昼のバンパイア
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第一章
昼のバンパイア
セルビアのその地域ではバンパイアが出ると言われ民達は常にバンパイアのことを意識していた。だがそのバンパイアについてだ。
調査に日本から来た大久保すみれは共に調査に来ている牛島未可子に話した。はっきりとした大きな目に黒いロングヘアが奇麗な二十代の女だ。大きな目と紅の唇に白い顔がアイドル的な雰囲気をか醸し出している。胸が目立ち服装はかなり上品な感じだ。
「吸血鬼が出るとかね」
「信じられないっていうの?」
「まさかね」
すみれは自分と同じ位の背丈の未可子に顔を向けて話した。未可子はすらりとしたスタイルで整った脚は今はズボンに覆われている。少し茶色がかった髪の毛を伸ばし後ろで束ねている、きりっとした眉がボーイッシュでモデルの様に整った見事な調和の取れた顔立ちである。
「出るとかね」
「というかここはそれで有名な地域でしょ」
未可子はバンパイアに懐疑的なすみれにこう返した。
「元々ね」
「まあ東欧でね」
「そう、ここもね」
セルビアのこの地域もというのだ。
「昔からよ」
「吸血鬼のお話があって」
「墓場から出て来てね」
そのバンパイアがだ。
「村の沢山の人の血を吸ったとか」
「そうしたお話があるのよね」
「そうよ、それで私達もよ」
「また吸血鬼が出たって話でね」
「神戸から来たってことよ」
「八条博物館からね」
二人はこの博物館の館員である、二人共専門は東欧なのでそれで東欧のこの件の調査に出されたのである。
「そうなったのね」
「そうよ、それで一緒に調査に来てる人達と一緒にね」
「吸血鬼のことを調査して」
「博物館でも資料とか展示するし」
「私達も論文を書いて説明もして」
「そうするから」
「責任重大ね」
すみれはあらためて自分達の仕事のことを思った、そうしてだった。
二人は一緒に調査に送られたスタッフ達と一緒にバンパイアの調査を行った、その調査の時にだ。すみれも未可子も思ったのだった。
「何かオーソドックスな」
「そんな吸血鬼ですね」
二人で調査チームのリーダーである張田修之に言った、丸く太った顔立ちの中年の男だ、目は細く黒髪は癖がある。背は一七一程で身体つきも丸い。
「お墓から出て人を襲う」
「この辺りによくあるお話ですね」
「土葬の習慣があるからこその」
「東欧の吸血鬼ですね」
「そうだね」
修之は二人に確かな声で答えた、格好いい声でまるでアニメの主人公の様な美声だ。チームは今は宿泊先のホテルの中で顔を見合わせて細かい話をしているのだ。皆互いの調査報告書を読み合い意見も交えさせている。
「今回出たと言われている吸血鬼もね」
「あれですよね」
すみれは考える顔で修之に言った。
「この地域に昔出た」
「アルノルト=パウルは少し違う地域だよ、ペーター=プロコヨヴィッチもね」
「そうでしたね、調べてわかりました」
「けれど近いからね」
彼等が出た地域と今自分達がいる地域はとだ、こうも話した修之だった。
「似ているのも当然だよ」
「同じ種類の吸血鬼ですか」
今度は未可子が修之に聞いてきた。
「アルノルト=パウル達と」
「どうかな、吸血鬼といえばね」
「死者が墓場から出て来てですよね」
それでと言った未可子だった。
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