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ドリトル先生と和歌山の海と山

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第十一幕その八

「それで勝っているんだよ」
「そうだったね」
「強かったんだ」
「それで有名なんだね」
「うん、とてもね」
「その人がいたね」 
 王子はあらためて思いました。
「強い人だと」
「そうだよ、あとスポーツだとね」
 こちらの人のお話もした先生でした。
「西本幸雄さんもおられたよ」
「あっ、阪急や近鉄の監督だった」
「そう、最初は大毎の監督をしてたね」
「八回のリーグ優勝をしたんだよね」
「あの人も和歌山の人なんだ」
 この県の出身だというのです。
「そうだったんだ」
「へえ、関西の人だとは思っていたけれど」
「和歌山出身だったんだ」
「それは意外だね」
「何しろ和歌山は南海だからね」
 ここで笑ってお話をした先生でした。
「南海も阪急も近鉄も昔は球団を持っていたね」
「そうそう、ホークスにブレーブスにバファローズに」
「三球団で競り合っていたんだよ」
 関西の鉄道会社を親会社とするチーム同士で、です。
「今は阪神だけになったけれどね」
「あのチームだね」
「あのチームはリーグも違うしね」
 三球団はパリーグで阪神はセリーグです。
「それに阪神はまた特別だからね」
「独特の魅力があるからね」
「だから置いておいて」
 阪神はです。
「とにかくパリーグの三球団は鉄道会社が親会社でね」
「西本さんは阪急と近鉄だから」
「南海とはね」 
 どうしてもです。
「ライバルであってね」
「馴染みがないどころかね」
「敵だったんだね」
「和歌山の会社とはね」
 どうしてもだったのです。
「そうだったんだよ」
「そうなんだね、けれどだね」
「和歌山出身だったんだ」
 そうだったというのです。
「実はね」
「そのことは面白いね」
「南海に関わるのある場所出身でね」
「ずっと南海の敵だったなんてね」
「そこは面白いよね」
「そうだね」
 王子は先生に笑って応えました。
「このことは」
「しかも西本さんはお酒が飲めなかったんだ」
「あれっ、そうだったんだ」
「そう、甘いものがお好きでね」
「へえ、じゃあ僕達みたいに梅干しや海の幸で飲んだりとかは」
「しなかったんだ」
 そうだったのです、実は。
「これは南海の監督だった野村克也さんもだったんだ」
「ああ、あの人ずっと南海の人で」
「そう、現役時代の殆どと最初に監督を務めたチームはね」
「南海だったね」
「西本さんと長い間戦ってきた人だけれど」
「あの人も飲めないんだ」
「そうだよ」
 このこともお話した先生でした。
「ライバル同士だったけれど」
「そこは一緒だったんだね」
「しかもね」
 さらになのでした。
「お互いに認め合ってもいたんだ」
「ライバル同士でだね」
「そうでもあったんだ」
「そこも面白いね」
「スポーツマンらしいね」
 王子は西本さんと野村さんのことを聞いてあらためて思いました。 
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