触らない蜘蛛
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第二章
大きな水槽を用意してそこに土を入れていった、友人達はその様子を見て模糊華に尋ねた。
「何するの。一体」
「水槽に土を入れてるけれど」
「お水じゃないけれど」
「何をするの?」
「ええ、ここにね」
模糊華は怪訝な顔をしている友人達に答えた。
「蟻を入れて」
「それでなの」
「蟻を入れてなの」
「それでなの」
「そう、蟻を入れて」
そうしてというのだ。
「育てるつもりなの」
「ううん、そうするの」
「蟻の巣入れるの」
「そうするのね」
「そう、女王蟻も入れて」
蟻達にとって絶対の存在であるこの蟻もというのだ。
「そうしてね」
「水槽自体でなのね」
「育てるのね」
「そう、そうするから」
まさにとだ、こう言ってだった。
模糊華は実際に水槽の中にしっかりとだった、女王蟻を入れてそうしてだった、蟻の巣を育てていった。水槽からは巣の状況も見えた。
それを自宅で見つつだった、模糊華は遊びに来た友人達に笑顔で言った。
「観ているだけで楽しいわよね」
「そう?」
「そんなに楽しいの?」
「そうなの?」
「ええ、楽しいわ」
友人達に笑顔で応えた。
「本当にね」
「いや、何処が楽しいのか」
「全くわからないけれど」
「蟻の巣育てて」
「そんなの育てても」
「生きものが生まれて育っていくから」
模糊華はその水槽とそこにいる蟻達を観つつ友人達ににこにことして答えた。
「それを観てね」
「楽しいの」
「そうなの」
「ええ、凄くね」
実際にというのだ。
「本当に楽しいわ」
「そんなになのね」
「模糊華ちゃんには楽しいのね」
「そうなの」
「そうよ、命が生まれて育ってね」
自分も餌をやってというのだ。
「そういうのを観ていると幸せになれるわ」
「ううん、そういえば模糊華ちゃんって命粗末にしないし」
「いつも大事にしてるわね」
「どんな生きものでもね」
「殺したりはしないわね」
「解剖はしでもね」
「ちゃんと蘇生出来る状況じゃないとしないし」
こうしたことを守っていることもだ、友人達は話した。
「命を大事にしてるから」
「それでそうした生きものも好きなのね」
「蛙も蜥蜴も虫も」
「蜘蛛も」
「ええ、どの生きものにも命があるじゃない」
模糊華自身このことを話した。
「だからね」
「それでなのね」
「今も蟻を巣ごと育ててるのね」
「そうしてるのね」
「そうよ、じゃあね」
模糊華は友人達ににこりと笑ってこう語った。
「今から蟻におやつあげるわ」
「おやつ?」
「おやつあげるの」
「これね。今からあげるわ」
こう言ってキャンディ―を出した、そしてそのキャンディーをだった。
模糊華は蟻の水槽の中に入れた、蟻達はそのキャンディーに瞬く間に群がりだした。模糊華はその様子を見て優しい笑みでいた。
触らない蜘蛛 完
2018・6・27
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