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ロボスの娘で行ってみよう!

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第61話 混乱の後任人事


帝国側のターンです。
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第61話 混乱の後任人事

帝国暦485年4月8日

■イゼルローン要塞  ラインハルト・フォン・ミューゼル

ヴァンフリート星系で同盟の悪辣な罠に罹り大敗北した我々は、途中戦力の再編成を行いながらイゼルローン回廊まであと少しの宙域まで来た。7万8000隻の艦艇が僅か1万4000隻程に減少しまともな指揮官はシュトラウス中将と俺だけだ、その為残存艦隊の内1万隻をシュトラウス提督が指揮し、残りの4000隻程を俺が指揮する事に成った。

纏めたは良いが指揮系統もバラバラの艦隊であり、補給もまともに受けられない状態でイゼルローン回廊まで来た為に、俺の分艦隊以外の連中がホームスピードで走り出してしまった。その時同盟の第二の罠が始まったのは、突入する艦隊目がけて、天頂方向と天底方向から敵艦隊が攻撃してきたのだった。

その攻撃でパニックに陥る味方艦隊、俺の廻りに残った1000隻ほどの艦隊は装甲の厚い艦を外側にした紡錘陣形を取り防御をはじめた。他の艦船は我先にと回廊へ侵入しようとするが、其処には宇宙機雷が仕掛けられていた、大輪のの花が宇宙に咲き乱れたが、俺の艦隊は空いた穴を探り出し其処を強行突破し生き残れた。

損傷艦を合わせても1000隻程の艦隊で3万隻ほどの艦隊と戦う事は幾ら俺でも難しいからな。キルヒアイスも止めたので、今回は叛徒共を勘弁してやろう。

イゼルローン要塞に帰り着いたのは僅か2884隻でしかなかった。あの無能者のミュッケンベルガーと筋肉達磨のオフレッサーも帰ってこなかったか。無能者が指揮を取ったせいで多くの犠牲が出た、最初から俺に指揮権が有れば、あの様な罠など直ぐ見破って、帝国軍の大勝利に出来たモノを。

早くオーディンに帰り姉上に逢いたい。


帝国暦485年4月8日

■オーディン 軍務省

軍務省で軍務尚書エーレンベルグ元帥と統帥本部長シュタイホフ元帥が会談をしている。両者とも非常に深刻な顔つきである。

「敗北したというのか」
「全滅と言って良い、生き残りは三千足らずだそうだ。それにミュッケンベルガーは帰ってこなかったそうだ」
「そうか、逝ったか」

「只でさえサイオキシンのせいで宇宙艦隊が混乱している状態なのに、このざまでは」
「で、どうするのだ、ミュッケンベルガーの後を継ぐ者を決めねば成らんが」
「そうは言っても、元帥は我々以外にはクラーゼンしか居らんし」
「奴では駄目だ、家柄だけで元帥になった男だ、しかも幕僚総監という名誉職だからこそ勤まっているのだから」

「うむー。数少ない上級大将はサイオキシン麻薬の余波で殆どが退役したしな」
「後は、ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯などしか居ないが」
「馬鹿な、お飾りの上級大将など何の役に立とうか」
「すると、大将からの昇進しか有るまい」

「候補者としては、ラムスドルフ上級大将、メルカッツ、ゼークト、シュトックハウゼン、クライスト、ヴァルテンベルク、クラーマー大将などが居るが」
「ラムスドルフとクラーマーは駄目だ、アレは陸戦担当だ。それに味方殺しも駄目だな」

「そうなると、メルカッツ、ゼークト、シュトックハウゼン、ヴァルテンベルクの4人が有力候補者か」
「此は揉めるな。陛下に奏上し決めて頂いた方が良いやもしれんな」
「確かに、陛下のお決めになった事であれば納得するであろう」

「所で、敗北の責任を誰に取らせるかだが」
「生き残りの将官に取らせるよりあるまい」
「最高責任者がシュトラウス中将次席がミューゼル准将だ」

「グリューネワルト伯爵夫人の弟か」
「陛下の事だ、ミューゼルはよせと仰るやもしれんな」
「シュトラウスだけに責任を取らせるか」

「そうするしか有るまい」
「只でさえ将官が不足しているのにもかかわらずか」
「そうでもせんと、門閥貴族のお歴々や遺族が納得しないだろう」

「仕方が無いと言う事だな」
「全くだ」


帝国暦485年4月9日

■オーディン 

遠征艦隊壊滅の報は燎原の火事の如くオーディンの貴族社会を駆け巡った。それにより不平貴族が益々胡乱な動きをし始めて、残存軍はそれにかかり切りになっていった。

更に宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥と装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将の行方不明が伝えられると、次の宇宙艦隊司令長官と装甲擲弾兵総監の椅子をめぐり貴族出身の予備役上級大将達が我こそはと蠢動をはじめ、皇帝に自薦他薦を含み猟官運動をはじめたのである。

