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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第36話 奪われた聖剣、予想だにしなかった再会

side:イッセー


 よう、イッセーだ。球技大会も終わりまた日常が戻ってきた。今は大きな欠伸をしながら放課後の部活で何をするか考えている所だ。そろそろ新しいメニューでも考えてみるかな?


「兵藤、あんた目が赤いけど大丈夫?今日の授業もなんだか眠そうだったしもしかして寝不足なの?」
「ああ、まあ昨日少しな……」


 目を擦っている俺を見た桐生が声をかけてきた。何があったかと言うと昨日、夜に小猫ちゃんが俺の部屋を訪ねてきて胸を揉んでくれと頼んできたんだ。オカルト研究部の部室で冗談じゃないと言ってたがまさかマジで言ってくるとは思ってもいなかった。


(しかもそこにアーシアと朱乃さんが便乗してきたんだよな……)


 まるで小猫ちゃんがそういう行動に出ると知っていたようなタイミングでアーシアと朱乃さんも来て自分たちも混ぜてほしいと言ってきたんだ。
 結局断ることが出来なくて俺は3人の胸を揉むことになった。えっ?直で揉んだのかって?バカ言うな、そんな度胸は俺にはねえよ。妥協案として体操服の上から揉んだんだ……何?揉み心地はどうだったかって?そんなもん言えるかよ。はぁ?どうしても知りたいって?……しょうがねえな、ちょっとだけ教えてやるよ。


『相棒の奴、現実逃避しようとしておかしくなっているな……』


 ドライグが何か言っているが無視だ、無視。まず朱乃さんだが一言で言うと凄かった、指が沈むんだもん、ハンパじゃないね。堕天使の女性は男を堕落させるためにそういう身体に成長しやすいと朱乃さんは言っていたがそれにしてもヤバいだろう。
 

 次にアーシアだが朱乃さんと比べれば劣るように感じるが朱乃さんが凄すぎるだけでアーシアも十分に柔らかかった。
 

 最後に小猫ちゃんだが彼女は胸が小さい事を気にしているようだったがちゃんと女性らしい膨らみは存在していた、というよりも小猫ちゃんが一番エロかった。甘い声を出しながら上目遣いで俺を見つめてくる小猫ちゃんを見てマジで理性が消えかけたほどだ。


 一瞬そういう事をしようと思ったが必死で欲望を抑え込んで3人を抱きしめて無理やりベットに倒して眠らせた。3人は不服そうな表情を浮かべていたが流石に欲望のまま襲い掛かるのは嫌だったので我慢してもらった。


(まあそのせいで寝不足になっちまったんだけどな……ふぁぁぁ……)


 俺の疲れたような姿を見ていた桐生は怪訝そうな顔をしていたが、不意にニヤリと笑うと俺に耳打ちをしながらボソッと何かを話してきた。


「もしかして……アーシアとお楽しみだった?」
「んなッ!?」


 桐生の発言に俺はつい声を出して席を立ちあがってしまった、放課後とはいえ教室にはそれなりに人が残っていたので全員が変な奴を見るような目で俺を見ていた。俺は顔を赤くしながらペコリと頭を下げて再び席に座り桐生に顔を近づけて小声で文句を言った。


「おい、桐生!いきなり変な事を言うんじゃねえよ!」
「えー、だってアーシアもなんか熱の籠った視線を兵藤に送ってるしこれは何かあったんじゃないかと思わない方がおかしいじゃない」
「ぐっ……」


 確かに今日一日はアーシアに熱の籠った視線を送られていたがこいつ、それに気が付いていたのか……


「それで、実際はどうなのよ?」
「俺は何もしてないよ。確かにそういう雰囲気にはなったがその時俺は避妊具を持っていなかったんだ、欲望のままアーシアを傷つけるような事はしたくない」
「へ~……やっぱ兵藤ってしっかりしてるね、今時の男女なんて大抵その場の雰囲気で流されちゃう事も多いけどあんたはアーシアを傷つけないように考えれるなんて偉いと思うわ」


