空に星が輝く様に
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144部分:第十一話 プールでその十一
第十一話 プールでその十一
「麦でのお握りも」
「はい、そうなんですけれど」
「麦の御飯も美味しい」
椎名は両手にお握りを持ってだ。そのうえで頬張っていた。
「つきぴーはセンスがいい」
「さっき陸上自衛隊より上とか言ってなかったか?」
「上は上」
「けれど素人さんが持ち回りで作っている料理なんてな」
「上のレベルは言っていない」
この辺りはまさに椎名であった。椎名の罠である。
「そう、かなり上」
「他にも色々言ってなかったか?」
「まずいと思っていれば美味しくなる」
つまり心理作戦だった。彼女のだ。
「そういうこと」
「そうなのかよ」
「そう、そして」
「野菜の煮付けも美味しいよ」
赤瀬は今はそれを食べていたのだ。
「凄く上品な味付けでね」
「あっ、確かにな」
「これもかなり」
狭山と津島も今度はそちらを食べていた。お握り片手にだ。
「人参も椎茸もよく煮られてるしな」
「レンコンとか筍も」
「蒟蒻もあるしな」
「味付け確かに上品だし」
「あっ、本当だ」
陽太郎も箸を出してそれを食べてみる。月美が用意した割り箸を使っている。
口の中にその人参を入れてみるとだ。確かに美味かった。
「あまり醤油の味を強くしていないんだ」
「薄口醤油です」
月美の言葉だ。
「それとみりんと。素材の味を生かせってお母さんに言われまして」
「へえ、それでなんだ」
「どうですか?それで」
「いや、美味しいよ」
陽太郎もまたこう言うのだった。
「本当に」
「そうですか。それは何よりです」
「西堀って本当に料理上手いんだ」
「そうだね。津島さんのもいいけれど」
「ふふふ、そうでしょ」
津島は赤瀬が自分が作ったサンドイッチを食べるのを見ながら笑顔になっていた。
「私だって努力してるんだから」
「伊達にケーキ屋の娘じゃないんだな」
「ケーキとパンは元々同じだしね」
こう狭山にも言う。
「それはマスターしないと」
「ああ、同じか」
「って何言ってるのよ」
津島はその口を少し尖らせて狭山に返す。
「同じ小麦じゃない」
「そうだよな。生地だってな」
「似てるなんてものじゃないでしょ。同じなのよ」
「じゃああれかパン屋とケーキ屋が同じなのが多いのも」
「そうよ。同じなのよ」
また言うのであった。
「これでわかったわね」
「そういうことか。ケーキって主食にもなるんだな」
「甘いのを抑えたらね。マリー=アントワネットじゃないけれど」
「あれ事実じゃないけれどね」
それはこっそりとだが椎名が注意した。
「実は」
「ああ、そうだったの」
「そう。あれは元々中国の話」
「三国志の後だったね」
赤瀬がサンドイッチを食べながら述べてきた。
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