魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第百十二話
クラインフィールド製の階段を登り、トレイターの甲板へ。
皆驚いていた。
柳韻さんとかポカーンとしてたもん。
奥さんはなんか…束さんだし的な事を柳韻さんに言っていた。
「じゃ、艦内に案内するよー!」
束さんを先頭に艦内へ。
「若。これ衛星画像には…」
「俺が写させてない」
「あ、そう…」
ヴィッサリオンが化物を見るような眼をしていた。
まぁ!化物(吸血鬼)なんだけどね!
「あ、いっ君。私はミハシラをセットしてくるから案内よろしくね~」
「あいよ」
取り敢えず全員を客室(ゲスト)に案内し終えると、機関室へ向かった。
機関室の入り口は二重扉になっている。
一つめの扉と二つ目の扉の間の小部屋のコンソールに手を触れて、サイオンを流す。
二つ目の扉が開き、機関室に足を踏み入れる。
その部屋は、煌めく粒子が舞っていた。
埃などではない。
GN粒子と呼ばれる、特殊粒子だ。
そして、目の前には大量の円筒がある。
IS用GNドライブを直列同調させたツインドライブの入った筒。
それが二十本。このトレイターの心臓部。
俺の努力の結晶だ。
『ますたーが自重をやめた証拠だね』
やめろ。苦労したんだぞ。
『で?ここに来たのはどうして?』
すこし、空調を弄ろうかとね。
『で?GN粒子を誰の部屋に流すの?』
そんな毒を流すみたいに言うなよ。
『濃度次第じゃ猛毒でしょ?』
この部屋の空気くらいの濃度じゃ致死性皆無だっつぅの。
俺と円香の部屋に流すんだよ。
『ああ。なるほど。この前言ってたね』
そうそう。イノベイターになれば老化は減速して健康体に近づく。
奏の血は応急措置にすぎない。
だから、どうにかして円香にはイノベイターに進化してほしい。
「まぁ、俺のエゴなんだけどね」
「ほう? そのエゴとやらは何だ?」
「姉さん…」
何で居るのさ…
姉さんは直ぐに俺を抱き抱え、機関室を後にした。
そして姉さんの部屋(クルー)へ。
「どしたの姉さん?」
「……………」
姉さんはベッドの上で胡座をかき、その上に俺をのせていた。
両手を俺のお腹の前で組んでホールドしている。
「私は、日本で記者会見をした後、直ぐにドイツへ向かう」
「え? あ、うん?」
「だいたい一週間だ」
まぁ、妥当だな。
「家に居られるのは、2日くらいだろう」
そりゃぁ、そうだろう。
ん…? 要するに姉さんは…
「さみしいの?」
「………………………………………うん」
抱きしめる力が少しだけ強くなった。
「あと、世間では私は失踪した事になっている」
「なんか…ごめん」
「いや、仇を取ってくれたんだ。謝るような事ではない」
「いや、そのせいで会見とかが遅れてるんだろ?」
「まぁ、そうなんだが…。そこは、ヒカルノが上手く言い訳してくれている」
ヒカルノ…? 誰だっけそれ?
