FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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白幻影竜
前書き
ここからもしかしたら投稿ペースが上がるかも?
尻流「え?なんで?」
原作を見なくても進められるからだよ!!ドヤッ
尻流「あ、なるほど」
「グレイ!!どうしたと言うのだ!!」
明らかに様子がおかしいグレイにリオンが怒号を上げる。だが、その声は肝心の弟弟子には届いていない。
「あんた!!グレイに何したの!?」
「悪魔を滅する魔法を使う者は正常ではいられなくなる。私はそのほんの少しの心の隙を突いただけ」
息絶えているナツを支えながらヨザイネに問いかけるルーシィ。それに対してヨザイネは冷静に回答した。
「グレイ!!落ち着いて!!目を覚ますのよ!!」
「グレイ!!」
メルディとハッピーが懸命に呼び掛けるが彼はそれに反応を示さない。それどころか青年は氷の弓を作り出すと、仲間であるはずの彼女たちに打ち出した。
「アイスメイク・・・スノードラゴン!!」
あわやメルディを捉えようとした破弓を氷のドラゴンを作り出し受け止めたリオン。だが、不意を突かれたことで大量に出血している彼に取って今の魔法すら体に響く。
「ゴホッ・・・ゴホッ・・・」
「リオン!!大丈夫!?」
咳き込む口からは赤いものが飛び出す。メルディはそんな彼を心配して駆け寄り、肩に手を乗せようとした。
バシッ
だが、青年はそれを振り払った。
「ここから離れろ」
「え?」
いきなり手を払われたメルディは困惑していた。血だまりを作った彼はそこを凍らせ止血すると、豹変した弟弟子の前に立つ。
「こいつは俺が止める」
「何言ってるの!!そんな傷で!!」
完全に通常のそれとは違う目をしているグレイに痛手を負いながら挑むと言うリオン。誰から見てもそれは無謀であることはわかっていた。
「俺は・・・お前の兄を見て感動した」
「え?」
リオンの脳裏にはある人物の行動が蘇っていた。自らの身を呈して大切な者を守ったその勇気ある行動・・・それを見て感動したのと同時に、ある考えが頭の中に現れた。
「俺にはそれをする勇気がないのだろうかと」
たった今目の前から消えてしまった世界で最も愛した女性。それだけでも辛いのに今度は大切な弟弟子が道を踏み外そうとしている。リオンはそれが非常に悔しかった。
「俺にできる最期の役割は・・・何がなんでもこいつを元に戻してやることだ」
「最期って・・・」
リオンはわかっていた。今の自分ではグレイに勝てないことくらい。ならば・・・自分の背中を追いかけ、軽々と追い抜いていった従弟の最期の時のように、刺し違えてでも彼を救いたい。それが今の彼の願いだった。
「早く行け!!」
「「「「・・・」」」」
彼にそう言われては、その場に止まることなんてできるはずがない。ルーシィたちは何も言葉を発することなく、その場から足早に立ち去っていった。
「カッコいいわね、最期の戦いだなんて・・・」
言葉とは裏腹にクスクスと笑いながら、敬意を払うつもりなど一切ないヨザイネ。リオンはそんな彼女に対し、ある言葉を呟いた。
「なぁ、知っているか?」
「あら?何をかしら」
「この世で一番輝ける瞬間は、死せる時なんだ」
そう言った彼は氷の鎧を作り上げ、自らの体を包み込む。インベルが使った氷絶神衣のように。
「グレイ、俺はお前の足元にも及ばない。だが、ジュビアのためにお前を止めなければならないんだ!!」
手加減など一切なしに飛び込むリオン。全身全霊の拳が叩き込まれようとした。しかし・・・
グサッ
彼のそれが届くよりも先に、グレイの拳が体を貫いた。
「がっ・・・は・・・」
腕を引き抜かれ地面へと叩き付けられる。青年はなおも諦めずに戦いを挑もうとした。しかし、限界を迎えていた肉体は言うことを聞かず、地面に崩れ落ちるしかなかった。
「あら、呆気ないわね。それが最期の力だったのかしら?」
一撃での決着につまらないといった表情のヨザイネ。彼女は見たかった出来事が終わったからなのか、興味をなくしたようにその場を後にした。覚醒したグレイを一人残して。
尻餅をついたまま動かないラクサス。いや、動かないのではない。動けないのだ。ティオスの放つプレッシャーのあまりの大きさに恐怖を覚え、体がすくんでしまっている。
「恐怖で心が折れたか?腰が抜けたか?お前は所詮の程度だったってことだ」
これだけ言われても、プライドが高かったはずのラクサスが反論することができない。それだけ目の前の青年の魔力が巨大化しており、なおも留まることを知らないのだ。
