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リング

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56部分:ローゲの試練その十


ローゲの試練その十

「テルラムントが直接率いる艦隊か」
「おそらくは」
 参謀の一人がそれに応える。
「その数、二個艦隊です」
「少ないな」
「ラートボートに兵を向けているせいでしょうか」
「そうかも知れないが。それでも少な過ぎる」
「今の帝国はこの方面には主力を展開していないようですが」
「カレオール博士の軍に兵を向けているのか」
「そういう話ですが。ただ」
「ただ。何だ?」
「ローゲは違うと分析しております」
「違う?」
「はい」
 今度はフルトヴェングラーが答えた。
「今ゼダンの入口に展開している艦隊は二つです」
「うむ」
「それとは別に三個艦隊がゼダンにいるそうです。それが今動いているということです」
「動いている」
「三方から。我が軍に向けて」
「三方から?」
「まずはこれを御覧下さい」
 モニターのスイッチが押される。そしてそこにローゲが出した映像が映される。そこにはゼダン周辺の三次元地図があった。両軍の布陣もそこに映し出されていた。
「今我が軍はここにおります」
 フルトヴェングラーはレーザーで青い艦隊を指し示した。
「そしてこれが敵軍です」
「その二個艦隊だな」
「はい」
 次に赤い艦隊が指し示された。そこには確かに二個艦隊があった。
「これはどうやらテルラムント提督が直接率いる軍のようです」
「ふむ」
「そして残る三個艦隊ですが」
 レーザーが動かされた。
「この様に展開しております」
 その三個艦隊はローエングリンの艦隊の後方に回り込もうとしていた。そしてここでモニターの一部が切り替わった。
「そしてその動きの予想です」
「分かれたか」
「はい。これが三方への移動です」
 フルトヴェングラーは言った。見れば帝国軍は三方からローエングリンの軍の後方を狙っていたのである。
「我が軍を扇形に包囲し、殲滅するつもりのようです」
「つまりその三個艦隊は金槌というわけですか」
「そしてテルラムントの艦隊は鉄板ですな。我が軍を押し潰す為の」
「わかった。ではその対策は」
「この様に動くべきとのことです」
 またモニターが切り替えられた。そして緑の線でローエングリンの艦隊が動くべき航路が映し出された。見ればそれはまず後方の三個艦隊を各個撃破していくというものであった。
「まずはこのまま正面に向かわずに反転します」
「うむ」
「そして左翼の艦隊を叩き、その後でそのまま突っ切ります」
「それから反転して」
「そうです、残る二個艦隊の後方を突きます。これで後方から迫る三個艦隊を叩くとのことです」
「機動力を生かしてだな」
「それを行える機動力は我が艦隊に備わっているとのことです」
「そこまで出しているというのか。用意がいいな」
「それだけではなくここで策も出しております」
「策」
「はい、左翼の艦隊を攻撃する時ですが」
「うむ」
「通信妨害を仕掛けるべしとのことです。そうすれば作戦はさらにスムーズにいく、と」
「見事なものだな」
 唸らずにはいられなかった。
 
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