高校生になっても
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第一章
高校生になっても
井伊奈菜は中学校までは女子野球部のエースで四番だった、まさにチームの主力選手であった。
だが高校に入ってからはだ、部活には入らず父の草野球のチームでエースそして四番を務めている。
その彼女にだ、父はよく家で言っていた。
「悪いな、うちのチームを助けてくれて」
「いいわよ、うちの学校女子野球部ないし」
「ソフトボール部があるだろ」
「ソフトじゃなくて野球をしたいの」
それでとだ、奈菜は父に話した。
「だからね」
「草野球のチームで野球やってるんだな」
「また大学で女子野球部があればね」
「そこでやるか」
「そうするわ」
こう言うのだった、それで奈菜は今は父が所属している草野球のチームで活躍していた。だがその彼女にだ。
同じ一年の娘達がこう声をかけてきた。
「ねえ、ちょっといい?」
「井伊さんにお願いがあるけれど」
「お願い?」
その言葉にだ、奈菜は顔を向けた。
「何なの?」
「ええ、今度私達新しい部活考えてるの」
「新しい部活創設しようって思ってるの」
「それでなの」
「井伊さんにもって思ってね」
「声をかけたんだけれど」
「どんな部活なの?」
奈菜は断るつもりだった、今は草野球をしているからだ。だがそれでも聞くだけ聞こうと思って尋ねた。
「それで」
「女子野球部よ」
「女子野球部考えてるの」
「実はうちの野球部野球道具があり過ぎてね」
「余ってるっていうし」
「その余った分貰って空いてる部室使わせてもらって」
「それでなの」
「女子野球部はじめようと思ってるの」
同級生達はこう奈菜に話した。
「今からね」
「そうしようって思ってね」
「それでなの」
「井伊さんにもって思ったの」
「ほら、井伊さん中学まで女子野球部だったじゃない」
「四番でエースだったでしょ」
「だからね」
奈菜に誘いをかけたというのだ、その言葉を聞いてだ。
奈菜は思わず心が動いた、女子野球ならと思ったのだ。だが。
草野球のことがある、それで今はだった。即答を避けてこう返した。
「考えさせて」
「返事は待つから」
「よく考えてね」
「ええ」
奈菜は今はこう答えた、そして家でだ。
父に女子野球部の創設と勧誘のことを話した、それで父に尋ねた。
「どう思う?お父さんは」
「ああ、いいことだな」
父は奈菜の言葉に笑顔で応えた。
「参加しろ」
「けれど草野球は」
「いいいい、勝ち負けが問題じゃないんだ」
「そうなの」
「こっちの野球は楽しんでるからな」
「私がいなくてもなの」
「エースで四番がいなくてもな」
それでもというのだ。
「いい、それよりもな」
「その女子野球部でなのね」
「頑張って来い、いいな」
「お父さんがそう言ってくれるなら」
奈菜の方もだった、それでだった。
奈菜は次の日に自分からその娘達の方に行って返事を述べた。
「お願いするわ」
「部に参加してくれるのね」
「そうしてくれるのね」
「そうさせて」
彼女達に笑顔で答えた、するとだった。
奈菜は女子野球部の創設運動にも関わったが学校の方は彼女達が申請を出すと九人どころか十六人もいたのでよしとした。一年生どころか二年生三年生もいた。
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