空に星が輝く様に
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16部分:第二話 受験の場でその四
第二話 受験の場でその四
「それはね」
「そう。だったらいいけれど」
「どちらにしてもあと何日かでわかるわ」
合格発表があってからだというのだった。
「それでね」
「そうね。あと数日でね」
「わかるわ」
そうだというのである。
「絶対にね」
「何か緊張するけれど」
月美はそれを言われるとだった。無意識のうちに顔を俯けさせる。そうしてそのうえで彼女は椎名に対して言うのだった。
「その間」
「緊張することはないわ」
「それはどうしてなの?」
「緊張しても仕方ないから」
だからだというのである。
「だからね」
「そう。それじゃあ」
「静かに待ちましょう」
椎名の言葉はそれだけだった。
「いいわね」
「ええ、じゃあ」
月美は椎名のその言葉に頷いた。そのうえで家に帰るのだった。月美の家はかなりの豪邸だった。門も屋敷と言ってもいい家も立派である。その家の中に入るとだ。すぐに小学校高学年位の女の子が出迎えてきた。顔は月美のそれを明るくした感じで髪は黒い彼女のものそのものの髪を伸ばしてそのうえで左右に小さくテールを作っている。そんな娘だった。
その彼女がだ。玄関に入って来た月美を出迎えて笑顔で言ってきた。
「お帰り、お姉ちゃん」
「只今、心美」
笑顔で応える月美だった。実に優しい包容力すら見られる笑顔である。
「学校はどうだったの?」
「楽しかったよ」
屈託のない笑顔で返す心美だった。
「いつも通りね」
「そう。それはよかったわ」
「それでお姉ちゃん」
心美は明るい顔でまた言ってきた。見れば心美の服はふわふわとした淡い黄色のロングスカートである。その彼女が言ってきたのである。
「どうだったの?受験は」
「そのこと?」
「うん、そのこと」
月美は靴を脱いでそのうえで玄関を出た、その姉への言葉だ。
「どうだったの?」
「どうかしら」
妹に対しても今一つ浮かない返答だった。
「それは」
「わからないの?」
「ええ」
やはり自信なさげであった。
「結果が出ないと」
「そうなの」
「とりあえずこの話はこれで終わりね」
これ以上言っても仕方ないと思ったからだ。だからこの言葉を出したのだ。
そうしてだ。家の廊下を進んでいく。木の廊下もかなり長い。家の中は洋風でやはり立派なものである。その立派な家の中を進みながらの話だった。
「それじゃあ」
「どうするの?それで」
「寝るわ」
そうするというのだった。
「今はね」
「そうするの」
「ええ、寝るわ」
また言う月美だった。
「とりあえず今は」
「そうするの」
「晩御飯になったら呼んで」
そしてまた言った。
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