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雪音クリスの休日

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07

 リディアン音楽院の近くにある、お好み焼き店「ふらわー」では、司令は覇王翔吼拳を使わざるを得ない状況まで追い込まれていて、響は見様見真似見稽古覇王翔吼拳を使わざるを得ない状況で放とうとしていた。
 スト2なら4週間にわたって、ベガが「撃て」「撃てぇ」と言い続けるぐらい引っ張りまくったり、アバンでも予告でも波動拳発射体制のまま何週も引っ張るのだが、スト2のSAKURAちゃんぐらいムッキムキの響は、別の格闘物の鉄拳に出てくる妹キャラぐらいオクスリで操られていて、超忍法忍蜂で当身部長燃やすぐらいの勢いで怒りゲージも満タンにしていた。
 ライン逃げしても逃げられない。

「お父さん、先生ってシスターなんだから、鼻の下伸ばしたらダメでしょ~」
 お好み焼き屋で、響と他のシンフォギア装者の人格崩壊に驚愕している風鳴司令の手元に、葉っぱが2枚降りて来た。
 どうやっているのか知らないが、忍者緒川からの通信手段である。
 さっきLINEで報告していた先は国の機関の方で、現状スマホも見れない司令の手元に届くように、タヌキみたいで葉っぱ使って通信してきた。
 その1枚目の内容は、「雪音クリス隊員、体育倉庫より救出」と言う短いものだった。
 黒響にぶっ倒されて、これからの「本当のお父さん」とのデートや、級友へのお披露目を邪魔されないよう体育倉庫に放り込んで監禁していたが救出された。
 売女(クリス)にお父さんとの二人だけの生活を邪魔されないように、鉈で解体して廃棄品置き場の冷蔵庫に入れなかっただけマシだが、外から施錠できる体育倉庫にバケツとトイレットペーパーと弁当を放り込んで監禁していた。
 一枚目は、いつものよくある出来事なのでスルーしたが、2枚目を見てもっかい驚愕した。
「うそ~~ん」
 そこには、「立花隊員の実父失踪、戸籍経歴全て抹消済み」と書いてあった。
 聖遺物(シンフォギア)的に響の本当の父親が消去される前に、超法規的措置が行われて実父失踪消去済み。
 響が金を稼いだり、世界を救って英雄になったのを見て、クズの父親がSONGに金をせびりに来たり、どっかの芸能人の親みたいに父親が芸能事務所を作って独立させて「うちの娘は騙されていた~」とか言いつつ娘をプロデュースしようとしたり、子供時代のビデオを売って稼ごうとしたりしたので、SONG隊員で聖遺物(ガングニール)保持者響隊員の保護が行われて、クソ親父の口封じが決行されてしまった。
「え~?、ビッキーのお父さんって超ムキムキ~、もし響がお父さん似だったら、柔道の重量級とか相撲部デビューしてたよねえ~」
「ヤダ~、でも顔付とか似てるでしょ~?」
「う~ん(全然似てねーよ)(似てるって言って)ああ、似てる似てる~」(未来のツッコミで響発狂を阻止)

 家族に了解を得てから元夫の拉致に行ったので、妻や義母に助けを求めても笑顔でスルーされて手を振られた。
 執行官たちに余裕で240サイズに梱包されて、佐川急便に偽装したトラックでハイエースされ拉致監禁。
 どこかの山奥の水も電気も無いタコ部屋で外から施錠され、地層や遺跡調査の名目で予算が付いている穴掘りを、スコップの手彫りで自分の墓穴のような大穴を掘って、学者に軽く一瞥して貰っただけで自分で埋め戻すような作業を、延々繰り返させられる人生を送らされる。
 もちろん逃げようとしたら、その穴に放り込まれて上から土を掛けられる。
 それとも沖ノ鳥島とか硫黄島にでも監禁され、闇の仕置き人が犯罪者を死ぬまで閉じ込めておく刑務所に放り込まれ、身動きもできないような独房で、物凄い暑さの中、硫黄の匂いがする熱水を飲んで、地面から出る蒸気で蒸し焼きになるか、狂死するまで閉じ込められる。
「ほら、最近鍛えてるからキンニク付いてきたでしょ~?」
「(付いてるって言って)ああ、キレてるキレてる、大胸筋が歩いてる」
「フトモモのバルクとカットも凄い凄い、音楽院にいるカラダじゃないね、やっぱ卒業したら日体大?」
「「「「「ギャハハハハハハ!」」」」」