「どうやら私は束を脅して協力させ、弟誘拐の犯人をイギリスまでしばきに行っているらしい」
『ネットの噂だね…。ブリュンヒルデの失踪。イギリスでの連続不可解事件、束の目撃情報…。そこに千冬と束が知り合いっていう情報を加えて考察すれば、可能性の一つとしては出てくるかもね』
かなり無理やりだな。
だが微妙に合ってるのが如何とも言い難い。
「姉さん」
「なんだ」
「今夜は円香と三人で寝ようよ」
「……ばか」
姉さんにはちょっと部屋に居て貰って、俺は客室に来ていた。
「スコール。今いいか?」
「拒否権なんてないでしょう?」
「まぁ、そうなんだが」
スコールとオータムがベッドに座り、俺はドアに寄っ掛かる。
「じゃ、仕事の話だ」
「私達は何をすればいいのかしら?」
「ん?円香の護衛よろしく」
「円香…貴女の妹ね。でも、一つ聞いていいかしら」
「どうぞ」
まぁ、何を聞きたいかはわかっている。
「貴方には妹なんて居なかったはずなのだけれど、どういう事か聞かせてくれるかしら?」
ほら、やっぱり。
「生き別れた妹…って事じゃ当然納得しないだろう?」
「するわけないでしょう」
スコールの瞳に射抜かれた。
「円香は、姉さんのデッドコピーだ」
「へぇ…」
「お前たち本当にヴィーティングと不仲だったらしいな」
ヴィーティングの名前を出した所でオータムがビクッと震えた。
あらら、トラウマになっちゃってるよ。
「お前たちが俺を拉致したあの施設の地下、円香は彼処にいた。
ガラス管の中に、溶液といっしょにな」
「そう…あの大穴はそういう事だったのね…」
「まさか妹が居たとは、俺も驚いた物だ。
情報を得るため捕まってみれば色々と面白い事もわかったしな」
「わざとだったの?」
「わざとじゃなかったら捕まってないだろ」
するとスコールが笑い始めた。
「ええ…そう…そういう事…。全部貴方の手の上だったのね」
「そういう事だ。残念だったな。モノクローム・アバター」
笑ってやると、オータムがスコールにしがみついて震えだした。
「坊や、私のオータムを怖がらせないでくれる?」
「こんなに怖がられるとこっちとしても多少傷つくんだが」
「よく言うわ…早く出ていってくれない?」
「はいはい」
子供見たいにスコールにすがりつくオータムをからかおうと思ったが後が怖いのでやめておく。
部屋を出るとフィグネリアと刀奈がドアの両脇に控えていた。
「何してんのお前ら?」
「若がモノクローム・アバターをこの船に載せてる理由を知りたくてね」
「フィグネリアさんに同じく、よ」
なるほど。この二人なら知っていてもおかしくはあるまい。
片や元傭兵。片や暗部の後継者。
「なに、すこし〔メアリー・スー〕になりたくてね。あの二人には円香の護衛をしてもらう」
「「は?」」
「あの二人は恐怖で縛ってあるから信用できる」
ヴィーティングの最期を見て、俺達家族に手を出そうと言うのならそいつはバカだ。
「やっぱり、『聖剣』を『砕いた』のは貴方なのね?一夏君」
Holy sword was broken .
「ああ、俺が砕いた。父さんと母さんを殺した剣だ。砕いて何が悪い」
「はぁ…ブリュンヒルデの策は突破されたようだね。ま、ウチの子も若と一緒の部屋の泊まれて満足気だし、いいか…」
フィグネリアはそれだけ言って、部屋へ戻って行った。
「一夏君」
「なんだ?俺が怖いか刀奈?」
「……………そうよ」
ふふ…はは…あはは…
「ははははは!お前には、わかるまい。
親を殺された者の気持ちは」
父さんと母さんは、転生者だった俺に愛情を向けてくれた。
それを、奴は奪った。
「お前には、わかるまい。家族が悲しみに泣く悲しみを」
姉さんから、父さんと母さんを奪った。
姉さんは、泣いていた。
「風化させたはずの悲しみと憎しみが心の中で再構築される音が聞こえたよ」
だから。
「いまでも、もっと痛めつけて殺せばよかったって、思ってるよ」
まだ、苦痛を与える手段は残っていた。
奴のフラクトライトをコピーして拷問しつづけても良かったかもしれない。
あのまま烏に啄ませても良かった。
「そう…。わかったわ。私には、貴方の心はわからない。でも…」
首筋に、ナイフが当てられる。
「その残虐性がすこしでも簪ちゃんに向いたら、私は持てる全てを以て貴方を消滅させるわ」
「それは頼もしい。もし俺が奏の甘言に惑わされたなら、その時は頼むぞ刀奈」
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