 バシバシと背中を叩いてくる桐生だがまさか小猫ちゃんと朱乃さんもその場にいたとは思ってはいないだろう。だから褒められても正直複雑な気分だ。


「お二人とも、何を話しているのですか?」


 そこに外にある自動販売機にジュースを買いに行っていたアーシアが現れて会話に入ってきた。


「んっふっふ、アーシアの彼氏はしっかりしてるねって話してたの。アーシア、あんた、すっごい愛されているよ」
「ふええ!?イッセーさんが私を!?……そんな、嬉しいけど恥ずかしいですぅ……」


 いやんいやんと体をクネクネさせるアーシア、桐生の奴、純粋なアーシアで遊ぶなってのに……


「失礼します、イッセー先輩はいますか?」
「お、小猫ちゃんじゃないか」


 教室の後ろ側のドアが開いて小猫ちゃんが入ってきた、小猫ちゃんが現れるのを見たクラスメイト達は騒ぎ出した。


「イッセー先輩、まだ教室にいてくれたんですね」
「ああ、後少し経ったら家庭科室に向かおうと思っていたんだけどな」
「ちょうど良かったです、実は部長がイッセー先輩とアーシアさんを呼んでいまして……」
「リアスさんが?何か用事なのか?」
「ここではちょっと……」


 ふむ、小猫ちゃんが言いずらそうにしているという事はここでは話せない内容なんだろう。


「分かった、直に旧校舎に向かうよ」
「ありがとうございます、私は外で待っていますね」


 ペコリと頭を下げた小猫ちゃんが教室から出ていく、俺はアーシアを連れて旧校舎に向かった。










「すみません、イッセー先輩、アーシアさん。部活があったのに無理を言って付いてきてもらって」
「気にしなくていいさ、リアスさんが俺たちを呼んでいるって事は何かあったって事だろう?」
「私も詳しくは知らないんですが、どうやら教会の関係者が訪ねてきたらしいんですよ」
「教会の関係者……ですか?」


 外で待っていた小猫ちゃんと合流した俺とアーシアは、小猫ちゃんから何の用でリアスさんが俺たちを呼んだのか聞いてみたが、どうやら教会の関係者とやらが絡んでいるようだ。でも教会か……


「アーシアに関係する事じゃないだろうな?」


 教会はアーシアを魔女として追放した、それで終わりだと思っていたがまさかまだアーシアに何かしようとしているんじゃないだろうな?


「いえ、どうやらアーシアさんのお知り合いらしくて……ゼノヴィアという方を知っていますか?」
「ゼノヴィアさん!?ゼノヴィアさんが来ているんですか!?」


 ゼノヴィアという人物の名を聞いてアーシアが嬉しそうにその名を叫んだ。


「知り合いか、アーシア?」
「はい!ゼノヴィアさんはエクソシストで私が教会にいた頃に一度だけ私の元を訪れたことがあったんです、その時に酷い怪我をしていて私が治したんですが私の事を聖女ではなく普通の人間として接してくれた数少ない人です。それ以来は出会えず私が教会を追放されてからはそれっきりだったんですがこの町に来ていたんですね」


 アーシアが嬉しそうに話すあたり悪い人物ではなさそうだな。


「つまりゼノヴィアという人物がアーシアに会いたがっているという事で俺たちを呼んだのか?それだったら俺は行かなくてもいいと思うが……」
「ゼノヴィアさんはアーシアさんに会いに来たわけじゃないそうです、ここに来る最中に偶然アーシアさんの姿を見たゼノヴィアさんが無理を言って会わせてほしいと言ったんです」
「そういえばさっきジュースを買いに行く途中でフードを被った2人にすれ違いましたがその人たちの一人がゼノヴィアさんだったんですね」
「私たちはお二人と親交があったのでこうして迎えに来ました。因みにイッセー先輩も呼んだのはゼノヴィアさんが訪れた本当の目的の為です」
「本当の目的?取りあえず旧校舎に行ってリアスさんから詳しい事情を聴くことにするか」


