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とある3年4組の卑怯者

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154 雪辱(リベンジ)

 
前書き
 次は女子達のスケート対決です!! 

 
 笹山の見舞いを終えて病院を後にしたみどりは堀にある質問をした。
「堀さん、先ほど笹山さんに『藤木君も頑張ってるから私達も負けないで頑張らなきゃね』とおっしゃっていましたがどういう意味だったんですか?」
「ああ、私はいじめを受けた事を引きずってるし、笹山さんは怪我したじゃない?私はその事にとらわれないよう、笹山さんは怪我を治せるように頑張ろうって事なのよ」
「そうでしたか。堀さん、また何かされたら今度こそ私が守ります!」
「ありがとう」
 みどりは堀のお陰で泣き虫を治し、学校の皆と共に過ごせるようになった。今度はその恩返しを堀にしたいと考えていたのだ。
「それにしても、藤木さん、どうしてるのでしょうか?」
「きっと最高の演技を見せてると思うわ」
(藤木君、美匍ちゃん、頑張って・・・)
 堀は大会に出ている二人の健闘を必死に祈っていた。

 男子の部が終わり、藤木の銀賞および世界大会の出場が確定した。藤木は嬉しくてたまらなかった。控室を出てトイレに行った後、古宮と擦れ違った。
「あ、古宮さん」
「藤木君、銀賞、あと世界大会出場おめでとう。いい演技だったよ。おりも負けられないな」
「はい、古宮さんも頑張ってください!一緒に世界大会に出られるといいですね!」
「うん、そうだな」
 その時、美葡と黄花も現れた。
「藤木君、すごかったワよ!私達見とれちゃった!」
「いやあ、他に取り柄がないからね・・・」
「よし、今度は私達の番だから、見ててね!」
「うん!」
「君達も藤木君と友達になったの?」
 古宮が美葡と黄花に聞いた。
「はゐ、私は関東大会でこの子に負けたリベンジを果たそうと考ゑてます!それに藤木君は私達の応援もしてくれるって言ってくれたし・・・」
 黄花は張り切って言った。
「黄花さん・・・。私も負けないワよ!」
「フフ・・・。三人で世界大会に行けるといいな」
「はい!」
「じゃあね、藤木君」
「うん!」
 藤木は古宮達と別れ、男子の控室へと戻った。

 男子の部が終わった後、大会は休憩に入った。観客席ではリリィが藤木が世界大会に行けた事を喜んでいた。
「藤木君、おめでとう・・・」
「Hey、藤木クンがsilver獲れて嬉しそうだね、baby」
 花輪が話しかけてきた。
「花輪クン・・・。うん、だって氷滑り(スケート)で世界一になる事が藤木君の目標なの。藤木君にはその目標諦めて欲しくないの・・・」
「大丈夫だよ。藤木クンはきっとそのgoalにたどり着けるさ」
「うん、そうよね・・・。あ、花輪クン」
「何だい?」
「世界大会の開催地はカナダのバンクーバーなの。貴方を頼ってばかりいて申し訳ないけど、一緒に藤木君の応援しに行ってくれるかしら?」
「ああ、ヒデじいとも相談してみるよ」
「ありがとう、花輪クン・・・」
 一方、山根もまた藤木の功績を讃えていた。
「凄いよ、藤木君!君はスケートの天才だ」
 しかし、永沢が水を差す。
「ふん、銀賞じゃ意味ないじゃないか。一番は金だぜ。つまり藤木君は負け犬の部類なのさ。天才でもないよ」
「永沢君、何て事言うんだい!?銀でも凄いじゃないか!」
「だけど銀は日本一じゃなくて日本二だろ?」
「そうかもしれないけど、君は藤木君を労わる事ができないのかい?」
「ふん!」
 永沢はそっぽを向いた。その様子を遠くから見ていた城ヶ崎が軽蔑する。
「ホント永沢って何しにここに来たのかしらっ!?」
「そうだね。藤木君が可哀想だよ!」
 たかしも城ヶ崎に同調した。
(藤木君、君もスケートで頑張ってるね。僕も何かで頑張れたらいいな・・・)
 たかしは藤木が羨ましく思った。

