空に星が輝く様に
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128部分:第十話 夏に入ってその十
第十話 夏に入ってその十
「結構以上に」
「そうだったんだ」
「具体的には悪いことをしても反省しない人や」
かなり道徳的であった。
「それに他人をいじめる人とかが嫌いなんです」
「まあそういう奴って最低だけれどね」
「そういう人が嫌いでして」
こう話すのだった。
「他の人は別に。反省した人は普通に接しますし」
「見てるところは見てるんだな」
「だから愛ちゃんは凄いんです」
彼女を素直に褒める言葉だった。
「本当に」
「そうだよな、凄いよそれって」
彼もだった。椎名を素直に褒めていた。これは自分でも内心驚いていた。しかしそれでも言葉として出てしまっているのも事実だった。
しかもその言葉を打ち消さずにだ。また言うのだった。
「あいつ、そうだったんだ」
「私なんかいつも助けてもらってばかりで」
「あいつに言わせたらそれも違うんだよな」
「違うんですか」
「ああ、そうなんだよ」
その目を少し丸くさせた彼女への言葉だ。歩きながら話していく。
「むしろ西堀がさ」
「私がなんですか」
「あいつを助けてるってことになるんだよな」
「そういうのはないですけれど」
少し戸惑いながらまた答える陽太郎だった。
「本当に」
「それで何でそう言うんでしょうか」
「だから気を使ってるんだろうな」
「私にですか」
「そうか、意外と気配りなんだな」
陽太郎は腕を組みながら述べた。
「本当に」
「気配り愛ちゃんですね」
「その仇名可愛いけれど本人に言ったら嫌がるよな」
「うふふ、そうですね」
それは笑ってその通りだと返す月美だった。
「愛ちゃんだったら」
「あいつはそういう奴だからな」
「はい、確かに」
このことに関しては見事に意見が一致していた。
「愛ちゃんって照れ屋ですし」
「えっ、そうなのか!?」
しかしすぐに一致しなくなった。面白いまでにだ。
「あいつってそうなのか」
「照れ屋ですよ」
「表情全然変わらないのにか」
「やっぱりわかりにくいですか」
「ああ、全然な」
まさにそうだと答える陽太郎だった。
「っていうか何処までわかりにくい奴なんだよ」
「そうですか?結構わかりやすいですよ」
「いや、全然だろ」
まだ言う陽太郎だった。
「表情全然ないしさ。目にだってそれ出ないし」
「それがわかりにくいですか」
「全然わからないんだけれど」
陽太郎の首は捻られたままだった。右に動いて左に動いてだ。ゆっくりと動く振り子のようになっていた。そうしながら言うのだった。
「それって」
「そうですか?私は」
「ひょっとして西堀って」
そんな彼女の言葉を聞きながらだった。陽太郎は言うのだった。
「鋭い?結構」
「そうですか?」
「そうじゃなかったらあいつのそういうことなんて気付かないよ」
だからだというのである。
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