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真田十勇士

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巻ノ百四十一 槍が折れその十三

「よいな」
「はい、それでは」
「このまま突き進みましょう」
「この手が動く限り」
「そうしていきましょうぞ」
 家臣達も兵達も頷いてだった、法螺貝の音と共に攻めるのだった。
 大坂方の軍勢は攻め続ける、その状況は攻められる幕府の軍勢にとっては恐ろしいものだった。だが。
 その彼等を見てだ、政宗はいよいよという声で言った。
「そろそろ頃合いじゃ」
「敵の攻めが終わる」
「その頃合いですか」
「そろそろ」
「そうだというのですな」
「そうじゃ、そろそろじゃ」
 まさにとだ、政宗は己の家臣達に答えた。
「敵の動きが止まる」
「攻め続けていますが」
「その勢いが止まりますか」
「いよいよ」
「そうなりますか」
「そうじゃ、そしてそこでじゃ」
 政宗はさらに言った。
「わかるな」
「そこでですな」
「我等が攻める」
「そうするのですな」
「そういうことじゃ、鉄砲騎馬隊にじゃ」
 さらにだった。
「普通の騎馬隊、鉄砲隊に弓矢隊にじゃ」
「槍隊もですな」
「全ての兵達がですな」
「攻めてじゃ」
 そうしてというのだ。
「劣勢を覆すぞ、そしてな」
「勝ちますな」
「今日の戦も」
「そうしますな」
「そしてじゃ」
 さらにだった。
「明日もじゃ」
「明日ですな」
「明日はいよいよですな」
「この戦を終わらせる」
「そうした戦になりますな」
「うむ、あの城もじゃ」
 政宗は大坂城の天守閣を見た、彼にとっても馴染みのある城である。その馴染みのある見事な天守閣を見ての言葉だ。
「明日でお別れじゃ」
「そうなりますか」
「明日になれば」
「落城ですか」
「いよいよ」
「そうなる、こうなったのも茶々殿の多くの勝手故じゃ」
 政宗もわかっていた、このことは。
「そしてそれ故にじゃ」
「あの城が陥ちますか」
「遂に」
「そうなりますか」
「見事な城であるがな」
 そうなるとだ、こう言ってだった。
 政宗は反撃の用意をさせた、大坂方の攻めがいよいよ終わると見てだ。そのうえで彼は今度は自分達が攻める用意をさせていた。


巻ノ百四十一   完


                2018・2・1 
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