 詳しい事はリアスさんに聞く事にして俺たちは旧校舎のオカルト研究部の部屋の前まで来た。


「部長、イッセー先輩たちを連れてきました」
『小猫、ご苦労様。入ってもらっても大丈夫よ』


 小猫ちゃんが部屋の扉を開いて中に入る、そこにはリアスさんや祐斗、朱乃さんといったいつものメンバーに白いフードを被った二人の人物がソファーに座っていた。


「ッ!?アーシア!!」


 フードを被った一人がアーシアを見て勢いよく立ち上がった、すると被っていたフードが取れてその人物が凛とした美少女だったと知ったがそれ以上に驚いたことがあった。


(なんだ、あの格好は……!?ピッチピチじゃねえか!?)


 フードの下は身体のラインがくっきりと浮かぶくらいのピッチピチの黒いスーツだった。なんだ、あのエロい恰好は!?まさか教会っていうのはああいうのが趣味なのか!?
 俺が教会の使いである女性の恰好に驚いていると、女性はアーシアの元に行きアーシアを抱きしめた。


「アーシア!ああ、本当に君なのだな!」
「ゼ、ゼノヴィアさん、苦しいです~」
「あ、すまない。だがどうしても喜びが抑えきれなかったんだ、あの時君に助けてもらっておきながら私は何もしてやれなかった、君が追放されたと知った時はもう会えないと思っていたがまさかこの地で君に会えるなんて……これも主の導きだな」
「ゼノヴィアさん……ご心配をおかけしてごめんなさい」
「いいんだ、こうしてまた会えたんだから」


 ……良かったな、アーシア。


「ゼノヴィア、その子があなたが昔お世話になったっていう子なの?」
「ああ、この子がアーシア・アルジェント。かつて聖女と言われていた子だ。それにしても教会の上層部の奴らめ、悪魔を治しただけでアーシアを魔女にして追放するとは……シスター・グリゼルダの言う通り堅物ばかりだな」
「まあそれについては同意だけどあんまりそういう事は口に出さない方がいいわよ?ただでさえあなたって思った事をハッキリと言ってしまう性格なんだから」


 ふむ、どうやらこの二人は教会の上層部とやらに不信感を持っているようだな。教会の関係者と言うと神を信仰しすぎてそれ以外に盲目的になっているイメージがあったが勘違いのようだったな。


「えっと……話に入ってもいいか?」
「おや、そういえば君は誰だ?悪魔ではないようだが……」
「ゼノヴィアさん、この人は私を保護してくれたイッセーさんです」
「なんと、君がアーシアを助けてくれたのか。私はゼノヴィア、教会のエクソシストだ。アーシアを助けてくれたことを心から感謝している」
「兵藤一誠だ。気にすることは無いさ、アーシアには色々と助けてもらっているからな」
「そうか、アーシアはいい人物に助けられたようだな」


 ゼノヴィアか……中々いい奴だな、これは教会についての印象を変えた方が良さそうだ。


「……一誠?」
「うん?今俺を呼んだか?」


 ソファーに座っていたもう一人の教会の使いの人物がボソッと俺の名前を呟いたことが分かったので返事をする、すると俺の名を呟いた人物は慌てた様子で手を振った。


「あ、ごめんなさい!知り合いの名前に似ていたからつい……私も自己紹介しなくちゃね」


 声も女の子のものだし私と言ったからこの人も女性なんだろう、フードを被った女性は立ち上がると被っていたフードを取って素顔を曝した。栗色の髪をツインテールにした可愛らしい美少女だった。でも身体はゼノヴィアと同じくらい発達しており目のやり場に困ってしまう。
 というか教会のエクソシストってスタイル抜群の美少女ばっかりなのか?やっぱりこれ、少し誰かの趣味が入っていないか?


