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197部分:第十五話 抱いた疑惑その一


第十五話 抱いた疑惑その一

                第十五話  抱いた疑惑
「よかったね」
「ええ」
 二学期がはじまった。始業式が終わるとすぐだった。椎名は四組に行ってそのうえでいつも通り月美の席の側に来て彼女と話をしていた。
 その時に陽太郎とのことを一部始終聞いた。当然あのこともだ。
 それでだった。椎名は彼女がしたことを心から喜んで答えたのである。
「勇気出したけれど」
「斉宮はあれで奥手だから」
「奥手なのね」
「そう、奥手だから」
「だから積極的に?」
「女は度胸」
 椎名はここでこんなことも言った。
「だから」
「それで積極的になの」
「そう、何をするかは私がアドバイスするから」
 つまり軍師に徹するというのだった。
「それは安心して」
「有り難う、いつも」
「けれどするのはつきぴー」
 他ならぬ月美だというのだった。
「勇気を出すのは」
「そうなのね。私なのね」
「そう、つきぴー」
 また月美に対して話した。
「だからしっかりとする」
「そうよね。私がしっかりしないと」
「さもないと斉宮は一歩も動かない」
 このことも話すのだった。
「だから自分から動く」
「私から」
「斉宮も前に押すから」
「陽太郎君もなの?」
「お互いに前に出ないと駄目」
 クールな顔と口調である。しかしその内容は熱いものだった。
「恋愛とはそういうもの」
「私だけでなく陽太郎君も」
「そう、二人共前に出る」 
 椎名はまた言った。
「そうする。いい?」
「うん」
 月美は椎名のその言葉に頷いた。
「じゃあ私勇気を出すから」
「私が策を出すから」
「それで陽太郎君も」
「背中を押す。蹴っ飛ばしてでも前にやるから」
 言葉はかなり極端だった。過激ですらある。
「つきぴーもね」
「そうするわ。私頑張るから」
 そんな話を教室でしていた。だが周りには何を話しているかはあまりわからなかった。皆それぞれ話をしたり携帯をいじったりしていたからだ。しかしであった。
 教壇のところにいる橋口がだ。二人の方を見ながら仲間達に話した。
「何かさ、西堀の奴だけれど」
「どうしたの?」
「何かあったの?」
「あのいつものチビと彼氏がどうとか話してるわよ」
 こう野上と州脇に話したのである。
「何かね」
「えっ、あいつが!?」
「彼氏って!?」
「そうよ。何か積極的にとかどうとか」
 こう二人に話すのだった。
「言ってるけれど」
「そんな訳ないじゃない」
「そうよ」
 しかしであった。野上も州脇も橋口のその言葉にすぐに言い返した。
「あいつがどうして彼氏なんかできるのよ」
「あの引っ込み思案が」
「わからないわよ」
 橋口はその二人に逆に言い返した。
 
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