「・・・最後に一つだけ教えてくれ」
「なんだ?」
「なぜ・・・お前はこんなことをする?」
震える口からはそう言うことが精一杯だった。絶望を目の前に戦意を喪失した彼の最期の問い。ティオスはそれに笑いながら答えた。
「俺はお前たちに未来を託した。だが、それをお前たちは守れなかった」
「だったら!!お前の今の行動は間違ってるんじゃないか?」
ティオス・・・いや、レオンは自らを犠牲にして戦い命を落とした。だが、その後、彼が抜けたフィオーレは恐らく敗北へと向かっていったのだとその場にいた全員が感じ取った。しかし、それならばなぜ彼はフィオーレ側ではなく、アルバレス側に付いたのか、それが解せない。
「間違っているよ。人としてはね」
「は?」
何を言いたかったのかわからなかった。彼は意味を理解できないままのラクサスの頭に手を乗せる。
「話は済んだかい?じゃあ、サヨナラだ」
「待て!!まだ終わ―――」
それ以上の会話は、ティオスにとって必要のないものだった。興味の欠片も持たなかった相手に最低限答えれば終わり。そう考えていた彼はラクサスを凍り漬けにすると、そのまま拳を叩き込み、粉々に粉砕してしまった。
「ラクサスゥ!!」
六人いたはずの魔導士はすでに半数へとなってしまった。父の死からいまだ立ち直ることのできないカナはさらなる仲間の死に涙が止まらない。
「ローグ・・・」
「あぁ。わかってる」
次なるターゲットに視線を向けようとしたティオスはカナを見たが、すぐに視線を敵意を向けてくる二人へと切り替える。
「まだ挑んでくるか。予想よりもメンタルが強い」
これだけの力の差を見せ付けられても引くことのない三大竜の二人に笑みを溢す。対する彼らは、額から流れてくる汗が止まることはなかった。
「カナさん。あんただけでも逃げてくれないか?」
「え?」
スティングの言葉に動揺するカナ。今の自分では役に立たないと言われたのかと、心が乱れる。
「勘違いしないでほしい。あんたは強い。だが、こいつは格が違い過ぎる」
「正直、俺たちでは太刀打ちできない」
ついに本音が出てしまった。決して言わないようにと思っていた弱音。しかし、もうこれは認めざるを得ない事実なのだ
「こいつを倒せるとしたら、妖精の尻尾の全員が一致団結して挑むしかない」
「全員を集めて、こいつを止めてくれ」
そう言われても、カナはこの場から離れるのが本当に正解なのかわからなかった。いや、そもそもギルダーツもラクサスも失った今の妖精の尻尾に本当にティオスを倒せるのか、それが疑問だった。
「早く!!」
「!!」
スティングのその声で怯えていたカナは涙を溢しながら、その場から立ち去っていった。それが本当に正解なのかは彼女にもわからない。それでも、今は彼らの言葉を信じるしかなかった。
「妖精の尻尾なら、ね」
遠ざかっていく少女の背中を憐れみの目で見届けるティオス。彼は目の前の顔面蒼白の二人を見てタメ息をついた。
「お前たちなら時間もかからないだろう。すぐにでもシリルに追い付けるな」
「ナメんなよ!!」
ドラゴンフォースを解放し脅威の敵へと突撃する。当たって砕けろ、それしか道はないと二人は吹っ切れていた。
「白竜の鉄拳!!」
「影竜の斬撃!!」
左右からの二人の攻撃。ティオスはこれを回避することなく、受け止めると二人の頭が激突するようにぶつけ合う。
「いっ!!」
「くっ!!」
痛みに顔を歪める二人。だが、彼らは自分たちを守るために命を落とした仲間のことを思い出せば、決して諦めることなどできなかった。
「まだまだ!!」
「俺たちは負けるわけにはいかない!!」
傷だらけになっても、例え足が言うことを聞かなくても彼らは止まることをしようとはしなかった。それに対するティオスは、なぜか笑みが止まらない。
「あと二回」
ボソリと呟く謎の回数。それは耳のいい二人には聞こえていた。しかし、気にする余裕などあろうはずがない。
「白影竜の絁!!」
グラシアンが抜けてしまったことで威力は低下したコンビネーション攻撃。それをティオスは平然と受け流し、二人の前に一瞬で距離を詰める。
「あと一回」
二人の腹部に拳を叩き込む。魔力を纏ってはいなかったが、それでも十分すぎる威力が叩き込まれた。
「それでも・・・」
「俺たちは・・・」
「「止まれねぇんだ!!」」
失うものはもう何もない。ただひたすらに目の前の敵に挑むことしか二人の頭の中にはない。
「滅竜奥義!!ホーリーノヴァ!!」
ドラゴンを滅するために生み出された最強の魔法。これを防げるものは同じドラゴンを滅する魔を持つものか・・・