 もしかしてタコ部屋で働けなくなった後で、七たび国に報いて靖国にも具足ごと祭られて、軍神となっていた娘のお蔭で恩赦を受け、おくりびとのお父さんみたいに漁村で手伝い的な事をして生かして貰っていたのが、死んでから実名が判明して、第二の人生を開始していた響の所に連絡が来るかもしれない。
(怖え~よ……)
 国家機関がどれだけシンフォギア装者を大切にしているのかを、改めて思い知らされた司令だった。
 先週はイチイバル装者クリス隊員保護のために抹殺される寸前だった自分の身を思って震えたが、今週は自分が始末されたりすると、翼を含めてシンフォギア装者全員で人類の敵になると教えられ、司令も防人の一族としてパイプ椅子の上でションベン漏らしそうになった。
「ビッキーのお父さんって、武道とかやってるんですか?」
「え? ああ」

 それでなくとも、家で寝ていても毎晩「南極エルフちゃん28号」の自動人形(オートスコアラー)が夜這いに来て、ひもを引っ張ったら鳴く人形みたいな怖い声で「パパ~、怖い(じへん)見たの~、抱っこして一緒に寝て~」とホザいたり、一晩中瞬きもしないで病み切った怖い顔をして司令(パパ)の顔を見続けていたり、不動金縛りの術を食らっている間に活動用のエネルギーとして精気を吸われたり、息苦しくてトイレに行こうと目を覚ましても、上に乗っかっていて口から触手出して全身の穴から繋がろうとしていたり、トイレまで付いて来て「ナデナデしてシーシーして~」と甘えて来たり、「モーするから後ろからフキフキして~」などと傍若無人ぶりを発揮して、毎日何度も翼が廃棄しても、エルフナインに返品発送しても元の位置に座っていて、お焚き上げして燃やしても無傷で元の位置にいる呪いの自動人形(オートスコアラー)の脅威にさらされ、毎日眠れない夜を送らされている司令には精神的に堪える出来事ばかりだった。
 司令としても、南極エルフちゃん28号究極奥義の「パパ~、お腹痛いの~、浣腸して出るまでお腹さすって~」を繰り出されると、覇王翔吼拳を使わざるを得ない。

 翼が南極エルフちゃん28号活動前に、前に座って剣を構えていても、瞬きした一瞬だけ眠りの魔法でもかけられるのか、気が付いた時には居なくなっていて叔父の布団に潜り込んでいる。
 防人の一族でシンフォギア装者すら謀るのが可能で、気配を完全に消して武道の達人の寝こみを襲える呪いの自動人形(オートスコアラー)が家にいる。
「これでも響の師匠をしていてね、響、人前では師匠と呼びなさい」
「え~? 休みの日はお父さんでしょ~?」
(((ダメだコリャ)))

