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ドリトル先生と和歌山の海と山

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第十一幕その六

「相当な人だったんだよ」
「ううん、何かね」
「天才って呼ばれる人はどうもね」
「そうした人が多いね、確かに」
「変わった人が」
「どうしても」
 動物の皆も思うのでした。
「それで南方さんって人もだね」
「人間としては凄い変わった人で」
「色々とお話が残ってるんだ」
「そうした逸話が」
「うん、例えばね」
 先生がお話しました。
「飲んで吐くよね」
「うわ、何かね」
「吐くのはよくないわね」
「飲んでも」
「先生はそれはしないし」
「何があってもね」
「それも好きな時に吐けるんだ」
 飲んだり食べたものをです。
「そうしたことが出来たしね」
「それになの」
「まだあるの」
「おトイレ、昔のだよ」
 日本のです。
「隅に生えていた茸を詳しく見たりね」
「そうしたこともしてたの」
「何ていうかね」
「それも変わってるわ」
「おトイレの隅の茸に興味持つとか」
「そうしたことも」
「そうした人でね」
 それでというのです。
「あの人は本当に変わった人だったよ」
「ううん、先生も変わってるって言えば変わってるけれど」
「何かとね」
「紳士だけれどね」
「個性があるって意味ではね」
「変わってるけれど」
「南方熊楠さんは」
 この人はと思う動物の皆でした。
「確かにね」
「相当に変わってるわ」
「何時でも吐けておトイレの茸見るとか」
「かなりね」
「先生も天才だけれど」
「その人位には」
「いや、僕は天才じゃないよ」
 先生は皆のお話に笑顔で言いました。
「全然ね」
「そうかな」
「九十九パーセントの努力はしてるし」
「色々な学問について」
「それで閃きもあるし」
「天才じゃないかな」
「そうだといいけれどね、ただ僕はそう考えてるよ」
 ご自身は天才ではないとです。
「別にね、ただその人はね」
「うん、南方熊楠さんはね」
「相当に変わってるわね」
「何ていうか」
「どうにもね」
「かなりよね」
「うん、あの人は」
 まさにというのです、動物の皆は。
「先生よりずっと強烈ね」
「そんな人がおられたのね」
「そうだったんだ、理系と文系の学問が両方出来るだけでもね」
 先生ご自身もそうですが今はそのご自身のことは考えていません。
「やっぱり凄いよ」
「そうだよね」
「本当にね」
「そうした人がだね」
「博物学者なの」
「そうだよ」
「というと」
 ここでふと気付いたのは老馬でした。
「空海さんも博物学者だったのかな」
「ああ、今で言う」
「そうした人だったかもっていうのね」
 チープサイドの家族も老馬に応えて言いました。 
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