「初めまして、私は紫藤イリナといいます。あなたの名前は?」
「……イリナ?」


 俺はその名を聞いて心臓が掴まれたかのようなくらい動揺した。嘘だろ、まさか、そんな……


「あれ?どうかしたの?」
「イッセーさん?」


 皆が心配そうな表情で見つめてきたので、俺は動揺を抑え込んで自己紹介をした。


「あ、ああ、すまない。俺は兵藤……兵藤一誠だ」



―――――――――

――――――

―――
 



「なるほど、エクスカリバーという聖剣が奪われたという訳ですか」


 リアスさんやゼノヴィアから詳しい事情を聴いた俺は話を纏めてみた。カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側に保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われたらしい。 

 エクスカリバーといえばゲームや漫画を嗜んでいる人物なら名は知っているという位の有名な聖剣だ。元々は一つの剣だったが大昔の戦争で折れてしまったらしい。その折れた破片を集めて錬金術で新たに聖剣を7本生み出したようだが、そのうちの一つは行方が分からなくなっており6本のエクスカリバーを教会がそれぞれの場所で管理していたようだ。


「私が所持しているのは『破壊の聖剣』という物だ。単純な破壊力なら7本の中でも一番強い」
「私のは『擬態の聖剣』といって自由自在に形を変えられるの。こんな感じでね」


 ゼノヴィアとイリ……紫藤はお互いの獲物を取り出して俺たちに見せてくれた。神々しい聖なる波導を感じた俺は少し身震いをした。俺でさえ身震いをする聖剣か、悪魔のオカルト研究部の皆はまさに天敵を見せつけられたような気持ちなんだろうな。いうなれば足を怪我したシマウマが迫り来るライオンの群れを見るような心境か?


「奪われたエクスカリバーの事は分かった。でもそれがこの町とどういう関係があるんだ?」
「奪ったのは堕天使……『神の子を見張る(グリゴリ)』だ」


 グリゴリ……堕天使アザゼルをトップとする巨大組織か。そういえば前にアーシアを使って何かをしようとしていたレイナーレという堕天使がアザゼルという名を呟いていたな。


「堕天使の組織に聖剣を奪われたの?明らかな失態ね」
「返す言葉もないよ。奪った主な連中は既に把握している、グリゴリの幹部コカビエルだ。そいつが今この町に潜伏している」
「コカビエル……かつての戦争を生き抜いた歴戦の戦士じゃない。本当にそいつがエクスカリバーを奪ったの?」
「襲撃に合った際、生き残った者がそう発言した。間違いないだろう」


 コカビエルか、名前は知っているが実際に会った事は無いな。ドライグ、そいつは強いのか?


『コカビエルは堕天使の中でもかなりの強さを持っている、しかも戦闘狂だ。今回の事件も大方戦争を起こしたいからおこなったのではないか?』


 脳内でドライグがそう説明してくれた。しかし面倒くさい奴だ、戦争がしたいなら一人で戦っていればいい、それなのに何の関係もない一般人が住むこの町を巻き込もうとするとはな。


「堕天使側には確認したの?もしかしたらコカビエルの独断の可能性もあるわ」
「……確認はしていない」
「……えっ?」
「確認はしていないんだ。教会の上層部は今回の事件を隠したがっている。エクスカリバーを奪われたなどと教徒たちに知られれば大きな責任を払わなくてはならなくなる、だから秘密裏に解決したいんだ。このことはごく一部しか知らされていない、襲撃に会った際もエクスカリバーを守り今は隠していると発表している」
「ふ、ふざけているの!?一歩間違えれば戦争になりかねない状況なのよ!自分たちの保身の方が大事だと言うの!?」


 リアスさんは怒りを露わにするが無理もないだろう、本来ならこのことを堕天使側にも話して確認を取らなくてはならない。 
 もし堕天使側が指示したことならそれに対してどう行動しなければならないか考えなけらえばならない、だが堕天使側が知らなければ今回の事件はコカビエルの独断と分かるのでトップが何らかの責任を取ることになるだろうが戦争になる可能性は低くなる。
 まあ堕天使側に嘘をつかれたらどうしようもないが上がすることといえばまずは状況の確認だろう。なのにそれすらしないで秘密裏に処理しようとしているらしい、まったく人間らしくて感心するぜ。


