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ハイスクールD×D 聖なる槍と霊滅の刃

作者:紅夜空
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ある日の二人の日常風景

どうも、初めまして。英雄派の構成メンバーの一人、ブリギッドです。
つい先日、リーダーから文姫様の護衛兼世話役…サポートに任命されました。
文姫様はこの英雄派の中で数少ない女性幹部で、かつて右も左もわからない私に神器の事、そして身を護る術や戦い方を指導してくださった恩人でもあります。
と、とにかく。そんな方の護衛をするとなると気合も入ろうというもの。そのせいで朝早く目が覚めてしまいました。
外はまだ太陽の光もなく、暗い時間です。文姫様も流石にまだ寝ておられるはず。
軽くシャワーを浴びて、部屋を出る。以前はもう少し活気があったのだが、一部の幹部陣が離反したために数が少なくなっている今は静かなものだ。そもそも夜間の巡回をしている人も少ない。
文姫様の部屋の前に静かに立つ。もちろん、気配は極力殺していた―――だというのに。
部屋の中で、物音がたった。

「―――失礼します」

一声かけてドアを開けると、上半身だけを起こした文姫様が傍の机の上に置いてあった刀を手にしてこちらを鋭く見ておられます。
この方は本当に鋭い……というより、気配に過敏だ。パーソナルスペースが全方位に対して広い、というのだろうか。ある程度まで近くに行けば、理屈を超えた何かに感知でもされるのか隠蔽系の神器ですら見破ったという話もあるほど。例外は、昔からいる一部幹部とリーダーだけだというもっぱらの噂ですが。

「……ブリギッドか…」

私の姿を確認した文姫様から、寸前まで発せられていた警戒のオーラが溶けるように消える。同時に、カチャリとわずかな音を立てて刀が机の上に戻されていました。
ベッドから起き上がった文姫様は、寝起きの光の薄い瞳をこちらに向けています。いつもはさらりと真っ直ぐ流されている髪も、ところどころハネているのが少し微笑ましいです。

「おはようございます。少し早く目が覚めてしまったので、様子を見に来たんですが…起こしてしまいましたか?」

「別にいいよ。いつもこんなものだし」

小さく欠伸を漏らしてベッドから出てこられた文姫様は、いつも通りの服装でした。
――――この方は、寝間着などを身に着けられないのでしょうか?
疑問に首を傾げている私を完全にスルーして、文姫様は自然な動作で部屋の奥に入って行かれます。と、ひょこっと顔をのぞかせました。

「せっかくだから、ブリギッドもいる?」

………はい?何の話でしょう?
疑問符を浮かべつつもとりあえず頷いた私を見たあの方の顔がまた引っ込みます。待つことしばし、いい匂いが漂ってきました。
文姫様、料理もされるんですね。初めて知りました。
待つことしばらく、戻ってこられた文姫様の持っているお盆には三人分のご飯、みそ汁、焼き鮭という日本の伝統的朝食が並んでます。あ、煮物も付いてる…
思わず見とれてしまった私をスルーして文姫様は扉の方へ。あわてて扉を開けようとした私がたどりつく前に器用に扉をあけて出て行かれてしまいました。

「曹操、私。入るよ」

そのまま何の迷いもなくリーダーの部屋へ…ってノックもしないで!?

「おはよ、曹操。食べよ?」

「ああ、少し待っていてくれ。このデータをまとめてから」

「曹操」

「……分かった。ああ、ブリギッドも来ていたのか」

「え、あ、はい…護衛をと、思いまして」

書類を見ていたリーダーが渋々といった感じではありますがお仕事を止めた!?基本的に誰に何を言われても仕事ばかりしているリーダーが…!文姫様強すぎません!?

「ほら、ブリギッドの分」

「あ、ありがとうございます…」

渡された茶碗とお皿を持って座る。手を合わせて挨拶をすると、文姫様がいつの間に持ってきていたのか急須で緑茶を注いで私に手渡してこられます。ちなみに文姫様自身は朝は白湯と決めているのだ、とご自分でおっしゃっていました。
自分たちのリーダーと、尊敬する方と一緒に食事をしている事実に若干緊張気味の私を尻目に、お二人はとても自然に会話をこなしておられます。まるで慣れ親しんできた日常の一コマのように。
考えてみれば、リーダーが英雄派を名乗る前から傍に居たのが文姫様ということですからむしろお二人で過ごした時間の方が、組織として過ごした時間よりも長いのでしょうね。心なしか文姫様と会話をしているリーダーは、普段さまざまなものを背負っている「英雄」から気負うことも飾ることもない「普通の人間」に戻っているような気がして、見ている私も思わず微笑ましくなってしまいます。

「曹操。今日は私、仕事が割り振られてないんだけど」

「ああ、君の出番はまだだ。なにせ“アレ”はまだ不安定だろう?もっとデータを散りたいが、君への負担が心配ではあるからな」

「……ん、分かった。じゃあ今日は曹操の部屋でのんびりしてる」

「ああ、わかった。いつものようにしていてくれ」

……………あれ、これ私護衛いらなくないですか?



「はい、これで上がり」

「………三連敗ですね」

がっくりと落ち込む。リーダーの部屋に陣取った文姫様が暇を持て余したのか、トランプを持ってきて何故か私と二人でババ抜きを始めました。
先ほどから連敗中です…文姫様のポーカーフェイス怖い。というかあれは勝てない。本当に表情を消しているとしか思えないんですが!
文姫様は将棋もチェスもそれなりにお強い。リーダー曰く「戦術眼は確か」とのこと。いや、そういうリーダーはもはやなんだっていうレベルなのですが。それに認められるって文姫様怖いんですが。

「…二人じゃ面白くないから曹操もやろうよ」

「…………そのために俺の部屋に来たな?」

あらら、珍しい。リーダーのジト目なんて私、初めて見た気がします。
というか、メンバーの前では見せない顔が文姫様といると次々と出てくると言いますか。やはり、長年一緒にやってこられたからこそ気の置けない関係というのもあるのでしょうか。文姫様も心なしか、リーダと対するときには表情が豊かに見える気がします。
やろうよと誘いをかける文姫様の視線と、何か言いたげなリーダーの視線が絡まっています。お互いに逸らそうとなさいません。見方を変えればすごく情熱的にも見えそうなものです。
しばしの沈黙が流れます。と、ため息をついたリーダーが文姫様の近くに移動し、見事な黒髪を撫でるように手で梳いています。…リーダーが文姫様の髪を触るのが気に入っているというのは、本当の事だったんですね。

「……仕方がない。たまには休むとするか」

「うん。曹操は働きすぎ。ね、ブリギッド?」

「は、はいっ!?」

いきなり振ってくる文姫様に思わず動揺してしまった。このお方はたまにこういう唐突なことをされる……意外と、天然なのだろうか?

「さて、ゲームは何にする?」

「ババ抜き。か、大富豪」

………まあ、文姫様が楽しそうで何よりですが!
その後、ゲームは私の全敗で終わりました。やっぱりあのお二人は強すぎますよ……
 
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