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真田十勇士

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巻ノ百三十八 仇となった霧その十

「伊達家の軍勢と戦うぞ」
「あの伊達家ですか」
「この家の軍勢は知っておろう」
「はい、鉄砲騎馬隊です」
 大助はすぐにこの軍勢の名を出した。
「伊達家といえば」
「そうじゃ、鉄砲騎馬隊じゃ」
「その鉄砲騎馬隊が相手ですか」
「伊達家の武士の家の次男三男から命知らずの者を集めてじゃ」
 政宗がそうさせたのである。
「そうしてじゃ」
「馬に乗らせ鉄砲を持たせてですな」
「駆けながら撃つのじゃ」
「そして必要とあらば」
「刀を抜いて切り込むこともする」
「まさに命知らずの者達ですな」
 馬に乗り鉄砲を撃つなぞ危ういことこの上ない、手綱を持たずに両手で鉄砲を持ってそれを撃つからである。
 だが鉄砲騎馬隊はそれをやる、それで大助も言うのだ。
「天下にそれを知られた」
「伊達公も天下の傾き者であるからな」
「そうしたことを考えられてですな」
「行わせてな」
「武名は馳せてきましたな」
「その鉄砲騎馬隊が来る」
 間違いなくというのだ。
「だからな」
「これよりですな」
「まずはその鉄砲騎馬隊を撃ち破るぞ」
 大助に強い言葉で話した。
「よいな」
「わかり申した」
 大助は父の言葉に素直に頷いた、そうしてだった。彼は父とその軍勢と共に兵を進ませた。そして幸村は後藤の軍勢からの使者の言葉を聞いた。
「そうか、後藤殿はか」
「お命はありますが」
「この場からか」
「はい、一時ですが」
「逃れられたか」
「大宇陀の方へ」
 大和のそこにというのだ。
「今は長沢という者に護られて」
「わかった」
 幸村はその旗本にすぐに答えた。
「そのことは」
「はい、残念ですが最早戦うことは」
「この度もな」
「それは出来なくなりましたが」
「いや、生きられているならばな」
 それならと答えた幸村だった。
「よい、それでは貴殿等だが」
「我等はといいますと」
「今家臣の者達を向かわせた」
 十勇士、彼等をというのだ。
「その助けで退かれよ」
「戦の場から」
「兵もかなり減っている筈、ここは我等に任せ」
「そうしてですか」
「下がられよ」
 こう後藤の軍勢から来た旗本に話した。
「よいな」
「それではこのことを」
「軍勢に戻られたらお話されよ」
 今後藤の軍勢の采配を執っている者達にというのだ。 
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