オーストラリアの狼
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第一章
オーストラリアの狼
オーストラリアにいるイヌ科の生物は人間が飼っている犬達以外ではディンゴというアボリジニー達が連れてきた野犬達だけだと言われている。
しかしもう一種類だけいると言われている、その生きものはというと。
「もう絶滅したわよね」
「俗にそう言われてるよ」
メルボルンの大学で生物学を教えているヘンリー=ハワード教授は助手であり婚約者でもあるマリー=サガンに答えた。見ればヘンリーは蜂蜜色の収まりの悪い髪の毛で目は淡いブルーだ。顔は面長で背は一八五程だ。逞しい身体だが腹は少し出て来ている。
マリーは緑の目と長いブラウンの波立つ髪の毛を持っている紅の唇が目立つ美人だ、一七五の背はスタイルもよく特にズボンに覆われた長い脚が印象的だ。ヘンリーはそのキャサリンに対していうのだった。
「俗にはね」
「そう、そこからよね」
マリーもヘンリーの話をわかって応える、二人は今はヘンリーの研究室にいて二人で書やコンピューターに囲まれてコーヒーを飲みつつ話をしている。
「あるのよね」
「そう、実はね」
「絶滅していない」
「そうなるんだよ」
「フクロオオカミはね」
マリーはその生きものの名前を呼んだ。
「そう言われてもいるわね」
「実はね」
「本当かしら」
マリーはヘンリーにどうかという目を向けて言った。
「まだタスマニア島にいるのかしら」
「さて、タスマニア島にはどうかな」
ヘンリーはここでこうマリーに返した。
「果たして」
「フクロオオカミはあの島にいるでしょ」
マリーはフクロオオカミが絶滅する前の分布図を自分の脳内に出してそのうえでヘンリーに対して話した。
そうでしょ」
「分布図ではね」
「そしてタスマニア島から駆除されてね」
家畜を襲うとされてだ、このことは欧州の狼と同じである。
「絶滅したわね」
「そうなっているけれどね」
「それでもなの」
「タスマニア島ではいなくなってもね」
オーストリア大陸から見て南東にあるこの島からはだ、尚この島の原住民もいなくなってしまっている。
「どうかな」
「思わせぶりな言葉ね」
「本土ではどうかだよ」
彼等が今住んでいるオーストラリア本土ではというのだ。
「果たしてね」
「よく言われることね、まだいるかもって」
「そう、フクロオオカミが実はね」
「このオーストラリア本土にいる」
「そう言われているね」
「俗にね、けれど公式にはよ」
マリーはあえて現実を話した、現時点でのそれを。
「もう絶滅したとなっているわ」
「一九三六年でね」
「第二次世界大戦前よ、まだ我が国は白豪主義だったわ」
人種主義が強かった時代だ、オーストラリアはその中でも特にそれにこだわっていた国の一つだったのだ。
「今はアジア系もアフリカ系も多いけれどね」
「ははは、変われば変わるものだよ」
「その変わる前のことね」
フクロオオカミの絶滅が確認されたのはだ。
「かなり前よ、けれどっていうのね」
「公式もね、どうかというと」
「現時点でよね」
「学問は常に動くものだよ」
ヘンリーはマリーに学者として話した、学者である彼女に。
「現時点のことが絶対じゃないんだ」
「日本で読んだ空想科学はその時点で間違いね」
「あの本だね、今の時点の科学で全部を語ろうとすると」
アニメや漫画や特撮の設定にしてもだ。
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