 出場者に支給された弁当を食べ終えた藤木と瓜原は女子の部が楽しみだった。
「いよいよ女子だね。美葡ちゃんや黄花さん、古宮さん、頑張ってほしいな・・・」
「でもわいはあの北海道の人が気になるな」
「ああ、あの人か・・・。あの人の本気ってどんなものなんだろう?」
 二人は有子真羽という北海道代表の六年生の女子が気になった。

 休憩が終わり、外の飲食店で食事を終えた3年4組は女子の部を観戦する事にした。
「そういえばさあ」
 まる子がたまえに話しかけた。
「え?」
「女子の部に堀さんの転校前の友達も出るって言ってたよねえ?」
「そういえばそうだよね」
「藤木、その子と仲良くしてんのかなあ?」
「さあ・・・。でもどんな子か一目見てみようよ!」
「そうだね!」

 小学生アマチュアフィギュアスケート全国大会女子の部が幕を開けた。男子の時と同様、様々な出場者が現れた。関東大会の銅賞者・千葉県の沢木かな子が華麗なコンビネーションスピンやトリプルルッツやトリプルアクセルが華麗に決まっていた。
「沢木さんもなかなかやるわね・・・」
 黄花は彼女も関東大会の時よりも進化したと感じていた。銅賞者が全員滑り終わった。現時点ではその沢木が111.58点でトップに立っていた。銀賞者が滑り出す。しかし、東北大会の銀賞者が最高得点を更新した。やがて黄花の番が来た。
(来た・・・。桂川さん、今度は負けなゐよ。そして貴方より上に立って世界大会に言って見せる!)
『西東京都豊田小学校・黄花蜜代さん・関東大会銀賞』
 黄花がリンクに入った。
(頑張れ、黄花さん!)
 藤木が無言で黄花を応援する。黄花はリハーサルで見せたあの三つの技を今度は完璧にこなすつもりだった。黄花がステップをし始めた。足換えのキャメルスピン、ダブルフリップ。そしてコレオステップシークエンスを見せていく。
(やるな、黄花さん・・・)
 藤木は銀賞とはいえ黄花の演技は最初から金賞者顔負けだなと思った。
(よし、見せるわ!!)
 黄花はストロークし、第一の技、両回転のトリプルルッツを試みた。先ずは反時計回りに、次に時計回りのトリプルルッツだった。そして第二の技。キャメルスピンからレイバックスピン、そしてそこから直ぐ様行うトリプルトウループ。リハーサルではトウループがシングルになるという失敗を犯したが、今度は上手く行ってくれと黄花は己に願った。キャメル・レイバックのコンビネーションスピンは成功した。問題のトウループ・・・。決まった。黄花はトリプルトウループを成功させたのだ。
(黄花さん、凄い・・・。リハーサルよりも綺麗に決まってる・・・)
 美葡はそう感じていた。黄花の演技は続く。三回転ループにフライングアップライトスピン。そしてスパイラルシークエンスをして第三の技・ステップシークエンスからのトリプルアクセルに挑戦した。最初から最後まで綺麗に決まった。黄花の演技が終了した。何のミスもなくやり遂げて黄花はホッと一息ついた。リンクから引き上げ点数発表を待った。得点が出た。東北大会の銀賞者を大きく超える141.48。黄花は両手を口に当てて喜んだ。あっぱれだと思う美匍。なかなか凄い実力だと感じる古宮。敵意剥き出しの進藤。そしてそれでも冷静にいる有子。
(あの黄花さんって子凄いね・・・。でも、その分私ももっと燃えㇽわ!!)
 有子は大会が面白くなったと感じるのだった。 
 

 
後書き
次回:「九州代表」
 九州大会の金賞者の進藤幸子が滑り出す。ジャンプをルッツやアクセルなど難しい構成に偏った彼女の演技、そして彼女のスケートに対する情熱とプライドとは・・・。

 一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!! 
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