猫アレルギー
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第三章
「だからね」
「その種類の猫を飼えばいいよ」
「私の猫アレルギーもないのね」
「だからね」
それでというのだ。
「その種類の猫にしようか」
「ええ、猫を飼いたいのは本当に強い気持ちだから」
咲江はこう夫に答えた。
「だからね」
「その猫でいいね」
「ええ、じゃあペットショップに行って」
「ネットでも買えるよ、ネットじゃ里親も募集してるし」
「じゃあ里親にする?」
「どちらにしてもスフィンクスにしよう」
こう夫婦で話してだ、そしてだった。
高橋はそのスフィンクスを里親から貰った、そうして家に来たその猫を見てだった。咲江は目を丸くさせて言った。
「へえ、それがスフィンクスなのね」
「そうだよ」
「面白い姿ね」
見れば本当に毛がない、そうした姿の猫だ。
「この猫は」
「そうだね、じゃあこの子の名前はね」
「ええ、何ていう名前なの?」
「トトっていうんだ」
「トト?」
「そう、元々の飼い主の人が言うにはね」
見ればまだ子猫だ、自分の身体をちろちろと舐めてそうして猫らしい仕草をして二人の前でマイペースでいる。
「エジプトの神様から名前を取ったらしいよ」
「そうなの」
「エジプトの知恵の神様だよ」
トトという名前の元はというのだ。
「鴇の頭をしていてね」
「そういえばエジプトの神様って」
「猫とかの頭の神様が多いね」
「鰐とかね」
「そう、それでトトもね」
「鴇の頭をしているの」
「そうなんだ、雄だからトトにしたらしいんだ」
この神の名を付けたというのだ。
「元の神主さんはね」
「成程ね」
「性格はかなりやんちゃで元気らしいよ」
高橋は今度はその猫の性格のことも話した。
「ネットでの紹介を見れば」
「そうなの」
「ただ御飯はキャットフードを食べてね」
そしてというのだ。
「何でも食べてお水もしっかり飲んでね」
「そのうえで健康なのね」
「おトイレもちゃんとするらしいから」
猫のトイレでというのだ。
「そうしたことは安心していいよ」
「そうなのね」
「じゃあこれからはこの子とね」
「二人と一匹でね」
「楽しくやっていこう」
「それじゃあね」
こう話してだ、そしてだった。
二人はトトと一緒に暮らしはじめた、するとトトは高橋がネットの紹介で見た通りやんちゃであった。朝も昼も夜も家の中を駆け回ってだ。
二人に悪さをしてテーブルに上がってそこにあるものを落としたりした、家の中にいてそこから出ることはなかったが。
爪とぎの場所以外でもといで怒られると逃げ出す、怒ると隙を見せれば仕返しをして自分がいたい場所に堂々と寝る。
そうした暴君ぶりにだ、高橋は家で笑って妻に話した。
「これでこそ猫だね」
「そうよね、本当に」
「毎日悪さばかりする」
「それでこそ猫ね」
「こうした生活がしたかったんだ」
高橋は妻に問うた。
「奥さんは」
「ええ、そうなの」
「猫と一緒にいて猫に振り回される」
「そうした生活がね」
まさにというのだ。
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