空に星が輝く様に
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154部分:第十二話 夏に入りその五
第十二話 夏に入りその五
「日本にそんな奴がいるなんてな」
「そいつ北朝鮮の強制収容所にでもいるのか?」
「収容所かよ」
「そこの衛兵か何かじゃないのか?」
こうまで言う生徒もいた。その生徒の声は呆れ返っていたものだった。
「そこまで無法な奴が日本にいるなんてな」
「ああ、ちょっとな」
「有り得ないな」
「教師には変な奴もいる」
顧問の先生自身の言葉である。
「中にはそんな人間もだ」
「いるんですか」
「そういうことですか」
「そうだ、残念ながらいる」
こう陽太郎達に話すのだった。
「武道をやる資格のない人間がな。しかし」
「しかし?」
「っていいますと」
「そこまで非道な奴ははじめて聞いた」
この先生ですらというのだった。
「教育委員会はそういう奴を野放しにする世界だがな」
「この高校にはそんなのいませんよね」
「普通の世界なら即刻クビだ」
先生は彼の言葉に答えながら実際に右手で自分の首を切る動作をしてみせた。
「この学校でもだ」
「普通の世界ならですか」
「教師の世界は普通じゃないんだ」
俗に言われていることである。教師の世界というものは実際に閉鎖的でありしかも特定のイデオロギーに支配されていたりもする。おまけに日教組という存在がである。その世界をさらに歪にさせてしまっているのである。
「それもかなりな」
「かなりですか」
「この学校はまずそうした教師を淘汰するんだ」
そうした学校だというのだ。
「だからだ。そんな教師はだ」
「いませんよね」
「そうだ、いない」
はっきりとした断定の言葉だった。
「だから安心してくれ、このことはな」
「わかりました」
「愛の鞭も必要だ」
先生もそれは否定しない。
「しかし。暴力や虐待は駄目だ」
「あいつのやっていたことは虐待だったんですね」
「生徒に恐れられて得意になっていたんだな」
「はい、そうです」
彼はまた答えた。
「自分の前に来てがたがたしているのを楽しんでましたから」
「なら今度はあいつががたがたする番だ」
先生は完全に怒っていた。目が本気だった。
「すぐにあらゆる場所に連絡してだ。先生が完全に抹殺してやる」
「抹殺ですか」
「そいつは懲戒免職だ。剣道界からも永久追放だ」
そこまで至るというのである。
「そうしてやる。そんな奴は剣道をしてはならない」
「絶対にですか」
「絶対だ。いいか」
そして今度は自分の生徒達に言うのだった。
「そんな人間にはなるな」
「その暴力教師みたいなですよね」
「そんな奴には」
「そうだ、なるな」
先生の言葉は強いものだった。
「絶対にだ」
「はい、それはわかってますよ」
「だってねえ。そんなことしたら」
「最低ですよね」
「そうだ、まさに最低だ」
先生はさらに言う。
「人を暴力で従わせ悦に入っている様な奴はだ」
「最低ですからね」
「そんなことをしたら」
「皆わかっているようだな」
先生は彼等のそうした言葉を聞いて安心した顔で頷いた。そうしてであった。
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