「教会の上層部はコカビエルが逃げた先を調べ上げ、それがこの町だと分かった。既に何人ものエクソシストがこの町に入り込んでいるが全員が通信を途絶えている、恐らく始末されたんだろう」
「……最近怪しい神父がこの町に入り込んでいると報告はあったから警戒はしていたけど、まさかコカビエルが関係していたなんて思いもしなかったわ」


 リアスさんはまさか聖書に名を残すような大物がこの町に入り込んでいたとは思っていなかったようで大きな動揺を見せている、まあこればかりは俺も同意だ。


「それで私たちが今回魔王の妹であるあなたの元を訪ねたのは、事件解決の為に協力を要請したいからだ」
「協力?勿論この町を管理する者として協力するけど、それは教会上層部の判断なの?確か秘密裏に処理したがっているんでしょう?」
「いや本部からは私達二人でエクスカリバーを奪還しろと言われている、だからこれは私とイリナの独断だ」


 独断だって?組織の意向に逆らう気なのか?


「どうして独断で私たちに接触したの?そんなことをしたら貴方たちが罰を受けることになるのよ?」
「二人だけでコカビエルをどうにかできると思っているほどうぬぼれてはいない、少しでも任務の成功率を上げるためにこうすべきだと判断した。何より今回の事件はこちらの落ち度でありながらそれを隠して無断でこの地に足を踏み入れている、下手をすれば悪魔とも敵対することになってしまうと思いこうやって接触したという訳だ」
「……貴方たちの思いは良く分かったわ。この町を守る為に私たちも協力させてもらうわ」
「感謝する」


 どうやら話は纏まったみたいだな。


「イッセー、本来あなたは何も関係ない一般人だけど今回の事件はかなり危険なものになるわ。だから……」
「力を貸してほしいって言いたいんでしょう?勿論協力しますよ、この町に住む者としてね」
「ありがとう、イッセー」


 リアスさんはニコッと微笑みながら俺に礼を言った、そして真剣な表情を浮かべてオカルト研究部の皆に指示を出した。


「祐斗、小猫。あなたたちはイッセーと協力してこの町の見回りをしなさい、万が一コカビエルを発見しても直接戦闘はしないで直に私に知らせる事。それと明日から学校は休んでもいいから今日は夜間も見回りを続けて頂戴」
「「了解しました!」」
「朱乃、あなたはこのことをソーナ達に知らせてちょうだい、彼女たちにも協力してもらうわ。唯イッセーの事は伏せておいてね」
「ふふ、勿論ですわ。それでは行ってきます」


 朱乃さんはそう言うと部室を出ていった。


「あなたたちはどうするの?」
「私たちも兵藤一誠についていこう、この町の地理は知らないので一緒に行動した方がいい」
「それでいいかしら、兵藤君?」
「……ああ、俺は構わないぜ、よろしくな」


 指示を受けた俺たちは早速行動しようとしたが、俺だけリアスさんに呼び止められたので他の皆を外に出してリアスさんと二人きりになった。


「イッセー、祐斗の事なんだけど……」
「祐斗がどうかしたんですか?そういえばさっきから思いつめた表情を浮かべていたので気にはしていたんですがもしかして聖剣に何か関係があるんですか?」
「流石に鋭いわね、その通りよ。あの子は過去に色々あって聖剣を憎んでいるの。流石に何があったのかはあの子の許可無しでは話せないわ、あなただったら祐斗から話すと思うけど今はこのくらいしか言えないの。ごめんなさい」


 祐斗の様子から何かあるとは思っていたが結構な因縁がありそうだ。聞いてみたい気もするが自分の知られたくない過去を勝手に話されるのは嫌だろう、あいつが話してくれるまで待つことにしよう。


