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空に星が輝く様に

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180部分:第十三話 家へその十四


第十三話 家へその十四

「本当にさ」
「そうよね、大阪はね」
「賑やかだよ」
 彼はまた言った。
「本当に。ただ」
「ただ?」
「食べ物は美味しいよな」
 ここでは笑顔になっていた。
「お店も色々と多いしさ」
「夫婦善哉もそこにあるのよ」
「成程、そうなんだ」
「そう聞いたわ」
「星華は行ったことないんだ」
「そのお店にはね」
「他のお店は?」
「結構」
 あるというのだった。
「もう色々なお店に」
「難波辺り本当に多いよな」
「昔はすっぽんのお店もあったらしいわね」
「ああ、千日堂」
 この店の名前も出て来た。
「もうないんだよな、あそこも」
「そうよね。私達が小さい頃になくなったそうね」
「すっぽん結構好きなんだけれどな」
 陽太郎はこんなことも言った。
「あれで結構」
「すっぽん好きなの」
「鶏肉みたいな味がしてさ」
 星華にすっぽんのことをそのまま話す。
「ゼラチンもあって美味いんだよ」
「鶏肉みたいな味なの」
「ああ、案外食べやすいんだ、あれで」
 こう話すのだった。
「本当にな」
「ふうん、そうなんだ」
「佐藤は食べたことないのか」
「ちょっとね」
 星華は苦笑いを浮かべて答えた。
「あれって高いし」
「まあそうだけれどな」
 すっぽんは御馳走である。だからそうは食べられない。陽太郎にしろ食べられたのは縁であったりする。それで食べたのである。
「すっぽんはな」
「けれど美味しいのね」
「ああ、美味いことは美味いよ」
 それは保障するのだった。
「それは間違いないからさ」
「機会があればね」
「そのうちその機会は来るさ。それでさ」
「ええ、それで?」
「試合どうなったんだよ」
 その練習試合のことを尋ねるのだった。
「試合さ、それで」
「勝ったわ」
 星華は陽太郎の問いに対してにこりと笑って返した。
「それはね」
「そうか、勝ったんだな」
「ちゃんとね。試合にも出られたし」
「あっ、よかったな」
「少しだけれど出させてもらったのよ」
「出られてよかったじゃないか」
 陽太郎はそのことを喜んだのだった。半分我がことのようにだ。
「試合にさ」
「やっぱり試合っていいわよね」
 星華もそのことは素直に喜んでいた。
「雰囲気が違うわ」
「練習とはまた違ってだよな」
「そういうこと。やっぱりいいわ」
 また言う星華だった。
「先生も勝って喜んでたし」
「だよな。やっぱり勝てたらいいよな」
「それ以上に私達が奇麗に試合したことがいいって言ってたわ」
「奇麗なって?」
「中にはわざと反則する人間とかいるじゃない」
 世の中残念だがそうした人間もいる。スポーツをしながらもスポーツマンシップということを理解していない者も世の中にはいるのだ。
「そういうことがなかったからって言ってたわ」
「それって勝ち負け以前だしな」
「先生って結果として試合に負けても怒らないのよ」 
 そうだというのだ。だが教師の中には一回戦で負けたからといって生徒全員に丸坊主を強制して自分はしないという輩もいる。自分もしなければならないのは強要する、しかも指導する立場として当然のことであるがそれをしないのだ。こうした教師どころか人間としても失格の輩が大手を振って『聖職者』として世間に顔向けできるのが日本という国である。こんな怪奇現象が起こるのは我が国だけだ。
 
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