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レーヴァティン

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第五十七話 東へその一

               第五十七話  東へ
 久志は英雄に自分のこれまでの旅のことを話した、英雄はその話を聞き終えてから久志にこう返した。
「面白い旅だったことがわかる」
「ああ、北に南にってな」
 久志も英雄に笑って返した。
「馬に乗って船にもってな」
「バラエティに富んでいるな」
「色々なものも食ってな」
 久志はお茶を缶コーヒーを飲みつつ答えた、二人は今は共に大学の喫茶コーナー自動販売機を幾つか置いたそこで話をしていた。
「楽しかったぜ」
「それがわかる」
 英雄はペットボトルのお茶を飲みつつ応えた。
「聞いている俺もな」
「それは何よりだな」
「ああ、そして今はミラノでか」
「観て回ってるぜ」
 久志はこの街のことも楽しく話した。
「素敵な旅だぜ」
「それは何よりだ、しかし」
「しかし?何だよ」
「歌劇場は暫くはどうしようもないな」
 英雄は話に出て来たそこの話をここでした。
「どうにもな」
「まあな。お座敷のやりたい放題はな」
「よくある話だ、特権化した連中が好き勝手をしてだ」
「その世界が駄目になるってのはな」
「何処にでもある、その歌劇場も然りだ」
「肝心の舞台の質が心配だよな」
「お座敷の連中が目利きならいいが」
 指揮者や歌手のそれが備わっていればというのだ。
「そうでないとだ」
「駄目になるよな」
「間違いなくな」
 こう言うのだった。
「それはな」
「腐敗だよな、もう」
「そんな連中が幅を利かせること自体がだ」
「もう腐敗してるな」
「後はその腐敗が酷くなる」 
 そうなっていく段階だとだ、英雄は冷徹な声で言った。
「その連中のやりたい放題でな」
「既にやりたい放題だしな」
「その歌劇場は危機にある」
「腐ってきているか」
「後はもう腐りきるか」
「その途中でか」
「その連中こそ排除すべきかだ」 
 どちらかというのだ。
「二者択一だ、そしてだ」
「排除出来ないとか」
「その歌劇場は終わる、何処でもだ」
「そんな連中こそ問題か」
「やりたい放題する無法者共こそな」
「そうだよな、お座敷で金持っててそれを出してもな」
「好き勝手にさせると駄目だ、そうした時こそな」
 まさにとだ、英雄は冷徹な声のまま久志に告げた。
「責任者の出番だ」
「ここだと支配人か」
「野球だとコミッショナー、サッカーだとチェアマンだ」
「野球はコミッショナーが駄目だからな」
 俗に極めて重度の痴呆症の人物でもやれるとさえ言われている、何しろ球界再編の大騒動の時に平然と休暇で海外旅行に行ける様な責任把握能力も何もない輩が務まるのだからそう言われるのも当然であろう。
「ああなるんだな」
「何処のマスコミのドンがやりたい放題をやる」
「そうなるんだな」
「あれも腐敗だ」
 野球のそれもというのだ。
「一人の人気球団だか何だか知らないが」
「マスコミのドンでもな」
「やりたい放題を許す、今は違うが」
 正確には許してきた、だ。 
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