 周囲の友人も、未来の辛そうな顔のツッコミや、司令の真っ青な顔、シスターで教師が泣き始めてしまったのに気付いて、「できるだけ響に話を合わせよう」と空気読んだ。
 せめてもの救いは、クリスとかマリアのようなパパと結婚したいガチ勢ではなく、パパで父として見ていて、切歌も調も響もエルフナインも「パパ」「お父さん」と呼んでいるので、イスラムに宗旨替えして4人ぐらい奥さん貰わなくて済むぐらいである。
 それでもクリスと正式に結婚しても、翼以外のシンフォギア装者は誰も祝福してくれずに、ココロの破損状態が加速度的に増して、先週のように役所の婚姻届けを授受する休日夜間受付を破壊してしまうシンフォギア装者とホムンクルス。
 下手をすると、バトルロイヤル方式で戦って戦って戦い抜いて、最後に残った蟲毒の中の最強の(ガンダム)と結婚させられたり、敗北必至の切歌か調が次のフィーネの器として体を差し出してマッスルドッキングしてでも、司令争奪戦に勝ち抜いて、ネフシュタインの鎧とかカディンギルとか封鎖地の旧司令部を回復して、他の装者と月をぶっ壊す作業を再開してしまうかもしれない。
 本物の神との契約を見せられたり、響と未来が新世界の神になったり、人類が補完されたり、世界がドーレムに調律される現場を見せられたり、バビロニアの宝物庫が開いちゃったり、エルフェンリートのルーシーさんみたいに生命の(レーベンスボルン)超人(ユーベルメンシュ)の新人類になったり、天孫降臨の儀式でパパと娘の合体技でマッスルリベンジャーして、おのころ島の儀式で現生人類を滅ぼすかもしれない。
 神ならぬ風鳴司令にも、今後の碌でもない人類の未来が見えてしまい、気分が悪くなった。

「ちょっとトイレに……」
「もう、お父さんったら、食事中でしょ~」
 ちびったり漏らしたりする以前に、司令も他の政府職員と同じで、便器に向かってゲーゲー吐いて「トイレにお好みともんじゃを焼きに行った」のである。
 今の状態を胃腸が受け付けずに、早朝に起きて鍛錬もして朝食も食べたが全部出す。
 精神的拷問を受け続ける訓練を受けていなかった司令には、今の精神的苦痛には胃が耐えられなかった。
「うおっ、おええええええっ」
 戦場(テーブル)で吐かないで済むよう、指突っ込んででも胃袋の中身を出し切った所で緒川から着信があった。
「大丈夫ですか? 今後の人類の未来は、司令の両肩に掛かっています」
 さらにプレッシャーを掛けて、学園前のお好み焼き屋で起こっている事変に対応するよう要求する緒川。
 対応に失敗すると、即座に人類の破滅に繋がる。
「司令の右ポケットに、我が家秘伝の丸薬があります。是非飲んでください、苦いですが噛み割って、口の中で味わうようにすれば吐かずに済みます」
 舌下剤なのか、噛んで味わうと嘔吐せずに済むそうなので、ポケットから忍者の薬を出して躊躇わずに噛み割った。
「うぐぅ」
 余りの苦さと口の中に広がる痺れで悶絶し、神代の言葉「うぐぅ」を唱えてしまう。
 大体この手の薬は阿片とか大麻ベースで作られていて、戦闘薬のように3日間眠らず食事もせずに「24時間戦えますか?」の薬で、北朝鮮の兵士が38度線を割って南下しても、休息することなく戦い続け、ソウルの街を火の海にしてから米軍に爆撃されて爆散するまで死力を尽くして戦える非人道的な薬と同じである。
「うむ、気合が入った、助かる」
 指令の目つきも少し壊れ始め、黒響ほどではないが切歌か調ぐらいまで壊れた。
「これから隊員の静止を振り切った、クリス隊員が戦闘に参加するため、ふらわ~に向かっています。ご健闘を祈ります」
「分かった、第三次世界大戦が始まる心づもりでいてくれ」
「はい、今日も完全武装の兵員180名が展開しています、シンフォギア装者には敵わないでしょうが、人間の命を盾にすれば戦闘が静止できると信じたいと思います」
 どんなことをしてでも任務を果たす、忍者が希望的観測を述べた所からも、これからの戦いが絶望的になると宣言されたのと同じだった。
 もし響とクリスの戦闘を静止させようとした隊員を薙ぎ倒して、人命を考慮せずに聖遺物を利用して戦い始めた場合、司令としても覇王翔吼拳を使わざるを得ない。
 
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