レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十九話 名古屋の街その十
「江戸幕府はそのこともしっかりしていました」
「そうして江戸を治めていました」
「十万もの犠牲者が出た時もあったな」
火事でだ、火事での犠牲者としては途方もない数字だ。おそらく人類の歴史に残る規模でありロンドンやローマの大火と並んで言われる。
「明暦だったな」
「はい、あの大火ではです」
「十万もの犠牲者が出ているな」
「かつてない規模でした」
「江戸城の天守閣も焼けたな」
「まさにローマの大火に匹敵するまでのものでした」
このローマの大火では時の皇帝ネロは自身に火の粉がかかるのもものとせず陣頭指揮を執っている、彼が火を点けたというのはどうも誤りであるらしい。またネロはどうも軍事には疎くそれが為に叛乱を起こされると為す術がなかったが政治家としてはそれなりに優秀な皇帝であり部下を見る目もあった様だ。
「あの火災は。しかし」
「その火災もだな」
「防ぐことは可能です」
「そうしたことをしていってだな」
「そして区画整理も必要です」
「道をそれなりに広くすることか」
「まとまりがある様にしますと」
それでというのだ。
「かなり違います」
「火事についてもな」
「江戸もローマもロンドンもでした」
その火災が起こった街々はというのだ。
「非常にでした」
「木造の家が多くてだな」
「はい、そしてです」
そのうえでというのだ。
「道も狭く入り組んでいたので」
「少しでも火が点くとな」
「大変なことになったのです」
その大火災が起こった街々はというのだ。
「そうなっています」
「そうだったな」
「はい、街全体も整えることです」
「火事に対してはか」
「それで多くの犠牲者を出さない様にするには。特に日本は城下町ですね」
良太はこの世界でも同じである日本の街の特徴の一つを話した。
「門前町も同じですし」
「壁に囲まれていない街だな」
「はい、街が広がりやすいですが」
「それと共にな」
「囲まれた中での発展とはならないです」
「外で自由になるな」
「ですから乱れやすいです」
街、それ自体がというのだ。
「ですから非常にです」
「街を意識して政で整えないとな」
「厄介なことにもなります」
「日本の街の特徴だな」
「左様です」
まさにとだ、良太は英雄に答えた。
「そうなります」
「だから余計にだな」
「はい、火事のこともです」
「考えないとならないか」
「さもないと江戸の二の舞です」
明暦、この大火の様なことが起こるというのだ。
「そうなります」
「だからですか」
「そうです、このことも考えることになりましたね」
「そうだな、火のことからな」
店を照らすそれによってというのだ。
「思わぬことになったな」
「左様ですね」
「しかしいいことだ」
「そうですね」
こうも言った良太だった。
「また一つ政について考えることになりました」
「些細なことからな」
「はい、しかし政は大きいものであり」
「小さいものであるな」
「そうです、両方があります」
大小その二つの要素がというのだ。
ページ上へ戻る