「分かりました、祐斗の事は任せてください」
「それともう一つ話があるの……今回の事は魔王様に報告するわ」
「……そうですか」
「ごめんなさい、あなたに迷惑がかかるかも知れないけどコカビエルが出てくるとなれば報告しない訳にはいかないの」
「構いません、リアスさんの判断は間違っていませんよ。遅かれ早かれ接触することになるでしょうしそれが早まっただけです」


 コカビエルがどれだけの強さかは知らないが、もしかしたら俺でも勝てないかもしれない。何より戦争が起きかねないこの状況で魔王に報告しない訳にはいかないだろう。


「……ありがとう、イッセー。あなたには本当にお世話になってばかりね、今度何かエッチなお礼でもしてあげましょうか?」
「うえっ!?何を言っているんですか!あなたには想い人がいるんでしょう!?」
「ふふっ、冗談よ。皆をお願いね」


 リアスさんはウィンクしながら部室を出ていった。俺はちょっと顔を赤くしながら外で待っている皆の元に向かった。




―――――――――

――――――

―――


side:祐斗


 イッセー君と合流した僕たちはゼノヴィアさんたちにこの町の地理を知ってもらうためにイッセー君の家に向かっていた。どうしてイッセー君の家に向かっているのかというとこの町の地図をイッセー君が持っているらしいからだ。


「これは君の家か?随分と大きな家に住んでいるんだな」
「すっごい豪邸だね!一人で住んでいるの?」
「いや、アーシアと小猫ちゃん、朱乃さんも住んでいる」
「はい、ちょっと事情がありまして」


 ゼノヴィアさんとイリナさんの言葉にイッセー君と小猫ちゃんが答えた。流石に3人と交際していて同棲までしているなんて話せないよね。


「よし、皆、まずはこれを見てくれ」


 イッセー君が広げたのは大きな地図だった、この町の全体が書かれており至る所に赤ペンで丸が付けられていた。


「この赤い丸が付いている場所は人目の付かない森や廃墟がある場所だ、まずはこの辺りを手分けして捜索していこう」
「班分けはどうするんだい?」
「そうだな、ゼノヴィアと紫藤はこの町の地理に詳しくないからオカルト研究部の誰かと行動を取った方が良さそうだ。ここは万が一の時の安全も考えてスリーマンセルで行こう。メンバーは俺、祐斗、紫藤。次に小猫ちゃん、アーシア、ゼノヴィアのチームでどうだ?」
「アーシアと一緒か、なら気合を入れていかないとな」
「ゼノヴィアさん、お願いしますね」
「僕は異論はないよ」
「私もそれでOKだよ」


 全員がイッセー君の言ったチーム分けに賛成と言ったが、小猫ちゃんだけ不満そうな表情を浮かべていた。


「イッセー先輩、どうして私はイッセー先輩のチームじゃないんですか?」
「えっと、俺と小猫ちゃんは鼻が利くだろう?察知タイプが同じチームにいるよりは分けたほうがいいと思ったんだ」
「うう~、理屈では分かっていますが離れるのは寂しいです……」


 小猫ちゃんはイッセー君と離れるのが相当嫌みたいだね、もしかしたらイリナさんの事が気になるのかな?イッセー君はイリナさんにだけ何処か余所余所しい態度を取っているから僕も気になっていたんだけど何か事情がありそうだから簡単には聞けないんだよね。でも一緒のチームにしたって事は何か考えがあるのかな?
 話が纏まるとイッセー君は懐から白いリングを取り出してアーシアさんに渡した。


「イッセーさん、これはなんですか?」
「これは付けると透明になる魔道具だ、ルフェイから貰ってきた。これを付けていれば文字通り透明人間になれる」
「どうしてそんな物を付けるんですか?」
「ソーナ会長にも話がいっているのなら生徒会のメンバーも見回りに来るかもしれない、その時に俺たちが一緒だと言い訳ができないからな」


 そうか、さっき部長が朱乃さんにソーナ会長にもコカビエルの事を伝えるように言ったから生徒会のメンバーも出てくるかもしれない、彼らに見つからないようにするために透明になる魔道具を用意したんだね。