此により、エーレンベルグ元帥、シュタイホフ元帥の計画した数人の候補者から皇帝の一事で決める事は出来なく成り、後任人事は混沌としてしまうので有った。



帝国暦485年4月20日

■イゼルローン要塞

反乱軍の襲撃を警戒していたイゼルローン要塞に一隻の帝国軍巡航艦が近づいてきた。直ぐさまパトロール艦隊が誰何する。

「接近する巡航艦、艦名及び指揮官の官姓名を名乗れ」
流石に同盟側から来る艦を怪しみ、何時でも攻撃できる状態である。
『当艦は巡航艦アーヘン、艦長代行アルベルト・シュールマン少佐であります』

直ぐさまイゼルローン要塞のコンピューターで検索され、ヴァンフリート星系で行方不明になった艦と少佐だと判明した。
「何故、今頃帰還したのか?」

「叛徒より、ミュッケンベルガー元帥、オフレッサー上級大将、グライフス大将閣下のご遺体を引き渡されててきました」
その言葉で、イゼルローン要塞では直ぐにFTLで軍務省へ連絡を行う。

『シュトックハウゼン、どうかした?』
緊急の報告だと聞きエーレンベルグ元帥が出てくる。
「はっ、叛徒がミュッケンベルガー元帥、オフレッサー上級大将、グライフス大将閣下の遺体を返還して来ました」
 
『なんと、そうであるか』
ミュッケンベルガーの死を聞いてエーレンベルグは、モノクルを弄り考える。
「如何為さいますか?味方の巡航艦が受け取って帰還しました」

『なるほどな、判った。遺体と共に巡航艦のスタッフも共にオーディンへ送り出すようにせよ』
「はっ」

ゼークトがその話を聞いて、パトロール艦隊に命令を出す。
「危険物などがないように、巡航艦を臨検後にイゼルローン要塞まで護衛し帰投せよ」
「はっ」

直ぐさま、巡航艦に臨検の為にパトロール艦隊から駆逐艦が接舷して行く。
臨検の結果、確かに、ミュッケンベルガー元帥、オフレッサー上級大将、グライフス大将の遺体を確認し、彼等が実際は降伏していたのであるが、それは隠して居た。彼等が潜伏した後叛乱軍の呼びかけで遺体を受け取り、各人の最後を記した記録を預かってきた事が判ったのである。

此により、5月30日にミュッケンベルガー元帥、オフレッサー上級大将、グライフス大将の遺体はオーディンへ到着した。その後最後が皇帝に詳しく伝えられた結果、罪は無しと決せられ、ミュッケンベルガーは元帥のママで葬られ、オフレッサーも元帥に叙され、グライフスは上級大将に叙された。

此により戦死者に対して鞭打つ行為は無くなり、生者に対する責任の取りようが問題になった。
シュトラウス中将は責任者として銃殺刑に処せられるところをフリードリヒ4世の『再起を決せよ』の一言で生きながらえ、同盟に対して復讐の念に燃えるのである。

ラインハルトは、ヴァンフリート星系での失敗から准将のママで有るはずが、最後のイゼルローン回廊突破により最低限度の損害で突破したとの事と、高級士官が軒並み戦死した影響で戦果が針小棒大に伝えられ、フリードリヒ4世の勅命で少将へと叙された。

実際には戦死したグリンメルスハウゼン中将の評価待ちであったが、それが敵わなかったためにフリードリヒ4世は自分で再度ラインハルトを試してみる気になり、少将の位を与えたのであった。それをラインハルトは全く気が付かずに居たのである。全ては皇帝の掌の上で踊っているとも知らずに。

少将への昇進はラインハルトも驚いたが、貰っておくモノは貰っておこうとありがたく頂くのであった。腹では皇帝の戦の事を知らない事を嘲りながらであった。その悪口を聞いたキルヒアイスは溜息をつくのであった。


帝国暦485年7月

■オーディン

6月を迎えても宇宙艦隊司令長官人事は未だ混迷の坩堝の中にあった。その為に臨時にシュタイホフ元帥が宇宙艦隊の再編を行ったが、足の引っ張り合いで再編は益々遅延し、7月になっても艦隊数は6個艦隊と僅か2個艦隊しか整備できない状態であった。

装甲擲弾兵総監の人事は大貴族が地上部隊の指揮を嫌ったために、比較的早く決まり、元憲兵総監クラーマー大将が上級大将に昇進の上就任した。此は人材不足を如実に物語る人事であった。後任の憲兵総監にはオッペンハイマー中将が大将に昇進の上就任した。

この後装甲擲弾兵の士気は下がりまくりで、精強な姿が次第に見られなく成っていくのである。

宇宙艦隊司令長官はこの状態でも人気があり、大貴族からはブラウンシュバイク上級大将、リッテンハイム上級大将などが、立候補し軍部でもメルカッツ提督を押す者やゼークト提督を押す者など数グループに分かれて牽制し合っているのである。

ブラウンシュバイク公やリッテンハイム侯はやる気はあったが、実力が伴わず、メルカッツ提督は自らの限界を知っているため、一歩引いた形で有る。その他の候補者は汚名返上を狙うクライスト提督、シュトックハウゼンとの喧嘩が飽き飽きのゼークト提督、今一度栄光をと言うヴァルテンベルク提督、どうでも良いというシュトックハウゼン提督など、皆それぞれにバラバラの考えであった。
 
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