ヨタカとライバル
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第一章
ヨタカとライバル
ヨタカはいつも森の鹿のボスと張り合っています、とはいってもヨタカは兎にも負ける位に弱くてしかもです。
鹿のボスも暴力は好みません、それでいつも知恵比べをして張り合っているのです。
それは今もそうで将棋をしています、それで将棋に勝ったヨタカは鹿のボスに対してにんまりと笑って言いました。
「今回は私の勝ちだね」
「残念だ」
鹿のボスはヨタカに怒った顔で応えました。
「今回の将棋では負けた」
「最近私の勝ちが続いているね」
「何処がだ、昨日負けただろう」
「そうだったかい?」
「そうだ、頓智勝負でな」
それでというのです。
「御前はわしに負けているぞ」
「くそっ、言われて思い出したぞ」
ヨタカも鹿のボスに怒った顔で応えました。
「実に腹立たしい」
「勝ちが続いているのは間違いだったな」
「そのことは認めるしかないな」
「ついでに言うと今日の負けはだ」
将棋のそれはというのです。
「また返す」
「くっ、そう言うのか」
「何度でも言うぞ、やられたらやり返す」
鹿のボスはヨタカを見据えて言いました。
「それがわしのやり方だからな」
「じゃあその仕返しを跳ね返してだ」
ヨタカもヨタカで返します、見れば彼等の周りには森の生きものの皆がいて攻防を面白そうに見守っています。
「また勝ってやる」
「いや、勝つのはわしだ」
「私だ」
お互いに譲らないです、森の皆はそんな二人を見てやれやれといったお顔になっています。それで森の皆も言うのでした。
「お互いに相変わらずだね」
「全くだよ」
「ヨタカさんも鹿のボスも引かないよ」
「それであれこれと知恵比べして」
「毎日毎日そうしてるんだから」
「こいつには負けたくないんだ」
ヨタカは森の皆にこう答えました。
「だからなんだよ」
「いつも勝負を受けて立つ」
「そうするんだね」
「そうだよ、今度勝つのは私だよ」
「いいや、わしだ」
鹿のボスも毅然として返します。
「この雪辱を返してやる」
「鹿のボスもこう言うしね」
「一歩も引かないで」
「それで戦ってるから」
「来る日も来る日も」
「飽きることなくね」
森の皆もやれやれといった感じです、ですが皆の両者を見る目は暖かいものです。現にヨタカも鹿のボスも森の人気者です。
そんな中です、鹿のボスは風邪をひいてしまいました。それで森の暖かい場所で蹲って言うのでした。
「ここは少しな」
「休まれますか」
「そうされますか」
「そうする」
自分が率いている森の鹿達に言うのでした。
「そしてだ」
「ゆっくりと休んで」
「そうしてですね」
「風邪を治されますね」
「そうされますね」
「そうする、そしてだ」
そのうえでというのです。
「早く回復させてだ」
「またヨタカさんと知恵比べですね」
「その勝負をされますね」
「そうする、あいつに万全の調子で挑んでだ」
鹿のボスは風邪で体調が悪いです、咳も鼻水も止まらないですし熱があって食欲もありません。ですが。
ヨタカとの知恵比べに勝つ為に今は風邪を治そうとしています、このことは忽ちのうちに森の皆も知りました。
その中にはヨタカもいました、それで鹿のボスのお話を聞いて言いました。
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