのだった。この敗戦を利用してサンフォード達のような支持率と選挙票を気にするだけの政治屋共を政権から追放する事と、軍部にいる主戦派に対し釘を刺す事を目指したのである。
コーネフ大将の収監と降格が速攻で決まり、罪状を調べるために憲兵隊による取り調べが始まっていた。アップルトン中将とホーランド大佐も調書を取られている状態で有る。又アル・サレム中将は折れた肋骨が肺に刺さり重傷で長期入院と成った。
唯一ホーウッド中将は統合作戦本部に出頭し労いを受けて居た。
「シトレ元帥、折角の作戦を完遂できず申し訳ありません」
「いや、ホーウッド中将は良くやってくれた、貴官の活躍がなければ更に被害が増えていたはずだ」
「ありがとうございます」
「暫くは戦闘もないだろうから、ゆっくり休み鋭気を養ってくれ」
「はっ」
ホーウッド中将が帰還後、ヤン、ワイドボーン、リーファがシトレの元へ呼ばれた。
「ワイドボーン准将以下入ります」
「入りたまえ」
部屋に入ると、少々疲れ気味に見えるシトレが迎えてくれた。
「やはりアッテンボロー准将の危惧した通りの結果に終わったな」
開口一発目の挨拶が此である。
「はい、コーネフ中将が彼処まで酷いとは思いませんでしたが」
「アッテンボロー、ああ言うのを阿呆と言うんだな」
「権力に酔ったと言う訳だな。彼を代行に選んだのが間違えだったな」
「しかし,あの時点ではサンフォード副議長のごり押しもありましたから、本部長だけの責任ではありませんよ」
「そうです、此を利用して一気に煽動政治屋を潰せば良いだけです」
「そう言われて、レベロと話し合って報道をしたわけだしな」
「なんだ、リーファの差し金か」
「流石アッテンボロー転んでもただでは起きないな」
「其処で、コーネフ中将には悪いですが悪役に成ってもらいます」
「もう既に悪役決定だけどな」
「其処まで叩くのかい、些か気の毒になるよ」
「そうも言っておられん、彼等は我欲で軍を動かし政府を動かし多くの損害を与えた、その報いは受けて貰わねば死んだ者達に顔向けができんよ」
シトレの決心に3人は頷く。
「軍法会議は来月辺りに開かれるだろう、それまで罪状の照査だな」
「なるほど、小官達は暫くお役にはたてそうにありませんね」
「その点については、そうだが艦隊の再編については意見が欲しい」
ワイドボーン、ヤン、リーファがシトレの言葉で考え始める。
「そうですね、新規兵力を第7艦隊、第8艦隊、第9艦隊に編入するしか有りませんが、その宛があるかですね」
「第7艦隊の残数10,000隻程、第8艦隊が4,000隻、第9艦隊が6,000隻ですか」
「その他に修理中だった艦隊が7,000隻ほどいる」
「司令部への補充1,000隻を入れて、実質的に19,000隻の不足ですね」
「新規建造をしても、19,000隻は多すぎますね」
「それだよ、私もボロディンも頭が痛い問題だ」
「そう言えば、ボロディン提督は?」
「ボロディンは今日は宇宙艦隊総司令部で残存艦のリスト分けだ、コーネフ派の総司令部要員が全員謹慎中なので、残りの司令部要員だけで動かしているからネコの手も借りたいと言っていたぞ」
「それでアッテンボローが缶詰なのか」
「済まんな、アッテンボロー准将」
「シトレ元帥、彼も納得ずくだと思いますから、気にしていません」
「アッテンボローも可哀想にな」
一通り笑いが起こりそれが済んだ後リーファが考えを纏め上げていた。
「第7艦隊に戦力を集中させましょう、第9はアル・サレム中将が重傷ですから、半個艦隊規模にしてモートン少将に指揮官をして貰うのが宜しいと思います。第8は当分予備艦隊として半個艦隊規模にすれば良いかと、アップルトン中将の問題もありますから」
「確かに、それが現状では妥当だな、ボロディンと話し合ってみよう」
帝国暦485年1月17日
■フェザーン自治領自治領主オフィス
「そうか、同盟も帝国も大損害を受けたか、此で又バランスがとれるな、宇宙を覆う戦乱こそ我がフェザーン自治領にとっての福音なのだからな」
「自治領主閣下、帝国で皇帝の在位30周年の遠征を行うとの事でございます」
「ほう、又無駄な出兵をする訳か、此で益々我らの暗躍が役立つと言う事だ」
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