「はい、終了」
圧倒的実力差を保留するものか、だ。
ブシャッ
スティングの全身全霊をかけたホーリーノヴァ。それは確かにティオスを捉えた。
しかし、飛び散った鮮血は彼の体から流れたものではない。彼の伸びた腕が白竜の胴体を貫いたのだ。
「おしかったな、もう少し威力があれば勝てたかもしれないのに」
手を引き抜いたティオスは崩れ落ちたスティングから距離を置いた。本来ならば二人で挑まなければならなかった相手。それなのに、二人の呼吸は最後に乱れ、結果スティングが先行してしまう形になった。
「スティングゥ!!」
遅れてしまったローグは絶叫し、彼の元へと駆け寄ってくる。明らかに無防備な姿。それなのに、ティオスはローグを倒そうとも、スティングにトドメを刺そうともしない。
「スティング!!しっかりしろ!!」
「すまねぇ・・・ローグ」
「いや・・・謝るのは俺の方だ」
最後の最後に乱れた呼吸。どちらが悪いわけでもない。一気に行こうとしたスティングと一度間を置いてから攻めようとしたローグ。戦術としてはどちらも正しい。ただ、そのわずかな乱れを許すほど、敵が甘くなかっただけだ。
「ローグ・・・頼みがある」
「なんだ?」
今にも事切れそうなスティングの最後の願い。それはローグを驚愕させるものだった。
「俺を・・・殺せ」
「!?」
彼の申し出に意味がわからないといった表情のローグ。だが、すぐに冷静さを取り戻すとそれを断る。
「ふざけるな!!あいつに殺されるなら俺に殺された方がいいってことか!?」
「違う・・・そうじゃない」
血まみれの手で友の手を握り締める。その目は肉体とは正反対に、まだ輝きを失ってはいなかった。
「知ってるだろ?魔法は死んでからだと取り出すのが簡単なんだ」
それを聞いた瞬間、ローグは彼が何を言いたいのか察知した。
「俺にお前の魔法を使えっていうのか?」
スティングの作戦、それは自身の力をローグに授けること。二つの属性が合わされば、シリルの水天竜、ナツの雷炎竜、ガジルの鉄影竜のような強い力が手に入る。だが、それだけでは終わらない。
「それだけじゃない・・・お前には内緒にしてたけど・・・」
そう言って彼が取り出したのは、紫色のガラスの欠片・・・
「それは・・・グラシアンの・・・」
スティングが手にしていたのはグラシアンの体内に埋め込まれていた滅竜魔法の魔水晶の一部。グラシアンが息絶えた時、彼の体からその欠片がわずかだがこぼれ落ちたらしい。それをキセキが持っており、スティングが気を失った際に手渡していたそうだ。
「俺たち三人の力を・・・合わせるんだ。そのために・・・俺を・・・」
何をするべきなのか、もう彼はわかっている。自らの手で友を殺し、彼の魔法と大切な友の形見を手にして戦う。しかし、それはあまりにも残酷な願いだった。
「俺に・・・そんなこと・・・」
友にトドメを刺すことなんかできるはずがない・・・ローグはそんな選択をできる男ではなかった。
「やれ!!ローグ!!」
決断できない彼に力を振り絞り声をあげる。その次の一言が、影竜の心に突き刺さった。
「俺とグラシアンのために!!」
その瞬間、ティオスを道連れにしようとしたグラシアンの勇敢な戦いぶりが頭を過った。自分にできることは、もうこれしかない。
「うああああああああ!!」
迷いを振り払うため、声を上げながら友の体を貫く。ずっと同じ道を歩んできた友に命を託したドラゴンは、笑みを浮かべていた。
「スティング・・・グラシアン・・・」
ゆっくりと立ち上がる影竜。その全身から溢れ出る魔力はこれまでの黒一色ではない。
「必ず・・・こいつは俺が仕留めてみせる」
白竜、幻竜、そして影竜、三頭のドラゴンの力をその体に宿したローグ。目から零れ落ちる涙を拭うこともせず、その男は目の前の敵を見据える。
「ふふっ、これはこれは・・・」
これまでとは比べ物にならないほどの魔力。それを敵意を剥き出しにして向けてくる影竜を見たティオスの顔に焦りはない。
「何とかシナリオを戻せたか?」
それどころか、笑みを浮かべ目の前の敵を見据えていた。まるでこの瞬間を待ち望んでいたかのように。
後書き
いかがだったでしょうか。
大魔闘演武のvs未来ローグの時、ナツの問いに一瞬間を置いたのが気になってたんですよね。だから私の解釈として『仕方なくスティングを殺した』という形にしようと思いました。
次は白幻影竜ローグvsティオスがメインです。そしてそろそろシリルの活躍の場が来ます!!えぇ、やっとね。
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