卍の家紋
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第二章
「あれだけはな」
「そうですね、あと駅長今度の休暇また旅行に行かれるんですよね」
若い駅員の一人がここで彼に聞いてきた。
「そうですよね」
「ああ、今度はEUの中じゃなくてな」
「日本に行かれるんですね」
「あの国に行くのははじめてだ」
こう若い駅員に答えた。
「だから楽しみだ」
「色々と不思議な国らしいですね」
「欧州から見れば別世界らしいな」
「食べものも建物も歴史も文化も」
「何かとな」
「着物もありますしね」
「ははは、妻と二人で行くが」
成長している子供達は家で留守番だ。
「一体どんな国かこの目で見て来る」
「そうされますか」
「楽しんで来るよ、京都に大阪にあと徳島に行って来る」
「徳島?」
「何でも四国という島にある地方らしい」
彼の日本への知識はそれ程ではなく徳島についてもこれ位しか知らなかった。
「そこで阿波踊りというものを見て来る」
「そうされますか」
「どんな踊りか詳しく知らないが」
それでもと若い駅員に話した。
「色々と楽しんで来るよ」
「はい、そうされて下さいね」
若い駅員は彼に笑顔で応えた、そして休暇の時実際にだった。シュターゼンは妻のイゾルデと共に日本への旅行に赴いた。
まずは京都に大阪を巡ってその建物や食べものを見て口にして堪能した、妻は蜂蜜色の長い髪の毛とアイスブルーの瞳を持っている。年齢は夫より二つ下で顔には少し皺が出て来ている。背は一六七程で身体にはそろそろ肉が付いてきている。
その妻が大阪を出て徳島に行く船に乗っている中で同乗している夫に対して瀬戸内の海を見つつ話をしてきた。
「聞いていた以上に不思議な国ね」
「全くだよ」
夫も笑って応えた、二人共ラフな服装で瀬戸内の青い海を甲板から見ている。
「何もかもがね」
「お豆腐を食べたけれど」
イゾルデはこの食べものについて話した、京都で食べたのだ。
「白くて柔らかくて」
「淡泊でね」
「とても不思議な味だったわね」
「ドイツにはないものだね」
「そうよね、他の食べものもそうで」
「僕は噂に聞いていた金閣寺がよかったよ」
「あの金色のお寺ね」
妻も応えた。
「あれは確かに不思議な建物だったわね」
「周りのお庭といいね」
「この世にないみたいな」
「そうした建物で場所だったわね」
「清水寺も二条城もね」
「よかったよ」
「それで大阪の街も」
イゾルデは今度はこの街の話をした。
「賑やかで色々なものが一杯あって」
「面白い街だったよ」
「たこ焼きよかったわね」
「あれだね」
「蛸を食べることははじめてじゃなかったわ」
イタリアやスペインを旅行した時に食べていた、それで知っているのだ。
「けれどね」
「ああして食べるのははじめてだったね」
「そうだったわ、あと串カツも美味しかったし」
「ははは、まさかソースに二度漬けたら駄目だなんてね」
「思わなかったわね」
「全くだよ、キャベツも食べてビールも飲んだし」
「日本のビールも美味しいわ」
ビールの本場と言っていいドイツ人が味わってもだ。
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