「生徒会というのは同じ悪魔の仲間だろう?どうして姿を隠す必要があるんだ?」
「俺たちの事はオカルト研究部の皆にしか話していないんだ、リアスさん以外の上級悪魔が俺やアーシアを知ったら何をしてくるか分からないから念の為に姿を隠すって訳さ」
「悪魔にはなりたくないのか?普通の人間がどうして悪魔と一緒にいるのか気になってはいたが、何か事情があるようだな」
「まあ私たちはエクスカリバーを取り戻す間だけの関係だからあなた達の事情に首を突っ込んだりはしないわ」
「ありがとうな、ゼノヴィア、紫藤」


 教会の2人はイッセー君達の事情を察してそれ以上は何も聞かなかった。


「姿が消える……アーシアさん、それを貸してもらってもいいですか?」
「えっ?別に構いませんがどうするんですか?」


 小猫ちゃんがアーシアさんからリングを貰って腕にはめる、すると小猫ちゃんの姿が消えてしまった。


「お、どうやらちゃんと機能したみたいだな。これルフェイが新しく作った魔道具だって言っていたからちょっと心配だったけど問題はなさそうだ」
「服も一緒に消えちゃうんだね」
「何だ、もしかして祐斗は服だけ消えないなんていうベタな展開を期待していたのか?」
「ええっ!?そんな事期待していないよ!」
「いいって隠さなくても。いやー、祐斗も男の子だねぇ」
「うう~、イッセー君、意地悪だよ……」


 ニヤニヤとしていたイッセー君だったけど、急に体をビクンとさせて顔を赤くしてしまった。


「ど、どうしたの?イッセー君?」
「か、体に何か感触が……ひえっ!誰かが触っているぞ!」
「も、もしかして小猫ちゃんですか?」


 アーシアさんが小猫ちゃんの名を言うが小猫ちゃんは反応しない。でもイッセー君は触られている感じがするらしいし姿が消えている小猫ちゃんが何かをしているとしか思えないんだけど何をしているんだろう?


「ふふ、顔を真っ赤にする先輩、とっても可愛いです」
「や、やっぱり小猫ちゃんか!?何をやっているんだよ、人前でこんな……あひっ!?」
「私の姿は見えないんですから何をされているのか何て分かりませんよ。それに恥ずかしいんだったら先輩も消えてしまえばいいんです」


 白いリングがフワリと浮いてイッセー君の腕にはまった、するとイッセー君の姿も消えてしまった。恐らく姿の見えない小猫ちゃんがリングを持ってイッセー君の腕にはめたんだろう。


「ほら、これで恥ずかしくないですよ。もっと触っちゃいますね♡」
「うひっ!?や、やめろって……流石に、うお!?お、怒るぞ、あうっ!?」
「そんな可愛い声を出していたら全然怖くないですよ?ほら、もっと可愛らしい声を聞かせてください」


 な、なにをしているんだろう……姿が見えない分変に意識しちゃうよ……


 それからしばらくして小猫ちゃんとイッセー君がリングを外したから二人の姿が見えるようになったんだけど……


「ふふ、いい気分です♡」
「……」


 妙にツヤツヤした小猫ちゃんと服装が乱れて顔にキスマークがついたイッセー君を見て僕たちは何とも言えない気分になっていた。ゼノヴィアさんはアーシアさんの目を隠しながら凝視しているし、イリナさんもキャーと言いながら顔を両手で隠している。


「だ、大丈夫かい?イッセー君……?」
「……ああ」
「その、なにされたの?」
「……今は何も聞かないでくれ」
「う、うん、分かったよ……」


 その後僕たちは落ち込むイッセー君を慰めて街の見回りに向かった。
 
 
 
 

 
後書き
 最近小猫ちゃんを暴走させがちですが、これはアニメの小猫ちゃんが可愛いのが悪い。よって自分は悪くないです、多分。


 今回は次回予告は無しです、それでは。 
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