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空に星が輝く様に

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113部分:第九話 遠のく二人その七


第九話 遠のく二人その七

「八条大学にしておきたいけれどな」
「八条大学は設備も整ってるしな」
「いい大学よね」
 狭山と津島の顔がまた笑顔になる。
「あそこに入ったらよ、毎日遊びまくるぜ」
「喫茶店のケーキも美味しいしね」
「遊ぶのと食うのが中心から」
「遊んで学べ」
「人間甘いものがないと死ぬのよ」
 強引にこう言う二人であった。そしてである。
 二人も交えて話をするのだった。彼等は幸せな学園生活を送っていた。
 だが星華はだ。今一つ満たされない気持ちのままだった。それは部活においても同じで動きにも出てしまっていて鈍さが目立つようになっていた。
「佐藤、そっちよ!」
「そっち行ったわ!」
 グラウンドの練習の中でだ。周りから声がする。
 皆ジャージ姿で練習をしている。その中で声をかけられたのだ。
「右にね!」
「来たわ!」
「ええ!」 
 星華もそれに頷いてボールの方に行く。彼女もまた学園のジャージ姿だ。
 しかしであった。そのボールを取り損ねた。ボールはそのまま向こう側に転がってだ。ファールゾーンを出てそれからも転がっていくのだった。
 そして壁に当たってはね返る。それで止まった。
 部員達はそのボールを見ながらだ。ボールを取れなかった星華に対して言うのだった。誰もが咎める顔になってそのうえでの言葉であった。
「ちょっとお」
「何やってるのよ」
「今のは捕れてたでしょ」
 口々に言うのだった。
「あんたならすぐにじゃない」
「それが何よ、今の」
「どうしたのよ」
「え、ええ」
 俯いて苦い顔で応える。
「御免、ミスしたわ」
「しっかりしてよ、あんた動き速いんだし」
「それにセンターなんだから」
「ちゃんとしてもらわないといけないんだからね」
 こう言われるのだった。部活での動きも今一つでクラスでも家でもあまり楽しめなくなっていた。そしてその原因も自分でわかっていたのである。
 家に帰って食事と風呂の後で勉強をする。それが一段落ついた時だった。  
 部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。そうしてだった。
「お姉、いる?」
「星子?」
「ええ、私だけれど」
 妹だった。彼女の声だった。
「いいかな」
「ええ、いいわよ」
 実際にいいと返すのだった。
 そのやり取りの後で星子が部屋に入ってきた。その手には漫画がある。雑誌であり彼女がいつも読んでいるものだった。それを持って来たのである。
「これ読むよね」
「ああ、今日だったの」
「今日だったのってお姉」
 星子は今の姉の言葉にすぐに困惑した顔で返した。
「前まで自分で買ってたじゃない」
「ちょっと忘れてたのよ」
「忘れること?この雑誌好きなんでしょ?」
「まあそれはね」
 返答は今一つ歯切れの悪いものだった。
「それでもね。最近ね」
「忙しいの?」
「滅茶苦茶ね」
 こう返すのだった。疲れた様な顔で。
 そしてだ。こうも言うのだった。
「ただね」
「ただって?」
「クラスがねえ」
 妹と向かい合って座りながらだ。そうして話をしていた。
 
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