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残る二つの力

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第三章

「二人で共に修行をするのだ」
「そうすればですか」
「残り二つの力も使える様になる」
「では覚醒に至るものは」
「そなたの妹が持っている、そなた達は生まれる時に分けられていたのだ」
 稲荷は妹にこのことを話した。
「九つの力をな」
「そうだったのですか」
「そなたは七つ、妹は二つ」
「それぞれ分けられていたのですか」
「当主になる運命だったそなたには多く与えられていた」
 九つの力のうち七つをというのだ。
「そして当主であるそなたを助けるべき妹はな」
「二つですか」
「与えられていたのだ、そしてそなた達が巡り合いだ」
「共に修行した時にですか」
「そなたは二つの力が覚醒し」
「まさか妹も」
「左様、そなた達には一つの運命が待ち構えている」
 稲荷は七草に告げた。
「共に九つの秘伝を使いこの国を脅かす魔を倒さねばならない」
「その魔は」
「大蛇だ」
 これだというのだ。
「これだけ言えばわかるな」
「あの八岐大蛇ですか」
「再び世に出ようとしている、そなた達は姉妹二人で大蛇に向かい」
「倒さねばならないのですか」
「それがそなた達の運命だ、だからだ」
「妹を探し出しそして」
「二人で九つの秘伝を使いだ」
 そうしてというのだ。
「倒すのだ、いいな」
「わかりました」
 七草は稲荷に確かな声で答えた。
「ではこれより魔物達を倒し修行すると共に」
「妹を探し出すのだ、いいな」
「わかりました」
「大蛇のことは任せた」
 稲荷は七草にこうも告げた。
「私は他の神々と共にこの国と民、帝をお護りする」
「わかりました、それでは」
「行くのだ、そなた達の運命に向かいにな」
 稲荷は七億さにこうも言った、そしてだった。
 七草を送り出した、七草は連れて来ていた家臣の者達に会うとこう言った。
「私のすべきことがわかった」
「残り二つの秘伝のことが」
「そのことがですね」
「わかった、だからだ」
 それでと言うのだった。
「前に進んでいく、詳しいことは屋敷に戻ってから話す」
「わかりました、それでは」
「屋敷に戻りましょう」
「そうするとしよう、運命に向かう為にな」
 こう言ってだった、七草は前に足を踏み出した。その顔は晴れやかなものになっていて前を見据えていた。それは運命に向かい勝つ者の顔だった。
 大尾七草が妹と再会し二人でそれぞれ九つの秘伝を使い八岐大蛇を倒した話は大尾家の長い歴史においても特に強く伝えられていることだ。これは七草がそれに至るはじまりの話である。七草が運命と出会ったその時の話である。大尾家最強の当主大尾七草の物語はまさにこの時にはじまったのである。


残る二つの力   完


                  2018・6・20 
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